第16話 精霊王アスフィー


『はっはっはっ、良い反応するじゃないか。』


「なぜ、知っている?」


俺は冷や汗を垂らしながら精霊王を睨みつける。いやマジで、なんで知ってる?


『僕はこれでも亜神だからね、君が張り巡らせている鑑定妨害のスキルくらい無視して鑑定出来るのさ。あと僕はアスフィーという名前があるから、そっちで呼んでほしいね。』


「亜神、、、神様なのか、、、」


『そんな仰々しくならなくていいさ、今の僕はテスラを護るしがない精霊さ。それに、君が僕に話したい事って、テスラと一緒に魔王軍ぶっ殺そうぜって事でしょ?心配しなくとも、僕はテスラについていくよ。』


神のくせにメッチャフランクなアスフィーは、テスラにご執心のようだ。まぁそれは好都合、だが聞くことはもう一つある。


「もう一つ聞きたい、お前は、なんで俺が転生したのか知っているか?」


『ん〜、そうだね。君からは遊戯神ロペス様の気配を感じるし、あの方の気紛れで転生させられたんじゃないかな。』


「遊戯神?」


『うん、神の中でも上位神って呼ばれる強力な神だよ。あらゆる世界に《遊戯》、ゲームっていう概念を作り出した神様だね。』


そんな凄い神様に目付けられてるの、俺?てかそんなに気配するなら加護のひとつでも頂戴よ?


(そんな事言ってもしゃあないか、それに俺自身この世界が大好きだからむしろ感謝するべきだな。いや〜ロペス様マジパネェっす。)


『ハハハ、僕自身君にはかなり興味があってね。あの人間に滅多に肩入れしないロペス様がスキルツリーなんてものを与えるんだから、どんな奴なんだろうって思ってたんだよ。』


「それで、俺は期待に沿ったかい?」


『もちろん、というか期待以上だったよ。まさかその年で進化間際にいると思わなかった。』


「進化ぁ?」


なんだかコイツと話しているだけで、時間が無限に過ぎていくような気がする。知りたいことが多すぎるなぁ、まったく。


『いや、これを人間に伝えることは神々の規定で出来ない。まぁ僕やテスラは君に力を貸すことを約束するよ。』


「ありがとう、あときおk」


『わかってる、外にいる子とテスラの記憶から君が転生者ってことは消しておくよ。』


アスフィーが右手の人差し指をひょいと動かすと、テスラの意識が完全に消え、ドアの向こうからリリィがばたんと倒れる音がする。


「それと、俺はいつかアンタをも越える。それまでは力を借りるぜ?」


『威勢が良くて結構なことだよ、取り敢えず僕は久し振りの顕現で疲れた。そろそろ戻るとするよ。』


「あぁ、明日からは危険な討伐にも出る。ゆっくり休んでくれ。」


アスフィーは神だから眠気など無いはずなのにわざとらしく欠伸をして、テスラの背中に架純となって戻っていく。思いがけない収穫だったが亜神の協力が得られたのはかなり大きい。顕現にはテスラ自身の魔力量が関係してるっぽいがテスラの魔力はSSSだから長時間の顕現も問題ないだろう。


「これ、ディアベルにどうやって伝えれば良いんだよ、、、」


もういっそのこと黙っておこうと決めた俺は、リリィとテスラを2つのベッドに寝かせて床で寝るのであった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「ねぇねぇカイラ、この子に精霊王がついてるって本当なの?」


「あぁ、昨日実際に対談したからな。信じられないんだけど本当だ。」

 

「すいません、言う機会がなくて、、、」


「いや別に、気にしなくて良いよ。」


翌日、皆が起きたので冒険者ギルドに歩いて向かう。よくよく考えたらリリィは最近切ってボブくらいになった銀髪の美少女で、テスラは金髪ロングの青眼お嬢様でメッチャ可愛い。両手に花でワロタ。


「テスラ、今日から君にはアスフィーの力を使う訓練をしてもらう。クエストが終わったら例え魔力がすっからかんでも筋トレやら走り込みをさせるよ。」


「もちろん、私から望んだ事です。嫌なんて言いません。」


「なら良かった、アスフィーもテスラとの同化中の魔法発動、練習してくれよ。」


『りょ〜かい〜』


テスラの肉体から、テスラではなくアスフィーの声が聞こえるのは中々に不思議だが、意思疎通がやりやすいので良いだろう。


精霊魔法レベルMax、テスラは精霊魔法の極地に到達してるが故に精霊との《同化》が可能。別の言い方をするならば《憑依》というべきかな。まぁとにかく精霊との合体をして強くなることができる。


そして、アスフィーと同化してる間は亜神の力を一部ではあるが使うことが出来る。それは全身体能力の底上げであったり、地水火風などの属性魔法の発動、そしてアスフィーが俺にすら教えてくれない固有魔法でさえ扱える。


ただまぁ、その同化は果てしなく魔力と体力を消耗する。魔力のほうはテスラは大量にあるので問題ないけど、体力はハッキリ言ってゴミ同然なのでこれから鍛えていく必要がある。


「どれどれ、なんか良さそうなクエストはあるかなっと。」


「これなんか良いんじゃない?」


冒険者ギルドに置いてある巨大なクエストボードを探し回っていると、リリィがある一つのクエストを持ってくる。


「へぇ、魔王軍が放ったと思われるAランク最上位モンスター《バジリスク》の討伐依頼か。Aランク最上位となるとフォビアや凶暴化赤竜なんかよりも上ってことになる。アスフィーの力を試すのには丁度良いかもな。」


「え、、、バジリスクって確か、一つの領土をほろぼすくらいの実力のはずじゃ、、、」


「ちなみにだけどテスラ、このターレンダール公爵領には魔王軍第三部隊と言われる部隊が襲撃してきている。その部隊長は魔王軍幹部である暁九天の一人、《閻魔ウロボス》。世界の国々から《Sランク》を受け渡されたモンスターの1体さ。」


前にも言ったが、人間とモンスターのランク基準は全然違う。人間で言うSランクは国家戦力レベルだが、モンスターでいうSランクは世界崩壊レベルなのだ。まぁムラサメの元使用者のデュラハンもSランクなんだけど。


「まぁでも、これを受けようか。シリカさん!お願いします〜。」


「はい、かしこまりました。」


いつものように受付で営業スマイル全開のシリカさんにクエストボードを渡して、発注を行ってもらう。ちなみに俺達のランクはSなので、ギルドカードはダイヤモンドで出来ている。SSSのディアベルはヒヒイロカネと呼ばれる世界でも希少な鉱石を使っているらしい。


(地味に精霊魔法を見るのは初めてだから楽しみなんだよな〜、今度模倣(イミテート)して使おう。)


そんな事を考えながら、バジリスクの発見報告のあった北門へと向かうのだった。

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