第27話 エターナル


『《鬼豪撃》ッ!!』


「《護刀》」


「《天炎剣》!!」


20メートルは離れている距離を一瞬で詰めてハルバードを振り下ろすエレドラ。その一撃はカラストの得意技護刀によって弾き返される。その一瞬で出来た隙にリリィが天炎剣を叩き込むが、それはエレドラの高速回避によって躱される。


『なるほど、防御、もしくはカウンター時に自身の技量や威力が上昇するスキルか。まさにタンクといったスキルだな。』


「本当に一回打ち合うだけで性質を看破しやがった、、、」


「カラスト、完全に学習する前に潰すよ。」


そうして走りだす2人、だが、それは圧倒的な戦闘経験と異常なほどのステータスを持つエレドラによって叩き潰される。


『遅いよ、欠伸が出る。』


「ぐはぁっ!?、、、」


護刀を発動する時間すら与えられず、ハルバードによって腹部を切り裂かれるカラスト。リリィはそれを見て即座に攻撃を仕掛けるがエレドラの無茶苦茶な姿勢から放たれる蹴りによって嘔吐しながら吹き飛ばされる。しかし、それはカラストの思惑通りであった。


「捕まえたァ!!!」


カラストは自身の腹を抉ったハルバードを思い切り掴んで、そのギラついた視線をエレドラにぶつける。その瞬間、ハルバードからバキッという嫌な音がなる。


『なっ!?』


「ナイス!カラスト!!」


ハルバードが嫌な音を奏でる瞬間、刃の部分から柄にかけて粉々にぶっ壊れる。それには流石のエレドラもおどろいた様子でその隙をリリィは見逃さない。


完全に隙を晒したエレドラの背中を、リリィの天炎剣が切り裂く。この程度の攻撃は本来ならばエレドラは喰らうはずがないのだが、これには理由がある。


(あの魔法使いに受けたダメージのせいでパフォーマンスに支障がでている!クソッタレ、爪痕はしっかりと残してきやがる!!)


『《鬼旋回》!!』


「《護刀》!!」


エレドラはハルバードを失ったのを認識した瞬間、魔力をハルバードの形に濃縮してスキルを発動する。全方向に放たれる斬撃がリリィとカラストを襲うが、カラストが護刀を発動したことで無傷に抑えられる。


ハルバードを破壊したカラストの奥義の名は、《壊吸》。触れたものを粉々に破壊し取り込み力にするスキル。あらゆるものから護り抜く護刀と、あらゆるものを破壊する壊吸の2つを操るのがカラストである。


『ハハ、面白いな。ならば武神エレドラとしてではなく、斜陽エレドラとしての本気を見せてやる。』


エレドラは魔力で作ったハルバードを解除し、顔の前で両手を組みニヤリと笑う。その時、エゲツない量と圧の魔力が抜き放たれる。


「二人共、下がれ。」


後方から聞こえるのは、ダンタリアンにより傷を回復させたレイリアの声。その右手には杖が握られており、目はギラついていた。


『【魔能解】ッッ!!』


「《エターナル》」


エレドラが魔能解を発動すると、人体に害を及ぼすレベルの魔力が豪速で周囲に放たれる。だがそのすべてはレイリアのエターナルによって掻き消されるが、エレドラを包む黒い煙までは掻き消せなかった。


(対魔族戦はここからが本番、ただでさえ異常な強さを持つエレドラの魔能解、こちらも全力で相手をしなければ。)


「カラスト、護刀で私の防御に回って。リリィは撹乱。攻撃は私がする。」


「「了解!!」」


そんな会話が交わされると、黒い煙が一気に晴れる。そこには額に二本の禍々しい角を生やし、右腕には青白いハルバードを握った先程までとは比べ物にならない強烈な圧を放つエレドラがいた。


『《斜陽鬼纏鎧》』


エレドラが呟くと、赤色のような、橙色のようなオーラがエレドラの全身を囲む。その瞬間、奴は瞬間移動の如きスピードを見せる。


『《斜陽鬼閃》!!』


「ぐはぁっ!?、、、」


防御など許されない速度で放たれるハルバードの一撃、カラストにはそれに反応する技術は無くただ己の肉体を切り裂かせることしか出来なかった。


「《ヴェネグスト》」


『《斜陽鬼豪撃》!!』


レイリアがやつに向けて超高威力の斬撃を放つと、エレドラはハルバードでの一閃で対抗する。先程までのエレドラならば押し負けていた勝負だが、今回は引き分けとなり、あたりに斬撃が散布する。


