第14話 日曜日の買い出し
目覚めたら、日曜日の朝8時だった。土曜日の午後遅くにあっちに行ったから、ちょっといっぱい寝過ぎた気がする。農村アプリを使い始めてから、初めて「時間を損した」感覚に襲われた。夜に一度アラームを掛けておいても良かったかも知れない。いやしかし、仮に夜に起きたところで、買い出しに出掛けるわけには行かないな。ご利用時間は計画的にってことだ。
あちらでまとめた課題は4つ。農作物の購入、洗濯物干しグッズの購入、オーブン料理に必要な具材の購入、そしてコメの調達と炊飯。
農作物は、とりあえず100均で種を買って来よう。下手に野菜や果物そのものを買うよりも、安く上がりそうだ。物干しロープも売っているかも知れない。次の給料で、物干し台を買ってもいいな。
オーブン料理で使うのは、オリーブオイルとニンニク。ニンニクは、あっちで栽培出来るように玉のヤツを買って来よう。それから、最近ずっとコンビニ弁当ばかりで、コメを切らしている。家にあるのはレンチンご飯だけだ。少量パックを買って来よう。炊飯なんかは、栽培が成功した後だ。
そういえば、あっちでインベントリに入れといた熱々のとうもろこしはどうなったかというと、なんとこっちでも熱々のままだった。状態保存とか時間経過無効とか、そういうヤツだろうか。ヤバいな。ということは、あっちで料理を大量に作ってインベントリに入れておけば、いつでも熱々が食えるってことじゃないか。これで本格的に、光熱費と食費を浮かせられそうだ。
もちろんビールも冷たいままだ。ナイスアプリ。今度から、冷やしたいものは一旦冷蔵庫で冷やしてから、全部インベントリに突っ込んでおこう。
朝食は、昨日あっちで食べ損ねた分厚い食パン。朝からビールに行ってしまったからな。インベントリの中に入れておけば状態が保てるなら、別に今食べなくてもいいんだが。ちょっと口が贅沢になってしまっている。やっぱりいいものを食べると、優雅な気分になる。
さっさと身支度をして、スーパーと100均に。オリーブオイル、ニンニク、それからコメ。コメは、精米したヤツではダメなんだろうか。一応、普通のを2キロと発芽玄米っていうお高いの、それからついでに五穀米を買っておく。思ったより高くついてしまった。あとは水だな。浄水コーナーでゲット。重い。やっぱりスーパーは、後回しにしておくべきだった。しかし、大きなリュックに入れるふりをして、リュックの中からインベントリに放り込む。昨日考えた技だ。これで、大きなリュックの中身は空っぽ。実質手ぶらになった。良し。
次は100均だ。目についた種を5つほど。皮を剥いたり、下ごしらえが面倒なのは後回しで、ほうれん草、小松菜、水菜、ネギ、ブロッコリー。全部緑だな。まあいいだろう。他にも栽培してみたい野菜や果物はたくさんあったけど、全部に手を出していたらキリがない。あと、洗濯ロープは見当たらなかったが、
午前中に買い物を済ませ、昼を待たずにベッドに入る。アラームは14時。これで、アプリ世界に二往復か三往復出来るだろう。期待に胸が踊る。待望のコメ栽培だ。
そしていつも通り、木の香りのする寝室で目が覚める。今日もこっちはいい天気。掃き出し窓を開け、空気を入れ替えだ。
鴨居フックは無事に取り付けられた。あ、そうだ。あっちで洗濯機を回してからこっちに来ればよかったな。そしたら次回、こっちで洗濯物を干せたのに。まあいい、昨日コインランドリーで一週間分の洗濯を済ませたばかりだ。洗濯物はまだそんなにない。洗濯板を買って、こっちで洗ってもいいかな。いや、面倒だ。
さあ、インベントリからコメを取り出し、栽培してみよう。ウキウキとインターフェイスをタップしていたその時。
「ユート様!こちらにお見えでしたか!」
畑の村民が俺を見つけ、村長が駆けて来る。一体何事だ?
「ユート様。実は、この村に移住したいという者がおりまして…」
作物の種類と、畑の面積が増えたせいか。住民増加イベントが勃発した。
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