第5話 シージェック!?
『だめ……もう、食べられないわ』
『私も……』
王女と直美は青い顔でフォークを置いた。
『アイスクリームの食べ過ぎだよ……』
良平が苦笑して言う。
『良平はよく食べられるわね』
『アイスクリームぐらい、腹の足しになってないさ』
そう言い、ぱくぱくと食べている。
夕食の時間、王女と直美は食事を始めたが、昼の遅い時間までゲームをしてアイスクリームや甘いお菓子を食べていたので、お腹は空いていなかった。
『お茶をお願い……ジャスミン茶がいいわ』
直美はお茶を頼んだ。王女も同じように頼む。
『キャッ!! ……ちょっと何なのよ、あなた!!』
突然女性の大きな声が聞こえた。
皆が一斉に声のした方に視線を向ける。
視線の先では、50代ぐらいの女性がこけて倒れていた。
どうやら男性とぶつかり、弾き飛ばされたらしい。
慌ててスタッフが女性を起こしに行こうとしてハッと足を止めた。
女性とぶつかった男は、手に小さなナイフを持っていたのだ。
『!? き……きゃあぁぁ!!』
女性もナイフに気付き、大きな悲鳴を上げた。
ただ事ではない状況を思わせる悲鳴に全員がそっちに意識をとられる。
「良平!」
直美の叫び声がして、良平や優がハッとして直美の方をみた。
――!!
直美と王女の頭に銃口が当てられていた。
それぞれの後ろに一人ずつ、黒っぽい服で身を包んだ男が立っている。
良平は、反射的に手をスーツの内側に滑らせたが、そこから手を抜き出すことが出来なかった。
『動くな!! ……ゆっくり手を出して上にあげろ』
良平は男の指示でゆっくり手を抜き、両手を上にあげる。
悲鳴を上げた女性に全員が気を取られた一瞬の間に、男たちが直美と王女に銃を向けたらしい。
これは……
綿密に計画されたシージェックだ――
どこから湧いて来たのか、迷彩服の男がひとり良平の元に来て良平を立たせると体を調べはじめた。
男は丁寧に調べ、良平が持っていた銃を2丁取り上げる。
また別の男が、優と警備に立っていた吉良のエージェントの体を調べてそれぞれの武器を取り上げていた。
『全員、椅子からおりて床に腰を下ろせ! 立っている者も、その場で床に座れ!! 指示に従っていれば手荒なことはしない! だから落ち着いて動け!』
リーダらしき男が全員を見回すようして言った。
客もスタッフも皆、わらわらと椅子から立って床に腰を下ろし始める。
直美と良平も怯えている王女をサポートしながら、床に腰を下ろした。
優達も言われた通りその場に腰をおろす。
『おい、杖を持っている人は、椅子に座ったままでもいい。一か所に固まって座らせろ』
杖を持った老人を床に座らせようとしている仲間の男を見てリーダらしき男がそう言った。
足の悪い女性や男性、車椅子の女性を一つのテーブルに集めて座らせる。
どうやら、この連中は全く話の通じない相手と言うわけではなさそうだ。
それでも警備員やSPには警戒しているようで、彼らがそうだと判断した者達は皆後ろ手に縛られ始める。
優と良平も漏れなく縛られた。
しかし、佐々木と祠堂、紀子、勉は拘束を免れた。
どうやらエージェントだとは気付かれていないようだ。
少しして、船長が連れて来られた。
『予定通りスーバルア王国の港へ入港をすることを求める』
リーダらしき男が船長に向かって言った。
『今からは無理だ。すでに修正した計画を出しなおして承認されている』
船長が答える。
船長はあまり動揺を見せないようにしているようだ。
冷や汗をかいているようだが、なんとか落ち着いているように振る舞っていた。
『もう一度、修正するんだ。……でないと乗客の命は保障出来ないぜ』
男はそう言い、ライフルを客たちに向けた。
『まて、再申請してみるから慌てるな。それより、君たちはいったいなんなんだ? 目的を教えてくれないか?』
船長が男にそう聞くと、男はにやりと笑った。
『慌てるな……すぐにわかるさ』
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