第13話 呪剣ムラサメ

 

「ギルマス、俺達の実力で行ける最高クラスのクエストを紹介してくれないか?」


「そういう事なら、最近異変が起きていてな。人手が足りなかったのだ。」


選定試験が終わり正式にSランクと認定され、あの後はすぐに帰った。そんでもって、翌日ギルドに来たらなんか異変が起きているらしい。


「我等がターレンダール公爵領は、魔族の拠点と最も近い城塞都市。故に弱いモンスターは魔族共に怯えてこちらに大量に流れ出てくる。それを対処するために下級冒険者を手配するのだが、その下級冒険者を狙って盗賊共が出てくる。この悪循環を断ち切りたいのだ。」


「つまり、その盗賊たちの処理を俺等にやってほしいってことか?」


「あぁ、最近だとAランク級のモンスターも出現していてな。高ランクの冒険者はそちらに手一杯なのだ。」


現状のターレンダール公爵領は、かなりの危機的な状況に陥ってるようだった。それに話しぶりから察するにAランクのモンスターの出現はかなり不味い事態なのだろう。


ちなみに、人間とモンスターのランク換算は全然違う。精密には、あるランクを境に意味が異なるのだ。


そのランクとはSランク。Aランクまではモンスターと人間同じぐらいの強さになるのだが、モンスターのSランクは人間のSSSやXランクレベルの強さを誇る。故に、Aランクモンスターが出てきてる現状、いつSランクが来てもおかしくないと言うわけだ。


「分かった、そのクエスト引き受けよう。」


「感謝する、報酬は50万ゴールド。危険度はAランクに設定しておこう。くれぐれも、気を付けて行くように。」


報酬が美味すぎてちょっとニヤニヤが出てしまったが、俺はすぐにギルドから翻して門へと向かう。しかしそこで気づいてしまった。


「あ、俺剣無いんだわ、、、」


「私も無いわ、、、」


おのれギルマス!絶対剣を買うお金で報酬の50万ゴールド無くなるだろ!!




◆◆◆◆◆◆◆◆




「むむむ、あまり良さそうなのが無いな、、、」


てことで、鍛冶屋にやって来ました。戦争の最前線というだけあって鍛冶屋は結構たくさんあるのだが、今回はギルマスの評判がいい鍛冶屋にやってきたぜ。


だが、これといって特筆すべき一点物がない。なんていうんだろうな、普通に良品はたくさんあるのだが凄く眼を引かれるようなものがない。


(てかギルマスの魔刀を見た後だとどんな剣も霞むな。仕方ない、妥協するか。)


俺がため息をついて、30万ゴールドのミスリル剣を手に取ろうとした瞬間。店主らしきオッサンが受付から出てきた。


「ちょっと待った、小僧。お前に見せたい品がある。」


「え?」


口を開いたのは、身長150ほどで髭を生やしたオッサン。恐らく、ドワーフという種族らしき男だった。彼は、俺の目を見つめながらある一つの《剣》を取り出した。


「《呪剣ムラサメ》、200年前に死んだSランクモンスター《デュラハン》が最期に残した呪いの剣。」


「こりゃ、やばいな、、、」


カウンターに置かれた刃渡り80センチほどの長剣は、柄が漆黒で刃は紫に紅色の模様がついている。そのオーラは、こうして近くにいるだけで気圧されるほどだ。


余りの妖しさと不思議な魅力に、つい手が伸びる。そして、その刃に触れた瞬間。俺の脳内に声が響き渡り、ムラサメから紫色の煙が噴射される。


―――――――――【見つけた】


そんな声が、頭に響く。噴射された紫色の煙が晴れると俺の右手には、ムラサメが収まっていた。



◆◆◆◆◆◆


呪剣ムラサメ レア神器級


魔女を愛し、魔女に愛された騎士は護るためにその身を闇に落とした。この剣は、その怨念の塊である。


《アビリティ》


【全切】

【怨念喰い】

【魂喰】



◆◆◆◆◆◆◆◆


「て、店主!?何が!?」


「儂にだって分からん。だが、その剣はお主を自らの主だと認めたのだ。その装備者を尽く呪い殺してきた呪剣がな。」


俺の右手に収まる呪剣ムラサメは、先程まで放っていた威圧的なオーラではなく、COCOLOが安らぐような優しいオーラを放っている。まるで、騎士が主を護るかのように。


まぁでも、思いがけない所で新しい強力な武器が手に入ったんだ。良しとしようじゃあないか。





◆◆◆◆◆◆◆◆



「良いなカイラは、そんな強そうな剣。」


「リリィだって、火属性の威力を向上させる魔剣を買ったじゃないか。」


「それはそうだけど、まぁいっか。」


俺達は現在、街の北門を出て最前線にいる。辺りに広がるのは草一つない枯れた平原で、ここのことを【沈黙の平野】と呼ぶそう。まあ周りは下級冒険者が必死に弱いモンスターを倒してるから全然沈黙じゃないけど。


ちなみに呪剣ムラサメはあのおっちゃんが譲ってくれた。どうやら親の代から受け継いできた呪剣らしく、引き取ってくれるなら金はいらんと言ってくれたのだ。まぁリリィの魔剣は50万ゴールド取られたけどな。


「にしても、こんな馬鹿広い平野で盗賊を見つけろって大分無茶だろ。」


俺は自分の口に出して再認識する。少なくともタイラントよりは小さいが沈黙の平野もありえないほどに広い。こんな中から初心者を襲う盗賊を見つけるってキツくね?


(あ、良い方法あるじゃん。)


俺はそこで、思いついてしまった。先程譲ってもらったばかりの呪剣ムラサメを有効活用する方法を。


「呪剣ムラサメの特殊アビリティの一つ、

怨念喰い。周囲の人間の悪意や憎悪などの悪感情を食らって自らを強化するアビリティ。これで悪意が強いところに向かえば盗賊居るのでは?」


待って、自分で考えておきながら天才かもしれない。そうだな、思い付いたらすぐ行動。まずやってみるか。


「《怨念喰い》」


呪剣ムラサメを掲げて、怨念喰いを発動する。すると、大量の悪意やら殺意が体にエネルギーとなって流れ込んでくる。モンスターの量も半端じゃないからメッチャ喰える。


「東か。」


その中でも、特に強く人間らしい悪感情を拾う。これは色欲か?ってことは女性が盗賊に襲われている?なら不味いなぁ。


「リリィ、急ぐぞ。」


「さっすがカイラ、便利だねぇ。」


リリィと俺は、その馬鹿げた身体能力を活かして東方向へと走り出すのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る