第19話 勇者との遭遇
「ぐぬぬ、、、また負けた、、、」
「ふふふ、リリィさんや。俺に勝とうなど100年早いのだよ。」
「二人共、そろそろお昼ご飯ですよ〜。」
アースバジリスク討伐から2日、魔力切れを起こしては怨念喰いで回復を繰り返したため魔力の回復が死ぬほど遅いせいで未だに活動できないでいる今日このごろ。リリィとトランプをやって時間を潰していた。
まさに平和、圧倒的平和。正直アースバジリスクを討伐したせいで何かしら面倒事が起きるのは理解してるから今のうちにこの平和を楽しんでおきたい。
「ねぇテスラ、レベル今どのくらい?」
「アースバジリスク討伐のおかげで大分上がりましたよ、今は55です。」
「おおいいね、この調子で最低でもレベル80は行こうか。恐らく今後アースバジリスク級の化け物と殺り合うならそれぐらいは欲しい。」
お昼ご飯を食べるために宿屋の一回へ降りる中でそんな会話をする。ちなみに俺もレベル97まで上がったから、そろそろレベル100になる。アスフィーは神々の規定とやらで話せないらしいが、進化という名前からして人間の上位種や特異種になると予想している。
「リリィ、そういえば新しくユニークスキルを手に入れたんだけど魔力が回復してら模擬戦しない?最近は勝敗が五分五分になったしどれくらい使えるか試したいんだよね。」
「お、いいね。叩き潰して上げるよ。」
「あんまり怪我しないでくださいね〜。」
そんなこんなで、食堂に着いたので席に座る。なんだか周りからの視線が疑うような視線なのだが、俺達なんかしたか?
「まぁ気にせず行こう、この店のご飯は美味しいからね〜。」
事前に席に配給されていた食事にありつく。うん、とんてもなく美味しい。前世でいうフライドポテトと牛ロースなのだが、やはり米がないと少し寂しいな。今度探してみようかな?
まぁそんな事を考えていると、あっという間に食事を食べ終えてしまった。俺も15歳という食べ盛りの時期だしまぁすぐに食べ終わるわな。
「カイラ君、なんだか周りの視線がおかしいです。さっきまで疑うような視線だったのに、今は窓を見ながら焦っているような様子です。」
「たしかに、何かあったのか?」
俺達がそんな会話をした瞬間、宿屋の扉が空いた。その瞬間、俺達は臨戦態勢に入る。
(とんでもない魔力だ、殺意や敵意は無いが本能が奴等を警戒している。)
宿屋の入口には、全身を白に青のラインが入った軽鎧で包む爽やかイケメンと、全身を紫とピンクのローブで包み、謎にパープルのランドセルを背負う美少女、スキンヘッドと髭がよく似合う2本の長剣を持った威厳たっぷりのオッサンがいた。いかにも、何ていうんだろうな。伝説のパーティーみたいな雰囲気だ。
「すまない、ここにカイラという少年はいるかな?」
「え、あ、はい。俺ですけど。」
一瞬で席から立ち、ムラサメをいつでも引き抜ける態勢に入った俺がそう答える。それを聞いてきたのは爽やかイケメンだった。
「いきなり訪問、本当にすまないね、僕はオルスロッド。一応勇者をやっているよ。」
「私はレイリア、魔法使いよ。」
「リヒド、剣士だ。」
次々に自己紹介がされていくと、周りがとても騒がしくなる。しかし、勇者だと?
「おい、《勇者》オルスロッドに《賢者》レイリア、《剣神》リヒドだぞ。勇者パーティー勢揃いじゃねえか。」
「カイラ、、、アイツなにやらかしたんだよ、、、」
宿屋に数週間といるおかげで、周りのやつからは結構認知されている。だから周りの冒険者友達からなんか疑問の目を向けられるが、俺は本当に自分何もしていない!
