石喰い

@hinouzi4

第1話 プロローグ

 僕の名前はトーン、7歳。ギルドに冒険者見習いとして登録している。


 今日も朝からギルドを訪れ、文字や計算、常識など、多くのことを教えてもらっている受付嬢に挨拶をするべく受付に向かう。


 「おはようございます。エリカさん。」


 「トーン君、おはよう。」


 僕はまだギルド見習いのGランクだから、基本的に薬草のような簡単にできる常設依頼か、街の中の依頼を受けることになっている。


 「今は、街の中の依頼はありますか?」


 「今はないから、薬草や毒消し草の採取をお願いね。」


 「わかりました。行ってきます。」


 「行ってらっしゃい、気を付けてね。」


 僕はギルドを出て町の外に向かいました。


 冒険者ギルドのランクは特級、A級、B級、C級、D級、E級、F級そして成人していない子供がG級となる。成人は12歳からとなっており、12歳に満たない両親のいない子供は、基本的には孤児院に入ることになっている。しかし、この街の出身ではなく、かつ冬の大雪の真っただ中にこの街に来たため、孤児院に入れず、色々な事情を考慮した結果、ギルドに冒険者見習いとして登録した。


 この街の門に近づくと門番をしている人が見えてきました。

 

 「おはようございます。」

 

 「おう、おはよう。坊主、気をつけてな。」


 「はい、気を付けます。」


 門から出て、少し道を進んだところで、森の方に向かい、急いで木に登りました。

木に登る時は、手から石を細く出して枝に乗れるように、木の幹の巻き付かせて、石を体内に戻す感覚で木の枝に乗れます。


 これは、僕の固有の石喰いが可能にしていることです。固有とスキルが存在し、固有は人が生まれた時から持っているもので、スキルは、人が努力することで得られる可能性のあるものです。


 固有は、女神さまが人が魔物に対抗できるようにもたらしたもので、1人につき1つ与えられます。剣士や騎士、魔法使いのような戦闘に向いたものから、料理人や大工、司祭、執事・メイドのような戦闘に向かないものがあり、ステータスやスキルの覚えやすさに影響を与えます。


 僕の固有は、石を喰うことで自分の一部にすることができる能力です。石を喰えば、自分の手足のように石を操れるため、とても強力な固有です。また、魔石や宝石も喰うことが可能で、どうやら魔石を喰えばその魔物が習得していたスキルを覚えることができる可能性があるようです。


 この固有のことを知った受付嬢のエリカさんと冒険者チームの”蒼雷の剣”の人に、固有は可能な限り他人に知られないようにすることや、魔物のスキルを覚えるには魔石を10個は必要であることを突き止めるのに協力してもらえました。現在は、1日に1個しか魔石を喰うことができないため、10日すれば、魔物のスキルを得られます。


 スキルには、剣術や槍術のような武器スキル、回復魔法や火魔法のような魔法スキル、採取や採掘のような採集スキル、料理や錬金術のような生産スキルがあります。スキルは始めはレベル1から始まり、10まであります。


 木に登ると、木から木へ飛び移れるように手から石を隣の木に伸ばして移動していくようにします。


 木の上にいれば、森の中でも比較的安全に移動することができるからです。少なくとも、スライムやウルフ、ホーンラビットは木の上に攻撃が届きません。


 木から木へ移動しながら、薬草を探しているとホーンラビットがこの先にいると”気配察知”のスキルでわかりました。


 「まずは、ホーンラビットを倒そう。」


 ”隠蔽”のスキルで気配を消して木の上を移動し、ホーンラビットのいる場所まで行きました。ホーンラビットは真上まで行き、石を剣のように切れる形にして出して、とても重いと感じたらホーンラビットに落としました。


 ”ドン”と音がし、ホーンラビットの様子を見ると、上手く首を落とし石は地面に刺さっていました。


 「よしっ、急いで逆さまにしよう。」


 周りに魔物がいないことを確認し、木から降りて刺さった石を戻し、ホーンラビットを逆さまにして血が流れ出るようにしました。


 「血が止まったなら石で包もう。」


 血が出なくなったため、ホーンラビットを包むように石を出し、密閉したら背負い袋に入れました。こうすれば、石の分重くなるが、背負い袋を汚すことなく獲物を運ぶことができます。


 「解体所で解体させてもらって、もう少し奥の方の薬草を採取しよう。」


 僕は、比較的安全に森の中を移動できるため、森の奥の方の薬草や毒消し草を採取するようにしています。道に近い場所の薬草は、冒険者になったばかりの人が取っているからです。


 再び木に登り、森の中を移動すると少し開けている場所に薬草が生えているのが見えました。


 「近くに魔物はいないな。なら急いで薬草を採取しよう。」


 薬草や毒消し草は葉だけでいいため、半分だけ取って残せば、すぐにとれるようになります。また、スライムの死骸を撒けば早く葉が取れるようになります。


 「スライムの気配かな?」


 ”気配察知”には反応しませんでしたが、”魔力感知”にスライムと思われる微弱な魔力を感知しました。


 「やっぱりスライムか。藪からはみ出しているな」


 近づいていくと、藪の中でじっとしているスライムが見えました。スライムは中の魔石がなくなれば死にますが、酸を持ち、武器を傷めるため、魔法で対処するのが基本となります。


 僕は、石を長い剣のような形にして出して、スライムに振り下ろしました。すると石の先がスライムの中に入ったため、石の形をスライムの魔石を包むように変形させました。石を体内に戻すように縮めてスライムの魔石を回収しました。


 「スライムの魔石も無事回収できた。川を見かけたら洗おう。」


 スライムの死骸を、石で地面ごと包んで先ほど薬草を採取した場所に戻り、かけました。


 「まだ薬草は足りないから。もう少し奥まで行こう。」


 その後も木の上を移動し、薬草と毒消し草を採取し、ホーンラビットやスライムを倒し、十分に手に入れたら川でスライムの魔石を洗い街へ戻りました。


 「薬草が3束(1束10枚)、毒消し草が1束(1束10枚)、ホーンラビットが3体、スライムが4体か。スライム以外はギルドに提出しよう。」


 門番にギルドカードを出して街に入り、ギルドに入りました。受付嬢のエリカさんに薬草と毒消し草を提出しました。


 「薬草3束、毒消し草1束ね。確認するから少し待ってね。」


 「はい。」


 しばらくして確認が終わりました。


 「確認が終わったわ。両方とも問題ないからこれが報酬の銅貨2枚と鉄貨50枚ね。」


 薬草は1束鉄貨50枚、毒消し草1束銅貨1枚だ。鉄貨100枚で銅貨1枚になる。


 「ありがとうございます。解体所借りてもいいですか?」


 「ええ、大丈夫よ。そろそろお昼だから、解体が終わっら食堂に行きなさい。」


 「うん、わかった。」


 ギルドの隣にある解体所へ解体しに行きました。

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