第17話 15年前の悪魔


「《火炎球》!」


アスフィーと同化して魔法を放つテスラ、かなりのサイズの火炎球がBランクモンスターであるドレイクを襲う。


バフンッ!そんな音と共に大きなトカゲのような見た目をしているドレイクに火炎球が直撃する。その結果は即死、本来ならば火炎魔法の中でも威力が控えめの火炎球ではワンパンは無理なのだが、一撃で殺せたのには理由がある。


(精霊が扱う魔法には《邪悪特攻》がある。モンスターや魔族、悪魔、邪神などの邪悪な種族に対して威力を超強化する邪悪特攻のおかげでテスラは対モンスター固定砲台になる。)


「ようし、そろそろ報告場所に着く。警戒態勢で行こう。」


北門を出てから30分ほど戦闘しながら歩いてみた感想としては、思ったよりもテスラの火力が凄まじいと言うことだろうか。対モンスターや魔族なので人間には発揮できないのだが、アスフィーが基本的な属性魔法は大体使えるおかげで全属性を超火力で放つ化け物が完成してしまった。それにいざとなったらアスフィーを召喚して一掃してもらうこともできるしな。


そしてユニークスキルの精霊の守護者、これは精霊との親和性を超向上させ、精霊が自分の周囲に存在する限り自分が死ぬことも精霊が死ぬこともなくなるというチートスキル。亜神で実質死なないアスフィーが周囲に居る以上テスラは不死といっても過言ではないだろう。


「むむむ、、、静かすぎるし、魔力反応がない、、、?」


報告に上がっていた場所に到着したは良いものの、一切の物音がしないしバジリスクほどのモンスターが居るのなら確実に魔力が感じれるはずなのだが魔力反応がない。これは異常事態と言って差し支えないだろう。


(魔力を消費するが仕方ない、使うか。)


「《短距離探知》」


俺が使えるマーキングのスキルと、ディアベルの扱う空間系のスキルを組み合わせた短距離探知。半径50メートル以内の魔力を持つものを探知する便利魔法だ。しかし、俺はそれによって絶望を感じる。


なぜなら、俺達の真下に反応があったから。


「アスフィー!!!!テスラを守れ!!!」


『了解!!』


刹那。


揺れる大地、ひび割れる地面。激しい土煙と爆音が視界を遮る瞬間、俺の目の前には全長20メートルはあろうかという巨大な大蛇が見えた。


崩落する。魔力濃度が高く、ありえないほど硬い沈黙の平野の地面が崩れ去り30メートルほど落下して《巣穴》にたどり着く。


「おいおい、マジか、、、」


『これは、ちょっと不味いんじゃない?』


土煙が晴れる、先程の奇襲によって俺は右腿を貫かれ、リリィは頭を少し削られた。テスラはアスフィーが防御したため無傷だが、相当な衝撃を受けたはず。


だが問題は、俺達の目の前に居る明らかにバジリスクじゃないモンスターのことだ。全長は目視で大体20メートルほどで、鱗が土色。そして赤く光る殺意に満ちた瞳。コイツのことを、俺は一回だけ図書館で見たことがある。


「ネームドモンスター《アースバジリスク》。魔王軍によって土属性に強制改造されたバジリスクで、15年前の戦争で数十万人の兵士を土属性の王級魔法で殺したA+ランクのモンスターか。」


「そんなの、、、聞いてない、、、」


冒険者ギルドにも、コイツの注意喚起をするポスターがあった。それほどまでに知名度の高いモンスターである。ネームドとは、聖大陸の全国家が参加する大陸同盟によって正式に登録される災害指定モンスターなのだから、当然といえば当然なのだが。


テスラはアースバジリスクを見て絶望の表情を浮かべる。俺は冷静にムラサメを引き抜く。そしてリリィは顔を狂気の笑顔に染めながら啖呵を切ってみせた。


「アハハ!!楽しそうな相手じゃない!」


「それでこそリリィだ!テスラ!援護頼む!」


リリィは叫びを上げると、魔剣を持ってあ~すバジリスクへと突進する。俺もそれに釣られるように走り出してテスラに酷なことを告げる。だが、テスラにはアスフィーがついている。きっと上手くやってくれるさ。


