第31話 三人娘再び

 村との意思疎通、橋渡しの業務については、彼女らと一度詰めたことがある。なので、改めて俺から申し出ることはない。


「君たちからは、何か要望はないかな?」


「ユート!これのもっとデカいヤツねぇか?こう、殺人熊マーダーベアを一撃で殺れそうなヤツ」


「アニェッラ。これは調理用だ。あっちの世界では、戦闘用は手に入らない。捕まってしまうからな」


「そっか。じゃあ、やっぱこれは槍の穂先だな!」


 だから調理用だ。


「ユート様!このお砂糖、あといかほど手に入りそうですの?!」


「いや、買おうと思えばいくらでも買えるが、100人分は無理かな」


「ええ、分かっておりますわ。こういうのは希少な方がいいんですの。早速貴族と渡りを「姉ちゃん、転売はダメだから」


 コイツら、相変わらずだな。


「ユート。この間姉ちゃんに渡した、紙とペンはある?」


 そうだな。村人との話し合い、意見の取りまとめには、筆記用具が必要だ。俺は買い物メモに、コピー用紙とボールペン、鉛筆、消しゴムを追加した。




 さあ、何だかんだ時間が過ぎてしまった。「何かいい匂いがするな」と言っていた三人娘をオッサンたちに押し付けて、さっさと帰宅。三十六計逃げるに如かず、餌付け要員が増えたら困る。


 洗濯機は止まっていた。さっさと干す。それにしても、ここで洗濯乾燥が出来るのは地味に嬉しいな。多少面倒だが、ほぼコストゼロだ。次でいつもの洗濯物は終わり。もう1回回してからあっちに帰るか。


 ベランダで薬草を植え直しつつ、キッチンに戻る。今からカレーを作る気力はないが、回鍋肉の素をリピして来たんだった。コイツをもう1回作って、在庫に入れておく。一度作ったから作業も早い。ピーマンも切ってあるしな。


 さあ、最後に風呂に入ったらフィニッシュだ。もう最近、こっちの滞在時間も適当。前はこっちに来たからには、出来るだけ薬草を育てて畑を増やし、効率的に村をデカくしようと考えていたけど、それももう適当でいいや。いやしかし、人口は増えて欲しいな。娯楽が増えれば人生は楽しくなる。


 風呂、飯、酒。癒されること以外はしない。無理はしない。頑張らない。


 好きなだけ風呂に浸かり、身支度を済ませてさっぱりして。キッチンを片付け、最後の洗濯物を干して、最後は薬草を収穫して適当に畑を世話して。まだ陽は高いけど、俺はベッドに潜り込んだ。




 おはようございます。こちらは土曜日の8時。まだ土曜日だ。有給ヒャッハー。


 さて、いつも通りにパンとコーヒー。あっちで焼いておいた食パンも、これで終わりだ。買って来なければ。


 今日こっちでしたいことは、まずドラッグストアに行く。シャンプーやボディーソープは、いさぎよくあっちにもデカいの置いておこう。それから髭剃りなんかのグルーミンググッズ。泡風呂の素。そして洗濯用洗剤。


 次に100均で、コピー用紙と筆記用具。あとは食パン買いにスーパーかな。あっちで頑張って食費を抑えるつもりでいるのに、何故か食費が余計にかさんでいる。やっぱ酒ばっか飲んでるからか。


 オリーブの苗木、さとうきびの苗、砂糖大根の種はネット通販。到着は次の土曜日を指定…明日配達可能なの?なら、明日の夜19時で。ちゃんと起きとかなきゃな。あと、シーツや布団カバーも持って行って洗うか。布団も干したいところだが、こっちはまだ肌寒い。あっちに行ってる間に、こっちで寝てる俺が風邪引いても困るしな。———あ、そうだ。その間は、コタツで寝ればいんじゃね?!


 タオルとシーツは、この間アニェッラに雑巾にされてしまった。しかしまだ、ギリギリ替えはある。特に向こうの寝具は、早朝出勤の時に通勤靴で汚れてしまった。ああ、あっちの家はなし崩しで土足になっちゃったんだよな。次にバージョンアップする時は、是非土足厳禁にしたい。




 まずはドラッグストアから。いつものシャンプー、コンディショナー、ボディーソープをポンプボトルで。髭剃りや歯ブラシなんかも、旅行用じゃなくて家と同じヤツをもう一組だ。そして使い潰した旅行用は、念のために新調してしまおう。ほとんど使ってないけど、随分古いし。切れ味の悪い髭剃りは肌荒れの元だ。


 泡風呂の素は、ネットで見たヤツがあった。とりあえず、香りの良さそうなものを試しに1つ。それより、ずらりと並ぶ入浴剤の数々よ。ヒノキの風呂、ご当地温泉、癒しのラベンダー。よし、1つずつゲットだ。


 そして洗濯用洗剤。いつものコインランドリーは洗剤自動投入型だから、長らく買ってなかったけど、今はいろんなタイプがあるんだな。とりあえず、以前使っていたものの新バージョンを。おっと、ホームクリーニングなどと魅力的な響き。この際、スーツも洗ってしまうか。クリーニングに出すの、地味に面倒なんだよな。綺麗になって帰って来るのは有り難いんだが。


 ダメだ。ドラッグストアも、100均と同じ。見るもの見るもの欲しくなる。しかも、食品なんかも置いてあって、スーパーよりも安いときた。魔窟だ。魅力的な商品と目を合わせないようにして、素早く出よう。


 100均では、紙とボールペン、鉛筆と消しゴム。とりあえず、全て質より量だ。おっと、鉛筆には鉛筆削りも用意しておかねば。今は手回し式まで100均で買えるんだ。100均、恐るべし。


 最後にスーパーに立ち寄り、パンを補充しようとしてふと思い当たる。あっちでもらったナンみたいなパンがあるが、あれってチーズ乗せて焼いたら、チーズナンにならないか?いや、いっそピザソースを塗れば、ピザになるんじゃないだろうか。何てこった。そんなの試してみるしかないだろう。迷わずゲットだ。ヤバい、俄然楽しみになってきた。


 スーパーから足早に帰宅。早速ダイブだ。布団類をごっそりインベントリに収納し、コタツをうたた寝モードに整えて。温かい。よし。アラームを14時にセットして、いざ農村へ。

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