第2話 解体とスキル

 解体所に入ると、解体所のリーダーのタングさんに声を掛けました。


 「こんにちは、タングさん。」


 「おう、トーンか。今日もホーンラビットの解体か?」


 「はい、ホーンラビットを3匹倒したので解体しに来ました。」


 「今はどこの台も空いてるから好きな場所を使いな。」


 「ありがとうございます。」


 解体所の奥の方の台に向かい、背負い袋を下ろしてホーンラビットを出します。幸いなことに、職員は現在、タングさんしかいないため、誰にも見られずに石を体の中に戻しながらホーンラビットを台の上に出せます。普段なら、背負い袋の中で石を戻すため、背負い袋が汚れて洗うことになります。


 「血抜きは十分できているから後は解体するだけだ。」


 ホーンラビットを丁寧に解体し、角と皮、肉、魔石に分け、内臓は指定されている場所に捨てます。


 「ホーンラビットの解体が終わりました。」


 「おう。確認したら報酬を払おう。」


 「よろしくお願いします。」


 タングさんが解体したものを回収し、いくらになるかを確認している間に、手と上着を水で洗います。上着はギルドの宿舎の部屋で乾かすため、石で包んで背負い袋に入れます。


 「確認したぞ。ホーンラビット3匹分だから銅貨3枚だな。ホーンラビットの魔石3個で1銅貨と鉄貨50枚だ。」


 「ありがとうございます。」


 午前だけで、銅貨が5枚、鉄貨が100枚になった。


 「それじゃ、食堂に向かいます。」


 「しっかり、昼を食べるんだぞ。」


 解体所を出て、一旦ギルドの宿舎の部屋に戻り、替えの上着を着た後、背負い袋に入れた上着を石から出して、石で洗った上着を吊るして、下は石を敷いて床が濡れないようにします。


 食堂は、ギルドの向かいにあります。値段は安いものは銅貨1枚、高いもので銅貨5枚です。僕はいつも銅貨2枚のものにしています。


 「すいません。」


 「いらっしゃい、トーン。」


 「銅貨2枚のをよろしくお願いします。」


 「わかったは。好きな席に座って待っていなさい。」


 「わかりました。」


 食堂は、半分ほど席が空いていたため、1人で1つのテーブルに座ることができました。夜になると、相席することがほとんどになります。


 「どうぞ、黒パン2個と野菜とホーンラビットのスープよ。」


 「ありがとうございます。」


 黒パンをスープに浸しながら食べます。食べ終わったら、食器を受付までもっていきます。


 「ありがとうございます。おいしかったです。」


 「食器を持ってきてくれてありがとね。」


 食堂を出た後、もう1度ギルドに向かいます。


 「こんにちは、エリカさん。街の中の依頼は何か来ました?」


 「トーン君、こんにちは。街の中の依頼は来なかったわ。だから、少し休んでからでいいから、森の中からこれを探してきてもらえないかしら。」


 紙には草の絵が2つ書いてありました。


 「これはヒール草と冷草よ。どうも風邪をひいた子が出たから、風邪薬がなくなる前に補充しておきたいらしいの。ヒール草は見かけたらでいいわ。冷草を探していたら見つかるかもしれないからね。」


 「わかりました。少し休んだら行きます。」


 「よろしくね。」


 宿舎の自分の部屋に戻ると、背負い袋の中にあるスライムの魔石を石で包んで、ベッドの下に持ち出せないように床とくっつけておきます。すでにいくつか石ベッドの下にあるため、1度整理する必要があるかもしれません。


 少しだけベッドに寝転がって、紙に描かれている絵を確認します。


 「どちらも見たことないから、普段よりも森の奥の方に行く必要があるかな?」


 寝ころびながら、道中に見かけた薬草や毒消し草は帰る時に時間があれば回収していくことや、魔物は可能な限り無視していくと決めると起き上がって取りに行くことにしました。


 「よし。出発しよう。」


 もう1度街を出て、朝と同じ場所から木に登って森の中に入りました。すでに朝通った場所であるため、スムーズに奥まで進むことができました。朝よりも森の奥に進むと”気配察知”で3体の魔物を察知しました。


 ”隠蔽”気配を抑えながら木の上を通って近づいていくとゴブリンが3体いました。ゴブリンのスキルは、ギルドの本で確認しています。”悪食”と素手なら武器スキルなし。武器を持っていたら、その武器に対応したスキルを持っている可能性があり、弓を持っていたら弓スキルを持っているが、数が増えている可能性があり警戒する必要がある。後は、”解体”のスキルを持っている可能性がごくまれにある。今回のゴブリンは武器を持っていないようです。


 「(できれば、無視したいが、奥に行くときにばれると石を投げたりしてきて危ないから倒しておいた方がいいか。)」


 そうと決まれば、木の上を音を立てないようにゆっくりと移動していき、上から重い石を落としてつぶすことにしました。


 ゴブリンの真上に行き、体から石を出し、下を平らに上を楕円形にして可能なら3匹同時につぶれるように、石をどんどん広げていきました。3匹とも同時につぶせるほど広がったら、上から落としました。


