第2話(ルート1)

「っっ!!!」

ハッと目を開けると、見慣れた天井。でも、起こされようとした体は、お兄ちゃんの腕につっかかる。

「ん゛~…」

お兄ちゃんのうめき声。まずい、起きちゃう。息を潜めて動きを小さくする。

(どうしよう…)

ズクン、といつもの感覚。今日はもう、すでに一度トイレに着いてってもらっている。流石に2回も起こすのはお兄ちゃんに悪い。時計は午前4時。我慢できる。それよりも、だ。

(お兄ちゃんの布団でみちゃった…)

 あの、嫌な嫌な夢を。思い出しちゃって、また心臓がうるさい。

(もう、見たくない…)

ギュッと目を瞑っても、開いても、考えてしまう。

(こわい、こわい、こわい…もう、やだ…もう、)

 寝たくない。



「よし、そろそろ寝るか」

 金曜日の夜は1時間だけ夜更かしをしていい、これがお兄ちゃんとの約束。11時までの金曜番組を観て寝る、これが週末のいつもの流れになっていた。

(ねるの、やだな…)

最近、あまり寝れてないからか、本当は眠い。でも、寝たらあの夢を見ちゃうから、寝たくない。

「ほら早く、お布団行くぞ」

「おにいちゃん、トイレ、寝る前に…」

電気を消そうとしているお兄ちゃんにそう言うと、一緒に行こうか、と手を繋いでくれる。

 でもトイレなんて、5分もかからないうちに済んでしまう。用を足したお兄ちゃんは着々と布団のところに歩いていく。

「お、おにいちゃん!」

「今度はどうした?」

「え、と…のど、かわいちゃった…」

 電気をつけなおしたリビングで、お茶を飲む。でも、そこまで喉が渇いているわけでもないから、飲むのが苦しい。

「よし、じゃあ今度こそ寝るか」

「あ、のね、おにいちゃん、」

「次はなんだ?」

あ、ちょっと機嫌悪い。さっきより目の間にシワがあって、目がしぱしぱしている。疲れてるんだな…

「ううん…なんでも…一緒に寝たい」

「いいぞ、おいで」

寝たくない、だなんてわがままは言えなかった。


「っひっ、」

まただ、目が覚めて、汗びっしょりで、心臓がうるさくて。時計を見るとまだ1時間も経っていない。

(トントンしてもらったから寝れると思ったのにっ、)

今だって体はすごくだるくて、目を閉じてしまいたいのに。

(あ…)

水を飲みすぎたからなのか、いつもより強い尿意。

(おしっこ…)

 おにいちゃん、声をかけようとして戸惑う。時計を見ると、僕たちが布団に入ってから1時間しか経ってなかったから。

(こんなことならお水飲まなきゃよかった…)

後悔してももう遅い。お腹の中のおしっこは早く出たがっている。

(ひとりで…いこう…)

そっと布団を抜け出して、真っ黒な廊下に出た。

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