第40話 砂糖と油
結論から言うと、大騒ぎになった。
「この魔道具は何ですの?!」「まあ、この絵が紙に…」「一体どういう仕組みで」
サトウキビと砂糖大根、アブラナにオリーブ。それぞれ加工が大変みたいだから、パワポで紙芝居みたいにして持って行ったのだが、これはどうやって作るのかということでパソコンとプリンタを出したら、この有様だ。
役場が役場としての機能を果たさなくなったため、必然的に会議は神殿の西棟、社務所部分で開催。俺としても、職場は近ければ近いほどいい。いや、役場の二階も一応使えるんだが、あそこはいい匂いがして駄目だ。どうしても気が散ってしまう。
とりあえず、こちらに来て朝一番に作ったサトウキビと砂糖大根、そしてアブラナを応接間に持ち込み、紙芝居と一緒にプレゼン。砂糖と植物油が作れるようになれば、きっと住民も喜んでくれるだろう。そう思っていたのに。作物そっちのけでみんなが食いついたのが、プレゼン資料とパソコンの方だった。
「はぁ。もう家ではほとんどパソコン使ってないし。ブラウザくらいなら、閲覧してもいいよ」
俺はそう言って、パソコンを置いて来た。早速ベルティーナがチェアに陣取り、背後からビビアーナとライオンのお姉様方が覗き込んでいる。日本語も英語も分からないだろうから、しばらく貸し出しておけば飽きるだろう。
さて、気を取り直して役場へ。既にとんでもなく良い匂いが漂っている。そう、前回大量生産したスパイス。彼らはスパイスカレー作りを始めたのだ。
「ユート様!カレーって素晴らしいわ!!」
役場に入った途端、アイーダがカウンターの奥からすっ飛んできて、両手を掴んでぶんぶん振られた。気に入っていただけたようだ。そう言えば、こっちのパンはナンのような素朴なもの。カレーに合わないはずがない。
この間食べた
そんな彼らに、俺は枝豆の塩茹でを伝授する。簡単だが手が止まらないヤツだ。これは塩が大量に必要だな。また買って来なければ。
俺はしばし村人と鹿肉料理を楽しんだ。赤ワインが前回より美味しくなっている。朝っぱらから居酒屋でワインなんて最高だ。明日からまた仕事だが、これがあると思えば頑張れる。
そして今回、もう一つの本題。
「この辺でいいですかね?」
「ユートの村だ。ユートの思うままに」
ということで、俺は村の南側、アパートの近くに学校を建設した。移住した獅子族の皆さんからは、王族の師弟のために学校を建てて欲しいという要望があった。教師を務める従者もいることだし、天狼族や栗鼠族にも子供はいる。これでやっと教育機関が整う。いいことだ。
村の住環境と食糧事情の充実で、天幕からの移住希望者が相次いだ。上下水道完備、わずかなコインで光熱も賄える快適なアパートと、村からの差し入れ食糧の美味しさが決め手となったようだ。人間族が
一方この流れにおいて、頑として村に入れない者もいる。
「俺を何と心得る!」「まあっ、私を弾くだなんて、身の程知らずな!」「平民風情が、恥を知れ!」
という部類の奴らなんだが、栗鼠族の族長たちのように「全部寄越せ」のジャイアニズム思考か、もしくは「頭の黒いネズミ」のどちらかだそうだ。
「ほほほ、誠に良い試金石となりましたわ」
とは第一王妃談。内部分裂やスパイ疑惑、人格破綻者には手を焼いて来たらしい。貴族の世界も大変だ。
新たに移住した希望者のためにアパートをもう一棟用意し、それから彼らの希望するテナントを建てる。従者の中には茶のエキスパートがいて、茶の木のみならず各種ハーブが豊富なこの村で、あらゆるお茶を自分たちの手で作ってみたいという。また、コーヒーにも強い興味を示していて、「大変だからこそやりがいがある」とのこと。
また、彼らからは「異世界のスイーツを作りたい」という希望が出ているので、そのうちレシピ本をゲットすることになった。こっちで砂糖と油が手に入るようになったら、何かしら簡単なものが作れるようになるだろう。後は酪農でも始まればいいんだけどな。
なお、サトウキビと砂糖大根、アブラナの栽培が成功した段階で、精糖工場と精油工場が建設出来るようになった。首脳陣たちで就職希望者を募り、近いうちに稼働を始めるそうだ。人口も増えたことだし、ガンガンコインを稼いで豊かに暮らしていただきたい。
さて、後はいつも通りに家に帰り、適当に畑仕事を済ませたら、気持ちよく
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