 ”ドン”と音がしました。ゴブリンの断末魔はありませんでした。周りに魔物がいないのを確認したら、下に降りて石を体に戻しました。ゴブリンは完全につぶれていましたが、魔石は無事のようでした。魔石はゴブリンの血で汚れているため、石で包んで背負い袋に入れ、帰りに川で洗うことにします。ゴブリンの討伐証明部位は耳ですが、つぶれているし、できれば魔石を喰いたいため、もっていかないことにしました。


 木に登り、冷草を探すためにさらに奥の方に行きました。今度は”気配察知”で4つの気配を察知しました。近づくとフォレストウルフだとわかりました。”隠蔽”をしていましたが、ウルフは”気配察知”のスキルだけでなく”嗅覚”のスキルを持っているため、気配を抑えても”嗅覚”で気づかれます。


 フォレストウルフはギルドの本によると、”気配察知”、”嗅覚”、”咬合”、”俊足”を持っていることがあり、群れのリーダーになると”統率”を持っていることがあります。


 フォレストはこちらに気づきましたが、木の上にいるため、あちらから攻撃する手段はありません。僕を追ってくるようなら、上から石を落として安全にまとめてつぶすことができます。


 フォレストを木の上を通って通過すると、一定の距離を置いて追いかけてきました。このままでは下に降りれないため、石を球状に複数出して投擲することにしました。


 けっこう重い石にしてフォレストウルフに投げると、1個目は当てることができましたが、2個目は外れました。さらに、3個、4個と投げて、フォレストウルフを2匹倒すことができました。残りのフォレストウルフは逃げていったため、周りに魔物がいないことを確認し、木から降りて、石を戻しフォレストウルフを石で包んで背負い袋に入れようとしました。しかし、背負い袋に2匹とも入れることはできないため、石で包んでその場においておき、帰りに引きずっていくことにしました。


 

 木に登って、周囲を確認すると、開けた場所が見えました。近づいていくと湖があり、色んな花が咲いていて、大きなスライムがいました。スライムのスキルは、”魔力感知”と”酸”を持っています。しかし、移動速度は速くないため、距離をとっていれば、気づかれても追いつかれることはありません。急いで絵を取り出して冷草とヒール草がないかを確認するために、大きなスライムから距離を取りながら探しました。


 すると、冷草があったため、急いで葉を取りました。葉を半分だけ取って、大きなスライムの位置を確認し、他の冷草から半分ずつ葉を集めていきました。その後、ヒール草もないか探すと、少しだけ見つかったため、葉を半分だけ取り、石で包んで森の中に戻りました。


 木の上に登って、さっきフォレストウルフを倒したところに戻って、いくつ葉を取れたか確認しました。冷草は36枚、ヒール草は8枚取れたため、次にフォレストウルフをどうするか考えました。


 フォレストウルフは尻尾が討伐証明部位になるため、石を剣のようなにして尻尾を切り、背負い袋に入れました。次に、頭を切り落として血抜きし、足を落とし、胴だけにして石で包みました。背負い袋に一つは入りましたが、2つ目は入らなさそうだったため、2つ目は背負い袋にくっ付くように石でまとめて包んで背中に背負いました。とても重くなりましたが、移動できない重さではないため、”気配察知”と”魔力感知”に注意して森の中を進みました。


 何度か魔物を発見しましたが、大回りして気づかれないようにしながら帰りました。暗くなる前には森を抜けることができたため、冒険者に気づかれないように森の中でフォレストウルフを包んでいる石を取り除き、門に向かいました。


 街に戻る冒険者達の邪魔をしないように気を付けて門番にギルドカードを見せ、街に入りました。急いで解体所に入ると、たくさんの職員が魔物の解体をしていました。


 「すいません、解体をしてもらっていいですか?」


 「おっ、トーンか。いいぞ。何を解体して欲しいんだ?」


 「フォレストウルフです。」


 胴だけのフォレストウルフを2個見せました。


 「血抜きはしているようだな。ならこの札を渡そう。」


 「ありがとうございます。」


 札には10と書かれていました。


 「解体する魔物が多いから、飯を食ってから来るいい。」


 「わかりました。よろしくお願いいたします。」


 次に、ギルドに入る前に背負い袋の中の冷草とヒール草を包んでいる石を回収しました。ギルドの中にはたくさんの冒険者が入っていて、受付が混んでいました。エリカさんの列に並んでしばらく待っていると僕の番になりました。


 「冷草とヒール草見つかりました。」


 依頼書と一緒に冷草とヒール草をエリカさんに渡しました。


 「よかった~。それじゃ数を確認しますね。冷草が36枚、ヒール草が8枚。冷草は5枚で銅貨1枚、ヒール草は2枚で銅貨1枚だから合計で銅貨11枚、鉄貨20枚ね。」


 「それと、こちらもお願いします。」


 フォレストウルフの尻尾を取り出しました。


 「フォレストウルフは5体で銅貨1枚だから、鉄貨40枚ね。」


 「ありがとうございます。」


 お金を受け取ると、袋に入れました。ギルドを出て食堂に向かいました。

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