第14話 厄介事の予感


「リリィ、感じる圧的に盗賊はAランク程度。こりゃ盗賊じゃなくてマフィアとかそういう奴等の可能性が出てきたな。」


「へぇ、それは愉快になりそうだね。」


時速換算にしたら500キロ程度の速度で走行する中で、相手の強さが大体分かってきた。こいつぁなんか嫌な匂いがするぜ。


近づくたびに強くなっていく魔力反応、何故だかムラサメが少し揺れている。なんか反応を示しているのか?


「オラテメェ等ぁ!!おんにゃのこ虐めて楽しいかぁ!!」


「楽しいかぁ!!」


若干、いやかなりふざけながら現場に着くと中々に凄惨な現場だった。


まず転倒したでっかい馬車、そんでもって高そうな鎧を来た騎士らしき人が4人死んでてさらに高そうなドレスを身に纏った15.16歳くらいの女の子が10人近くの盗賊に服を破かれている。うん、これは急いで正解だったわ。


「あ゙?なんでクソガキィ!」


「ちょっと黙ってて。」


俺は10人の盗賊のうち、強そうな一人以外の9人を一瞬で斬り殺す。うん、ムラサメはとんでもない切れ味だな。


ムラサメには3つの特殊アビリティがあり、その内の1つが《全切》。あらゆる魔法障壁も物理的な障壁も全て切り捨てることができるようになるアビリティ。故に、ムラサメに防御という行動は通用しない。ちなみに3つの内の1つ、

魂喰は魔力をムラサメに纏わせて殺した相手の魂を喰らい、ユニークスキルを1つ、通常スキルを1つ奪う能力だ。それと、これらのアビリティはムラサメに魔力を大量に吸わせてムラサメを起動させないと使えない。


「あの〜お嬢さん、こいつ等知り合いだったりしないよね?」


「ち、違います!襲われてます!」


「なら良かった。」


下半身は幸いにも、破かれた服で隠れているが上半身は完全にモロダシの女の子、恐らく貴族だろう子は泣きながらそう叫んだ。う〜ん、目のやりどころに困るけど取り敢えずこいつを殺さないとね。話はそれからだ。


「おいおい、良いところだったのに台無しじゃねえかよ。どうしてくれんだこのクソガキ。俺を誰だと思ってる?」


女の子から離れ、その背に担いでいる大剣を引き抜く頭目らしき男はそう答えた。いや〜盗賊の鏡みたいな男だな。ニチャニチャした笑顔が堂に入ってるよ。


(魔力量は中の上ってところか、持っている武器が大剣故に近接タイプだな。魔法は使ってこないと見て良い。)


「知らないよ、お前のことなんて。」


「いちいち鼻につくなぁ。冥土の土産に教えてやるよ!俺様はベルスター!カールハインツファミリーの頭目の《破砕》のベルスターだ!」


「あっそ、戦技――――炎剣撃」


高らかに名乗りを上げるベルスターが、喋り終わった瞬間。リリィは既に奴の背後に忍び込んでおり、その炎剣を振り抜く。その熱量は軽く数百度まで行くだろう。


「ぐおおお!!!!???」


だが、腐ってもAランクと言うべきか奴は大剣でリリィの炎剣を受け止める。だがな、こっちは昨日お前の数百倍強い爺さんと殺り合ったんだよ。


「戦技――――炎八咫之剣」


「ぐはぁっ!?、、、」


繰り出される炎剣の八連撃、それは一時的にではあるが音の速さすら凌駕するスピードでベルスターの四肢を離れ離れにする。はっはぁ〜リリィさん相変わらず早すぎるっす。


「《ダークネスランス》」


四肢を切断され、リリィによって空中に蹴り飛ばされたベルスターに追い打ちを掛けるが如く暗黒魔法を発動し、暗黒の槍が奴の心臓を貫く。う〜ん、Aランクの中では弱いね。フォビアのほうが断然強いや。


まぁでも、きっと数年前の俺達ならば苦戦していた相手だが、俺達は5年間で数倍に強くなったんだ。今更コイツ如きに苦戦することはない、だが、今目の前にある状況は無視できないものだった。


「え〜と、大丈夫?」


「ひっ、、、」


ベルスターをぶっ殺して一息つき、今も震えて腰を引かせている彼女に話しかける。だがまだ怯えているようだ。


(まぁ当然だな、あんなトラウマになる出来事の直後なんだから男である俺に話しかけられたらビビるに決まってる。)


俺と同じくらいの年であろう金髪ロングの青眼美少女が、全裸で泣いている。その髪の毛についている髪留めは、見るからに高級品だ。


「うん、取り敢えず宿屋に行こうか。」


「さ、触らないで、、、」


拒否られてしまった、仕方ない。あんまりこういう手段は取りたくないんだけど。


俺は手刀で彼女の意識を落とそうとする。だがその必要は無くなった。


「くはっ?、、、」


非戦闘員であろう彼女には追えるはずのないスピードで、リリィが彼女の首に手刀を落とす。すると彼女の意識は一瞬で消失する。


「ありがとうリリィ、正直こんな怯えてる子にはやりづらくてね。」


「全然良いよ、それに訳ありっぽいし早く街に戻ろ?」


そんな会話を交わして、リリィが肩を担いで立ち上がる。な〜んか、訳ありっぽいな。これはディアベルに相談案件かもしれない。

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