第11話 早速トラブル?


「ええと、兎亭、兎亭っと。ここだな。」


門を通ったすぐ側に置いてあった街の全体図から一番近い宿屋を探した結果、兎亭という場所だった。


見た目はかなりきれいで大きな宿屋だ、こうして扉の前にいるだけで結構賑わってるのが分かる。今は昼間だし昼食を食べているのかな?


「まぁ良いや。お邪魔します〜」


「あいよ〜!いらっしゃい!」


扉を開けると、カランカランという音が鳴って店員さんから歓迎される。店員さんはミント色の髪の毛に緑の眼、メガネをかけた美しい女性だった。この世界美男美女多くね?


ふむふむ、中は目の前に受付があってその右に部屋に繋がる階段、左に大食堂がある感じね。しかも結構綺麗だ。ちゃんと手入れされているのがよく分かる。


「すいません、一ヶ月ほどここで泊まらせていただきたいのですかよろしいですか?」


「もちろん大丈夫だよ!お兄さん一人かい?」


「いえ、もう一人女の子がいます。」


「ならある程度広くてベッドが2つある部屋の方が良いね、あいよ、306号室に行ってきな。」


そんな感じで鍵を渡される、流石宿屋の店員さんだな。女の子と二人で来たっていうだけでベッドが2つある部屋を手配してくれるとは。


「代金は6万ゴールドだよ」


「そんなに安いんですか!?」


「三食付き風呂付きでこの値段ってのがウチの売りなもんでね。」


店員さんから提示された値段は、日本円換算で6万円だ。普通のアパートなんかよりも圧倒的に綺麗な宿屋で、三食はそっち負担で風呂まであるときたんだからそりゃびっくりするわ。


でも非常にありがたい、風呂があるのは中々にデカいぞ。元々は現代日本人のため風呂は入りたいのだ。逆にこれまでの15年間耐え忍んだ俺を褒めてほしい。


「ありがとうございます、今日の夕方頃には戻りますね。」


「あいよ、8時には晩御飯だからそれまでに戻ってきなよ。」


「わかりました〜、ありがとうございます。」


そんな会話を交わして、速攻で部屋を確認すると俺は街へと繰り出す。これで教やるべきことの一つは終わった。ならば俺も游んでいいだろう!!




◆◆◆◆◆◆◆◆




「ぐぬぬ、、、リリィ、、、来ない、、、」


現在時刻、6時半。夕方には戻れと言ったのに帰ってこない。リリィに限って誘拐は絶対無いから何か面倒事に巻き込まれてるか純粋に時間を忘れてるのどっちかだな。


「しょうがない、マーキング発動。」


俺はこの5年間で、魔力性質を把握している人物なら遠隔でマーキングを発動することが出来るようになった。ええと、今は何処にいるんだ?


「冒険者ギルドにいる、、、リリィまさか、勝手に登録しにいったのか?」


おいおいおいおい、俺がやりたくても我慢していた事をリリィがやってると思うと無性に腹が立ってきたな。後でお仕置きだな。


まぁそれは置いておいて、何か面倒事に巻き込まれてる可能性もあるから走って向かう。いくら巨大都市であってもタイラントの方が断然広いからこんなの箱庭レベルだ。ちょっと時速500キロ程度で走ればすぐ着く。


「リリィ!何してる!って、何この状況?」


交差した剣のシンボルがついて居るでっかい建物の扉を、勢いよく開けてそう叫ぶと、なんかよく分からない状況になっていた。


「あ、カイラ。なんかこのオジサン達がゴブリンを狩るクエストに行こうって言ってきたから、弱そうだから嫌だって答えたら殴りかかってきたの。だから逆に殴ったらね、ギルド内での暴力行為は禁止って言われて捕まっちゃった。」


今の状況を軽く説明しよう、何故か陥没し手地面が5メートルほど抉れている穴に、ゴツい男3人が埋められていて、何故かリリィは手錠をかけられて連行されそうになっている。うん、改めて整理しても意味分からんな。


「あの、貴方はこの子の仲間ですか?」


「あはい、一応様子を見に来たらこうなってて、、、どうにかなりませんかね?」


これまたメガネをかけ、パープルのロングヘアーを靡かせる美人さん(恐らく受付嬢)がこちらに尋ねてくる。いや〜、ちょっとヤバいっすねこれは。


「まぁ、まだ初犯ですし殺しはしてないので今回は無罪にします。ですが、貴方達は冒険者志望ですよね。なら冒険者になったあとギルドでこういう騒ぎを起こしたら普通にクビにしますよ。あとこの床の修繕費は請求しますからね。」


なんかすんごい早口で色々言われたが、まぁ今回は金払うだけで見逃してやるってことでしょう。ならば任せろ、第三エリアでモンスターを狩りまくった影響で金なら腐る程ある!!


「はい、ほんますいません。あそれと俺の登録もお願いできますか?」


「分かりました、こちらに手を置いてください。」


リリィはどうやらもう登録を済ませているようだったので、俺も登録をしておこうと思う。


「これで登録ができるんですか?」


「この水晶には鑑定と刻印の術式が刻まれています。こちらで名前や犯罪歴を確認し、このカードに刻みます。」


水晶に手を置くと、まばゆい光が放たれて水晶の横においてある鉄のカードに文字が刻まれていく。


(うおっすげえ、俺も鑑定のスキル欲しいな。)


「はい、これにて冒険者登録終了となります。冒険者の説明をさせていただきますね。」


「よろしくお願いします」


「冒険者は、町の住民から出されるクエストや国や街から出されるクエストをクリアしたり、希少な素材をギルドに提供することで報酬をもらう危険な職業です。冒険者には階級が存在し、下から順にE.D.C.B.A.S.SS.SSS.Xまで存在します。」


「メッチャありますね。」


「冒険者登録後には、試験があります。その試験の結果次第で最初の階級が決まり、その後の活躍次第で階級は上昇していきます。受けられるクエストの危険度も階級によって決まるのでご注意を。」


うんこの人早口すぎて笑えねえ、まさか日常生活で並列思考を使うハメになるとは。


「貴方たち二人の試験は明日の朝9時に行います、ご遅刻はなきよう。」


「もちろんです。」


「冒険者ギルドについたら受付嬢シリカに呼ばれたと受付に言ってください。そしたら試験会場に連れていきます。」


そう告げ終わると、早口モードが終了した。リリィはちんぷんかんという様子だがまぁ宿屋についたら教えればいいだろう。取り敢えず今日は帰ろ。そろそろ8時だしな。

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