第二ノ刀 稲妻になるが如く
森を抜け歩き続けて数日程度、未だ道は見えれど人は見えず。幾らかばかりの獲物を斬り裂いたのみ。
ええい、面倒だとばかりに茂みを無視し一直線に進んで行こうとも中々無い。それどころか日に日に寄ってくる獣の数さえ減ってきている。もし、もしもこのまま何も見つからなければ何れか餓死しそうな雰囲気はあるが…。
ただ物事は意外と上手くいく様であり、人自体の気配を感じ始めていためにそこへと歩みを進めている。
「さあて、人と人以外のナニカ。一体全体鬼が出るか蛇がでるか…」
蠢く気配。
こちらへと走りながらやってきている人間らしき気配複数、人間とは思えない気配の存在も複数。
まあ、私にとってはこの世界がどのくらいかを知れる良い機会の一つではあるのだろう。
息を吸う。吐く。
もう一度吸う。
いくらぶりかと分からぬ人との出会い。なれば障害の一つや二つは断ち斬ろう。
音が近付いてくる、ガサガサというよりもドタバタというような音が距離を縮め、
「なぁっ!?こっちに人が!!」
飛び出したのは鎧を着た男、そして帽子を被り空を飛翔する女、最後に罠らしき物を持った男。
「おいあんた!こっちに逃げるぞ!!」
手を捕まれ連れられた後に出てきたのは虫…のような…多分虫?
記憶を辿った限り身体が近しいのはダンゴムシ…なのだが脚はバッタ系のものではあるし、よく見なくともサソリのような尻尾まである。
それはそれとして一旦置いて、第一村人との交流の方が個人的には優先順位が高い。
「なあ御方達よ、名前はあるのか」
流石に初対面ならば名前ぐらいは聞いておくのがマナーであり、交流の証である。だが、
「はあ!?あるが、今聞くことか!!」
流石に慌てているようで声を荒らげられる。
慌てている、まあこんなダンゴムシモドキに追いかけられているなら普通は焦るのが正しいのだろう。だが私は知らぬ。
「なれば仕方なし、アレを斬れば落ち着けるか?」
「ふざけてんのか!!」
済まぬ、名前も知らぬ御方よ。どうやら火に油を注ぐようなことを私は言ってしまったらしい。私は変な事を言ったつもりではないし極々真面目に言ったのだが………。
多分、後ろの煩いのを黙らせればいけるだろう。先程からカチカチカチカチ口か何かを鳴らされて五月蝿かったのだ。
瞬間的に逆を向く身体、刀には手を添えるだけ。
何やら信じられないようなものを見る目をされた気がしなくもないが、気の所為であろう。
大昔に何処かで作り上げた武術の技術の一つ【瞬歩】それを個人的な解釈によって捻じ曲げ作った技【爆脚】というものを行う。
【爆脚】簡潔に言うなら爆発したようなほど瞬間的に足場を蹴りつけ己を発射させる技。別名、人間ロケット。コレが意外と飛ぶし今ならばもの凄く速くできる。
この場合刀を振るうだけでも十分ではあるが、中々に五月蝿くイライラ?だかムカムカ?が溜まっているのでそれを受けてもらおう。
いつか至った居合ではない横斬り、一文字斬りの極地。動くものは0.1秒違うだけでさえ的がズレる。そのためにそのズレを含め確実に斬るという意思により過去も未来も現在も全てを斬るための技。
どちらも速いのは知い為、私の知る速いものに例えて名をつけよう。
その名は
「
ダンゴムシがズレる。
脚から、尻尾から、身体から。
斬れ 斬れ 斬れ 斬れ、
残ったのは大量の横に広く、刀程にまで薄くなってしまった死骸のみ。
上に至った刀使いは何であろうが斬ってくれよう。
後ろで立ち止まった雰囲気を感じる。
恐らくお人好しの部類か、怖かったか。何はともあれ言わなければいけないことは言っておこう。
「御方達や、この虫モドキ…」
「私が斬っても良かったかい?」
おそらく生まれて一番だと言えよう笑みを浮かべ彼らと私は対面した。
備考:【光閃】
閃光の逆さ言葉であり、本人的に強いと思っている【光線】と合わせた洒落のようなものである。
備考:刀
本人が望み手にした無銘の刀。しかし、長い時を得て彼にのみ合う刀へと変化してしまい、凡百であった刀は誰にも扱えぬ唯一無二へと至った。
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