「戦技―――天炎迅雷剣!!」


「《アーマーダウン》!!」


天炎の雷を纏い、超高速でアースバジリスクに斬りかかるリリィ。俺はアースバジリスクに向かって耐久低下のデバフ暗黒魔法を掛ける。


『キシャアァァァァ!!!!!』


リリィの炎剣がアースバジリスクに迫る瞬間、リリィに向けて大質量の岩塊が地面から射出すされる。リリィは本能でそれを避けるが避けた先には大地が変形して棘状になった沈黙の平野の地面がリリィの腹部を貫く。


「《カイオスグランツ》!!!」


リリィが結構なダメージを受けたのを確認した俺は、即座に魔剣術を発動してアースバジリスクのヘイト稼ぎと攻撃を行う。同時にリリィに治癒魔法をかけて回復する。リリィのことだ、2回目はもうあんな攻撃当たらない。


カイオスグランツ、魔力ガードを吸収して威力が増す暗黒魔法カイオスと装甲や耐久ステータスを無視する戦技グランツの組み合わせら、魔力を吸収して威力が増し、物理装甲を貫通する剣撃がアースバジリスクの硬い肉体を襲う。


「器用だなぁクソッタレ!!」


しかし、そんな剣撃はアースバジリスクが地面に潜ることで回避されてしまう。たしかに、コイツは厄介だな。それに加えて15年前に発動したと言われている天災級の魔法もあるなら、A+という評価も納得がいく。でもな、こっちには神さんがついてるんだわ。


「テスラ!やっちまえ!」


「《アースブレイク》!!」


テスラは地面に手をついて魔法を発動する。その名もアースブレイク、半径30メートルぐらいの範囲の地面を文字通りぶっ壊す破壊魔法だ。当然、地面に潜っているアースバジリスクにとってそれは最大の痛手である。


『ギシャアァァァァァァ!!!!!!』


怒り狂った形相で地面から飛び出すアースバジリスクの鱗には、少々の傷がついていた。やはりダメージが通っていたようだ。そんでもってリリィはもう全回復だぜ?


「《天炎剣》!!」


『ギシャアァァァ!!???』


地面から地上に出てきたアースバジリスクの角を上空から飛び降りてくるリリィは切り落とす。う〜ん、さっきの攻撃を根に持ってるなこれ。


だがナイスとしか言いようがない。バジリスクの角は魔法発動に重要な器官故に、これで大規模な魔法は使えないはず。


『ギシャアァァァ!!!!!』


「なんでだよッ!!!!」


全然そんなことなかった、普通に大地がゴリゴリ変形していって沈黙の平野の激硬地面の津波のようなものが今我々に迫ってきている。あんなの喰らったら即死待ったなしなんだけど。


「みんな集まれ!!」


俺は全員に集合をかけると、0.1秒ほどで二人共俺のそばによる。その瞬間俺はギルマスから模倣したあのスキルを使う。


「《短距離転移》!!」 


次の瞬間、俺達の視界は移り変わりアースバジリスクの背後になる。ちなみにさっきまで俺達が居た場所は陥没してるよ、危ねえ危ねえ。


(ディアベルの固有スキル《空間の支配者》。瞬間移動や空間の圧縮・切断を可能にする強力なスキルを模倣してやったぜ。)


だがこの魔法、想像以上に魔力の消費が激しい。Xを越える魔力量の俺でも何十回も使うのは無理だ。ディアベルの魔力量イかれてるな?


それは置いておいて、この状況をどう打開するか考えなきゃな。リリィの天炎やムラサメの剣撃ならばダメージは通るのだが地面に潜られたり大地の変形で防御される。


かといってリリィの魔法は対モンスター特効なので、大地変形で防御されたら絶対に崩せない。しかもアースバジリスクの攻撃は一撃一撃が必殺級の威力を誇るがゆえに、リリィや俺ならまだしもテスラはまともに喰らえばワンパンで死ぬ。


「こうなりゃ、持久戦しかないか。」


俺が選んだのは、最悪の選択。だが最も合理的で勝率の高い戦闘法だった。


リリィ、俺の順番であいつの相手を受け持ちテスラはその援護。順番待ちの間に片方が休憩して永遠に戦闘することでアイツの魔力切れやスタミナ切れを狙う。正々堂々とか一切無いけど、まぁ気にしないでいこう。






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