第2話 幼馴染が強すぎてビビるんだが
「父さん、ちょっと模擬戦の相手になってほしいんだけど良い?」
「すまんカイラ、父さん今日は村長に頼まれてホーンラビットを狩りに往かなきゃだから無理だ。」
「まじかぁ、、、まぁ、良いか。」
転生してから1週間が経った、あれから毎日特訓を続けてレベル8になりステータスも大分上がった。ちなみに魔法はまだ取得していない。いやどちらかと言うと、使えそうにないというのが正しい。
魔法を扱うにはスキルとして取得するのはもちろんのこと、魔力を操作する技術が要るらしいのだ。だけどそんな魔力を使える人がこんな辺境の村に居るはずもなく、俺は魔法を使える目処が立っていない。
「そんなに戦いたいのなら、隣のリリィちゃんとでも戦えばいいじゃないか。彼女はお前と同じ3歳だがとても強いぞ?異常なくらい。」
「そうなの?」
「あぁ、正直俺より強い。」
うちの隣にはダールさんという、父さんと同じ狩りを行っている大男と娘のリリィちゃんという家族が住んでいる。だがリリィちゃんがそんなに強いというのは初耳だ。
(そこまで言うのならちょっと戦ってみたいな。よし、今日はリリィちゃんを巻き込んで模擬戦祭りだ!!)
俺は意気込んで家を出る。その右手には木剣が2本握られており、ガッツリ模擬戦する気満々だ。
「お〜いリリィ!!遊ぼうよ〜!」
「あ!カイラ!久しぶりだね!」
家が隣なので、叫べば普通に届く。そして俺の声に反応して出ていた女の子がリリィ、銀髪ボブの、白銀の眼を持つ少女である。とても彼女が強いというイメージは持てない可愛らしい容姿だ。
「ちょっと一緒に模擬戦でもしようよ!」
「良いよ!私、将来の夢は冒険者なの!」
「へぇ、じゃあ強くならなきゃね!」
木剣の2本のうち1本をリリィへと渡し、お互いに少し距離を取る。そんな彼女からは意外な将来の夢を告げられたが妄想は後だ。
「それじゃ、よ〜い。始め!!」
俺が木剣を中段に、リリィが上段に構えたのを見て俺が開始の合図を鳴らす。
「てやっ!!」
「うおっ!?」
戦闘開始の直後、15メートルほど離れていた距離を一瞬で詰めてきたリリィが驚異的なスピードと重さの件撃を振り降ろしてくる。それを受け止めた瞬間、俺の腕は強烈に痺れた。
(重い!!まるで岩を受け止めているようだ!)
「まだまだぁ!!」
「こっちだって!!」
俺が上手く木剣を逸らして受け流すと、即座に中段に構え直したリリィが素早く2連撃を放ってくる。
だが一週間の地獄のトレーニングのお陰か、なんとか反応することができ回避に成功。そのまま木剣を上段から振り下ろして彼女を退かせる。
(なんだこの化け物じみた速さとパワーは!?普通の3歳の女児が出して良い出力じゃないだろ!!)
「カイラ、もう【遅い】。」
「ぐはっ!?」
リリィが後方に跳んで回避したと思った瞬間、彼女は俺の懐にいた。対する俺は木剣を振り下ろした姿勢で隙を晒している。
結果は必然、リリィの容赦無い振り上げが俺の顎に叩き込まれて真上に叩き上げられる。そんでもってそのまま意識が消えていった。
(強すぎだろ、、、)
俺の思考はそれを最後に、闇へと沈むのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ごめん、カイラ。久々に人と打ちあえて楽しくてつい。」
「いやいや、俺が弱いからだよ。むしろリリィの強さに凄い憧れるぐらいさ。」
「本当?明日からも出来る?」
「もちろん、こっちからよろしく頼みたいぐらいだよ。」
あの後10分ほどで目を覚ました俺は、日没までリリィとひたすらに模擬戦をした。結果は全戦全敗。数十回と立ち会って一回も勝てなかったどころか攻撃が一回も当たらなかった。泣けてくる。
(でもレベルメッチャ上がった!!うはうはやぁ〜!!)
今日の模擬戦40連戦で、レベル10になった。これでスキルポイントが50になったことで俺はかねてから欲しかったあるスキルを獲得する。
【並列思考】、魔力を消費することで思考を増やすスキル。簡単に言えば頭の中に自分が何人もいる感じで一つの思考で魔法を使ったり一つの思考で戦闘したり一つの思考で敵の考察をしたりなど、汎用性が恐ろしく高いため欲しかったのだ。
だが取得ポイントはなんと50、魔法スキルよりも高くこれ習得するだけで一週間の努力が無くなる。いや無くなるわけではないけども。
(そんじゃ並列思考発動っと。)
「うおっ、すっげえ感覚。」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
早速習得した並列思考を使ってみると、凄く不思議な感覚に襲われる。なんとも表現しがたい感覚だが例えるなら腕が4本に突如増えたみたいな感覚だろうか。うん、分からんよね。
でも効果は本物だ、今実際に高校レベルの数学の計算と大学レベルの科学の計算を同時に行ってみたら本当に同時に出来た。これ、慣れるまで違和感しかないけど慣れたら本当に凄いスキルになるぞ?
「あはは、すっげえ楽しい。」
思わず笑みが溢れる、だが仕方無いだろう?これだけ自分の成長を実感できるのだから。
俺はゲームなんかやっても人生のなんの役にも立たない、その頭脳を無駄遣いするな。そう言われ続けてきたけどゲームをしてきた、ゲームが好きだったから。なんだか、そのゲームに賭けた自分がようやく報われたような気がして、今最高に気分が良い良い。
「ねぇカイラ、大人になったら一緒に冒険者になろうよ!」
「それは楽しそうだね、リリィと一緒ならSランク冒険者にだってなれる気がするよ。」
「リリィも!」
そんな会話を交わして笑い合うリリィの笑顔は、とても可愛かった。こんな可愛い子からあの剣戟が放たれるんだから見た目に寄らないな。
「リリィ、もう時間だ。また明日。」
「カイラ!バイバイ!」
「うん、バイバイ!」
名残惜しいけれど、もう日没だ。お互いの家に戻ってご飯を食べて寝て、また明日剣をぶつけ合う。そんな妄想をするとニヤニヤが止まらない。
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