氷炎の戦記

青木タンジ

冷たい火花

第1話 凍土の決闘

リアンはイシュカルドの広場に立っていた。彼の息は白い霧となって空に消え、足元の雪は彼の重みできしむ。広場は観客で溢れ、彼らの視線はすべてリアンと彼の対戦相手に注がれていた。相手はヴァルド―イシュカルドで最も恐れられ、尊敬される戦士。彼の目は氷のように冷たく、彼の大剣はどんな鎧も容易に断ち切ると言われていた。


リアンの手には伝統的な氷の剣が握られていた。彼は自分の心臓の鼓動を感じ、静かな冷静さに包まれた。彼はこの瞬間を何ヶ月も待ち望んでいた。これはただの戦いではない。これは彼がイシュカルドで自分の居場所を証明するための戦いだった。


審判が合図を送り、空気は緊張で凍りついた。ヴァルドは嵐のように前に進み、巨大な剣を振り下ろした。リアンはかろうじて避け、反撃の一撃を放ったが、ヴァルドは容易くそれを受け流した。二人の間の距離は瞬く間に詰まり、凍った息が交錯した。


ヴァルドの剣は再び空を切り、今度はリアンの肩に向けられた。しかしリアンはその動きを予測しており、体を低くして回避し、剣を氷の地面に叩きつけた。地面からは鋭い氷の刃が突如としてヴァルドの足元に向けて発射された。ヴァルドは驚いた様子で跳び退き、リアンに新たな敬意のまなざしを向けた。


観客は息を呑んで見守っていた。リアンの戦術は革新的で、イシュカルドの戦士たちが伝統的に用いる戦術とは明らかに異なっていた。彼は自分の血に流れる炎の国ファイアハートの血を否定できないことを知っていた。彼の戦い方には、氷の国の冷静さとファイアハートの情熱が融合していた。


ヴァルドは再び攻撃を仕掛け、今度は連続攻撃でリアンを圧倒しようとした。しかしリアンは、氷の剣を巧みに操り、ヴァルドの強力な一撃一撃をかわし続けた。そして、ヴァルドの一瞬の隙をついて、リアンは前に踏み出し、剣を氷のように冷たく、しかし炎のように鋭くヴァルドの防御を切り裂いた。


ヴァルドは後ろに倒れ、観客は驚きの声を上げた。リアンは息を整えながら剣を下ろし、ヴァルドに手を差し伸べた。ヴァルドはそれを取り、立ち上がりながらリアンに頷いた。その瞬間、リアンはただの異端者ではなく、戦士としての尊敬を勝ち取ったことを知った。


しかしリアンの内心は、これから始まる旅への不安と期待で満ちていた。彼の戦いは、ただの始まりに過ぎなかった。

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