第2話 秘密の遺産
リアンは広場を離れ、イシュカルドの静寂な夜に身を包んだ。彼の心は戦いの余韻で鼓動していたが、同時にある重大な不安が彼の内心を覆っていた。ヴァルドとの決闘に勝利したことで得た尊敬とは裏腹に、リアンの存在がイシュカルドにとってますます複雑な意味を持ち始めていることを、彼は感じ取っていた。
彼の足は無意識のうちに、母親の家へと向かっていた。彼女はリアンが小さい頃から、彼の唯一の味方であり、彼の謎に満ちた血統の真実を守る人物だった。家のドアを開けると、暖炉の優しい光がリアンを迎え入れた。母親は彼を見るなり、深い悲しみと愛情が混ざった表情で抱きしめた。
「リアン、あなたは本当に強くなったわ…しかし、それがあなたを危険な道へと導くかもしれない。」母親の声は震えていた。
「母さん、僕はただ、自分の居場所を見つけたいだけだ…」リアンの声は疲れと決意に満ちていた。彼はヴァルドとの戦いで自分自身の中に新たな力と葛藤を見つけたことを知っていた。
母親は暖炉のそばにリアンを座らせ、深いため息をついた。彼女は古い、革で縁取られた本を取り出し、それをリアンに手渡した。
「この本には、ファイアハート王族の秘密と、凍火の結晶についての伝説が記されているわ。あなたはイシュカルドとファイアハート、両方の血を引く者。この世界の未来が、あなたの手にかかっているかもしれない。」
リアンは本を開き、古代の文字と謎に満ちた絵を眺めた。彼の心は新たな責任と運命の重さに圧倒された。母親の言葉がリアンの心の中で響いた。彼は両国の間の橋渡しとなる運命を背負っているのかもしれない。しかし、それは同時に彼自身の生命を危険に晒すことを意味していた。
リアンは深く息を吸い込み、冷たい夜空を見上げた。星々が氷のように輝いていた。彼の旅はまだ始まったばかりだった。凍火の結晶を探し、真の和平をもたらすために、彼は自分の内なる炎と氷の両方と向き合わなければならなかった。
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