「それで、俺に何か用ですか?」
「そんなに警戒しなくていいよ、今回は別にやり合いに来たわけじゃないんだ。」
「じゃあ、いったいなんのために?」
「ただ、あの15年前の悪魔を葬った冒険者とやらが気になっただけさ。それに、君からは同じ匂いがするんだ。」
「おなじ匂い?」
俺がそう返すと、とてつもない悪寒が全身を走り抜ける。寒気が止まらない、気付いた時にはオルスロッドは俺の真後ろにいて、耳の直ぐ側に顔を近づける。
「君、転生者でしょ?」
「なっ!?」
「安心してくれ、言ったじゃないか。同じ臭いがするって。」
真後ろから告げられる言葉に、俺は思わずムラサメを引き抜く。だがそれは元の場所に即座に戻ったことで回避される。だが、そんなのはどうでもいい。
(勇者が転生者だと、、、俺以外にもいたのか、、、)
てか、短期間に2回も見破られるとかどういうことだよ。こいつも鑑定妨害の突破スキル持ってんのか。まぁ耳元で囁かれただけだし周りには聞こえてないから良いけども。
「はは、良い反応するじゃないか。でも今日は手を出しに来たんじゃなくてむしろ逆さ、お願いをしにきたんだ。」
勇者オルスロッドは、飄々とした態度を崩さずに本題へと入ろうとする。しかしそれを止めるのは隣にいるランドセルを背負った魔法使いだった。
「オル、ここには民間人もいる。人気のないところで話して。」
「それもそうだね、カイラ君。君の部屋に行けたりするかい?」
「問題ない、分かってると思うけど、盗聴なんて馬鹿な真似は辞めろよ。」
俺は周りの奴等を睨みつける、レベル97の本気の睨みだ。レベル50もない冒険者たちにはさぞ辛かろう?それこそおしっこ漏らすくらいに。
俺達は勇者たちを連れて部屋の中に入る、敵意は感じないとは言え、いきなり豹変する可能性もあるし警戒は解かないでおこう。
「さて、本題に入ろうか。」
部屋の中で地面に座った勇者は、そう切り出した。その口調は先程までの豹変としたものではなく、人々の
「近い内に、このターレンダール公爵領に攻め込んできている《暁九天》閻魔ウロボス率いる魔王軍第三部隊を掃討する計画がある。その計画に、君たちも参加して欲しい。」
「少し、詳しい話を聞かせてもらっても?」
勇者オルスロッドの口から告げられる、恐らく国家機密であろう事実を表情変えることなく聞く。ちょっと、詳しい話を聞きたいな。
「どうやら大陸同盟は、現在聖大陸に攻め込んできている第三部隊を掃討することを決めたらしくてね。討伐には僕等勇者パーティーとディアベル、そして15年前の悪魔を討伐した君たちを起用するらしい。」
「話は分かりましたが、なぜ俺達を使う必要があるのです?勇者である貴方はXランク、その他の戦力もSSSランクの超一級戦力、Sランクの我々を使う意味が感じられない。」
「それは第三部隊の特徴に原因がある、第三部隊の部隊長閻魔ウロボスには、原理は分からないが生物を強化して従える能力を持つ。故に第三部隊には数千体の戦力があり、掃討にはある程度の実力を持った戦力が複数人必要になる。」
「そこで、俺達を選んだってわけか。」
「ま、個人的な興味もあるけどね。同郷だし。」
そうにやりと答えるオルスロッド、こ、コイツ!俺を面白がってやがる!
「そんでもって、明日の13時に公爵邸に来てくれ。そこで詳しい作戦を話す。」
「分かった、リリィ、テスラ、それで問題ないか?」
「私はカイラの言うことに従うよ。」
「同じくです。」
(アスフィーも、問題ないか?)
(あの最高神の寵愛を受ける勇者に興味があるし、是非その誘いに乗ってね〜。)
アスフィーは念話というか、俺の脳内を読み取り、俺の脳内に声を届けることが出来るのでそれで会話する。うん、全員問題ないようだな。
「勇者オルスロッド、最後に聞きたい。」
「なんだい?」
「その作戦が成功した時、俺達になんかメリットはあるのか?」
正直、魔王軍討伐とかクソ危険な仕事に対価なしで行くのはありえない。個人的には勇者が齎す恵みに興味があるだけだがな。
「そうだね、君はたしか模倣というものが出来るんだろう?僕のユニークスキルのうち一つを模倣させてあげるよ。」
「本当か!?」
「もちろん、損はさせないさ。」
Xランク、世界最強格の実力で人類の希望である勇者のユニークスキル。それを模倣できるのはかなり熱い。だがもちろん、戦闘中にもパクらせていただく所存だが。
「ま、取り敢えず詳しくは明日話すさ。今日はこれで退散するよ。」
オルスロッドは飄々とした態度に戻り、部屋から退散する。その背中は少しだけ、寂しそうに見えた。
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