第28話 神崎女学園7不思議ー2
生徒会からのメールでは、先日新たな7不思議を更新したことへの言及、そして記者というのが仮の姿であり本業が探偵であることから、学校で起きている怪現象への調査依頼がつづられていた。
悟君を帰宅させ、独り住居兼事務所のデスクに就く。
神崎女学院高等部。神崎女学園という言葉は、この女子校を指す。
かつて俺が『異能』と初めて関わったきっかけは、神崎海未という少女との出会いであった。
彼女は神崎女学園の生徒であると名乗っていたのだが、これは事実でありながら、認識する者は一人としていなかった。
それは、彼女が肉体から独立して活動する霊体に近い存在であったためだろう。
これには当然尋常の技術などではなく、『異能』が関わっていたと予測できる。
彼女の肉体は7年前の事件で既に死に体、無理に生かされた状態で、肉体を失った空良を現世に縛り付け、『異能』を絞り出す触媒としてのみ存在していた。
では、神崎女学園生の神崎海未とは何者であったのか。
これを調査するという個人的調査は、当時受けていた依頼である記憶から消える失せ物探しの少女と繋がることになった。
彼女は、学園生活を送りながらも、他者の記憶には残れなかったのだ。
俺が記憶していられるのは、彼女が本来の肉体を取り戻し、そして、俺の腕の中で息絶えたことが関係しているのかもしれない。
想いが強いからではなく、そういった仕掛けがあっただけのことだろう。
だが、俺はその仕掛けを忘れない。
彼女の死を、7年間の苦しみを、背負っていけるのは、もはや俺しかいないのだから。
俺は、学園7不思議の取材として海未の足跡を彼女たちに見つけさせた。
これは、海未を7年間縛り付けた『異能者』の耳にも入ったことだろう。
俺がまた『異能者』であること、特に『異能』を『視る』ことができる『異能視』であることは感づかれるわけにはいかない。
『異能者集団』である『協会』メンバーの『異能』と比較して、明らかに荒事には向いていないからだ。
俺の『異能視』は、今のところ誰にも話してはいない。
助手である悟君にも。
最大限の警戒、それは、『異能者』の襲撃、職業倫理違反と言っても過言ではない振る舞いへの非難。
この2つだろう。あとは、素直に依頼をこなしていけば良いだろう。
俺は、寝室への扉を開き、探偵の時間から睡眠の時間へと歩みを進める。その歩数、実に5歩であった。
_危機が迫っている_
どうせ記憶に残らないくせに、何を言いだすのやら。夢見が悪くなる。消えてくれ。
_だが、私の計画には必要なことなのだ_
誰にとっての危機なんだ?あんたか?まさか俺か?
_この町、いや、この国の首都にとってだ_
規模が大きいな......。
_だが、君ならその運命を越えられるだろう_
買い被りだ。
_いや、私も『視た』と言えば分かるだろう?_
覗きとは悪趣味。やはり消えてくれ。
_そういわずとも、時間だ。健闘を祈る_
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