第21話 チーム分け


「詳しい作戦を話す、聞いてくれるかな?」


全員が首を縦に振り、空気がより一層ピリつく。そりゃあとうとう、作戦が現実味をおびてきているのだから当然か。


「まず、決行は明後日の夜7時。夜襲でアルティメットスキルを使い、敵の雑魚兵30万を一気に殲滅する。その後に進軍し、閻魔ウロボス、そしてその側近二人に加えて強化モンスターの中でも、A+認定をされているモンスターを倒す係に分かれる。」


魔王軍第三部隊、我々デルタ王国が苦しめられている奴等の進化はその圧倒的な質と量である。閻魔ウロボスによって実質無尽蔵に作り出される強化モンスターは一体一体がBランク以上を誇り、確認されている限りだと12体のA+がいる。さらにA+の側近二人とSランクの閻魔ウロボス。こちら側もSランク以上の戦力を集めなければ対処は難しいのだ。


「閻魔ウロボスと殺り合うのは僕、勇者オルスロッドと空間の支配者ディアベル、そしてカイラ君だ。」


「え!?俺!?」


思わず声が出てしまった。いやだってそうだろ?人間だとXランク相当のSランクモンスターになんで俺?


「君が持つ天理眼、それは閻魔ウロボスにとってかなり厄介なスキルだ。それに君の模倣、それを上手く使えれば閻魔ウロボスは簡単に倒せる。」


「そ、そうなの?、、、」


オルスロッドの態度は飄々としたものじゃない、勇者らしい態度。つまり嘘は付いていないのだろう。 


「次に、斜陽エレドラの担当は賢者レイリア、護刀カラスト、リリィに頼みたい。」


「任せて頂戴。」


「承知。」


「は〜い。」


個人的に、このレイリアという魔法使いにはかなり興味を抱いている。なにせ、天理眼で見ると彼女の魂はとてつもない年月を経た歴戦のものだったからだ。なにかしら、寿命が長い種族なのだろうか。


「そして、海王ホープス。こいつの担当は剣神リヒド、ホーシン、テスラに頼みたい。」


「承知した。」


「了解やで〜。」


「分かりました。」


この布陣、改めて見ても異常な強さだ。例えるならば、一人で一つの国家と同レベルの強さのやつが9人いると例えれば分かりやすいだろうか。勇者に至っては世界規模の戦力だしな。


(俺がコイツのユニークスキル、いや、アルティメットスキルとやらを模倣したらどれだけ強くなれるのだろうか?)


それが出来るのなら、俺はどこまでも強くなることが出来るのだろう。それはどれほど嬉しいことか、俺は身に染みて分かる。


なにせ、この世界の住民にはレベルの限界値があるのだ。成長限界と呼ばれるもので、それにぶつかればレベルやステータスの成長はなくなる。もう己の技量を上げるしか無くなるのだ。だが俺は異世界転生者、成長限界なんてものは存在せず、どこまでも強くなれる。それはとても幸福だ。


「各自、作戦決行の日は万全に整えてきてくれ。集合は6時に北門集合、今日はここまでだ。解散してもらってかまわない。」


オルスロッドがそう締めくくると、聖大陸奪還作戦会議は幕を閉じる。




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「なんか凄い事になってしまいましたね、カイラ君。」


「まぁいつかは魔王軍とガチンコするつもりだったし、勇者という強力な手札が味方にいる状況で戦えるんだから、乗らせて貰おうと思ってるよ。」


「私絶対勝つよ!」


宿屋へ戻ると、店員さんを始めとしたこれまで関わってきた冒険者たちが物凄い勢いで喋りかけてきた。流石に機密情報を漏らすのは不味いから速攻で部屋に戻ってアスフィーに防音結界を張ってもらったけどな。


『カイラ、僕は確信したよ。あの勇者人間じゃないね。』


「それは種族的な意味?比喩?どっち?」


『どっちもさ、彼からは天使や神特有の聖気を感じた。それに彼は強いよ、少なくとも今のカイラ君は手も足も出ずに負けるぐらいにね。』


まぁ確かに、オルスロッドは俺と同じ転生者だ。アスフィー曰く種族進化するのは成長限界が無い転生者だけらしいからオルスロッドはレベル100を超えて種族進化をしている可能性が高い。その進化先が、神とか天使とか種族なのだろう。


(俺って、種族進化したらどんな種族になるんだろうか?)


ふと頭に思い浮かんだ疑問、それは俺の興味を掻っ攫うものであった。いや本当に気になるわ、閻魔ウロボスを殺したらレベル100になるだろうしその時に進化もできるのかね。


「ま、気にせず行こう。今は目の前の事態に全力で挑むことが先決だ。」


独り言を言ってしまってなんか恥ずかしいが、そんなのはどうてもいいだろう。さてさて、スキルの確認とか作戦を考えたりしますか。


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