『おせぇぇ!!!!』


「ぐぅっ!?」


そのまま引き抜かれるハルバードは、レイリアの咄嗟に展開した魔力バリアを粉々に破壊し、レイリアの頬を掠める。もう、先程までのエレドラとは一線を画す攻撃力とスピードに達している。


『ハハハ!!賢者ってのも大した事ないね!』


「そっちこそ、英雄なんて言われてるくせに随分落ちぶれたわね。」


『元から私は英雄なんてガラじゃないからどうでもいいね!!それに、君には言われたくないなぁ!!』


「ふっ、そうね!!《エターナル》」


口論に終わりを差すのは、超高威力の衝撃波。それは至近距離にいるエレドラの骨を容赦なく痛めつけ、30メートル近く吹き飛ばす。


レイリアはローブについた埃をパッパッと払いその厳しい視線をエレドラに向ける。そして、ニヤリと口角を上げて口を開く。


「認めよう、お前は強いし舐めていたことも認める。でもね、アンタも私を舐め過ぎだったわね。」


『何が言いたい?』


「20年振りに、本気を見せて上げる。」


レイリアは杖の先端を地面に突き刺し、杖に付いている紫色のオーブを強く光らせる。


その時、大地が揺れた。


『なっ!?ここまでの魔力、暁九天ですらだせるわけが!?』


「たしか、暁九天の寿命って500年くらいだったっけね。」


レイリアの全身から放たれるのは、もう膨大なんて言葉では表せないほどに大きく、威圧的という言葉では表せないほどに強大な魔力。それは紛うとこなき、彼女の本気である。


『それが、なんだというのだ!?』


「私は千年戦い続けた賢者、お前の言う暁九天とは、格が違う。」


レイリアは杖を地面から抜き放ち、その閉じていた両目を思い切り開く。そして、正真正銘の必殺技が放たれる。


「《エターナル》」


杖の先端、紫色のオーブがエレドラのほうを指すと魔法が発動する。その時、文字通りエレドラの肉体に激震が走る。


『ぐはぁっ!!??、、、』


刹那。


放たれた魔法を視認も回避も行うことが出来なかった、いや、許されなかったエレドラは大量の血液を吐く。


超高威力の衝撃波。言葉にするのは簡単だが、その実情はとんでもなく恐ろしい魔法である。エレドラが回避できないのも無理はない、そりゃ、不可視不可避必殺の魔法なのだから。


さらにエレドラは、自身のダメージを正確に把握し絶望する。


(なにも、見えなかった。何も、感じれなかった、だと?、、、)


全身骨折、内臓という内臓が全てひしゃげ大魔族特有の異常な生命力でなんとか命を紡いだ状態である。そんな中、エレドラはひたすらに困惑した。


『こんな魔法、古代魔法のは無いはず、、、』


三百年を生きたエレドラの知識に、このような魔法は存在しなかった。不可視、不可避、必殺の威力を持つこんなデタラメな魔法など。


「それはそうでしょうね、これは私のオリジナル。喰らったものは、皆死んだから。」


レイリアはそう答え、魔力を高める。エレドラにはもう回避する力も、生き永らえようとする意思も残っちゃいなかった。


(あぁ〜、、、手、出すんじゃなかったな。)


「《エターナル》」


空間が抉れたような轟音が鳴り響き、魔法が発動されるとエレドラの全身は肉骨粉となる。そこにもはやエレドラの影は残っておらず、あったのは恐ろしいほどきれいな血痕だけであった。


「二人共、あっちの加勢にいくわ、よっ、、、」


「「レイリア!?」」


サッと振り向き、数百メートル離れたところで戦闘を繰り広げる勇者のとこに向かおうとするレイリアの体は地面へと崩れ落ちる。


魔力切れ(スピリットオーバー)。魔力の限界を超えて動いたことによる反動がレイリアの肉体を襲い、その意識を根こそぎ奪うのだった。



















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スキルツリーと往く異世界攻略記 〜俺だけ使える《スキルツリー》であらゆるスキルを獲得して異世界を生き抜く!〜 ピーマン @atWABD

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