第三章 二仙山~文昌千住院(一)
(生成AIで作ったイメージイラスト)
https://kakuyomu.jp/users/tenseiro60/news/16818023213690120214
燕青は、旅の時にいつも持ち歩いている
麻糸の玉。火打石。一丈(3m)四方ほどの厚めの油紙を折りたたんだもの。薄手の毛布。
梁山伯にいた時に、今は亡き仲間の第88位
銅製で非常に薄く、鉄鍋にちょうど入る大きさの器2個。肌着や手拭きなどを入れた大きめの布袋。油。塩。
初秋なので雪や猛烈な寒さの心配はない。燕青の知る限り
だいたいは村や町、あるいは寺や道観で泊まらせてもらうとしても、何回かは野宿があるかもしれない。当然13歳の少女を連れての長旅、ましてや野宿など経験したことがないので、一体どんなものを用意すれば良いのか、ここで頭を悩ませることになる。
結局、年長者の
入り口の扉を叩くと、ちょうど翠円が開けてくれたので、来意を伝えると、赤面しつつ客間へ通してくれた。翡円が同じく赤面しつつ茶を運んできたので、早速四娘の旅支度の手伝いをお願いしたところ、燕青自身の旅装も整えてくれることになった。
旅の身なりについて相談し、道士である四娘と一緒に旅をするなら、年齢的にも兄妹ということにすること、笠や履き物、四娘の着替えその他の細々したものの手配をお願いするなど、翡円、翠円姉妹とだんだんと打ち解けた話をするようになり、気づけばもう夕闇のせまる時間でになっていた。
打ち解けた分、姉妹ふたりの視線に、さらに強く
「やれ、とんだ長話をしてしまいました。そろそろお
まだいいじゃありませんか、と引き留めるのをやんわりと断り、
少々後ろめたい気持ちはあるが、例の袁兄弟が強奪してきた金銀を、十分な
長い黒髪を赤の
燕青は厚目の
細かなことは道中おいおい相談することとして、
坂道を下りていくふたりの姿が見えなくなるとすぐ、玉林と紅苑は羅真人の袖を捕まえ、次は私を行かせてくれ、ずるいずるいと、強硬に直談判した。
あまりのしつこさに閉口した羅真人は、後日彼女らにも依頼を出すことになるが、それはまた別の話である。
二仙山の急な坂道を下り、いちばん下の門を通り過ぎた瞬間、四娘は大きなため息をついた。
「どうした?ほっとしたのか?」
「うん、本当に行かせてもらえるとは信じられなかったから、今やっと実感がわいたよ」
「そうか。ではまずいくつか決め事を相談しよう。まずお互いの呼び名だが、お前は
「兄妹なのに『
「よし、それで行こう。ただし第三者にはおれは『
「わかった」
「行先もそのまま、青州の観山寺、ということでいいだろう。もしはぐれたり人探ししたりする時に、そういう情報はお互いに意外と役にたつものだ。」
「ふうん。今日はどのあたりまで行く予定?」
「それこそ、
「ふぅ、40里か。歩くだけで半日はかかるわね」
「行けそうか? 」
「見くびらないでよ、小さくても体力には自信があるわ」
通りすがりの牛や馬、犬や猫、
文昌までの行程半ばほど、道の
食堂のおばさんが作ってくれた
「小融のその木剣なんだが、どういうものなんだい? 」
四娘は口いっぱいに粽を頬張りながら、座ると邪魔になるため、背中から外していた双剣を持ち上げて説明を始めた。
「これ、ただの木剣じゃなくて、『
「崑崙の千年樹? 」
「そう、
「ほぉ、それは貴重なものだな(っていうか崑崙山って本当にあるのか?)」
「二仙山に古くから伝わる
「2本あるのは?」
「こっちの柄の黒い方が『陽』の気を持つ『
「はて、俺の知識じゃ、陽が白で陰が黒、という感じなんだが?」
「うん、剣自体から陽や陰の気を発しているので、柄を逆の気の色にすれば、打ち消しあって使いやすくなるんだ。でも他の人は、剣本体の気に当てられてしまって、具合が悪くなるみたいなんだよね」
「はぁ、なるほど。仙術ってのはなかなか難しいものだなぁ」
「鬼や魔物は陰の気の塊だから、陽の気の『東王父』で祓うことができるし、弱い相手なら、陽の気を付与した飛刀を打ち込んで倒せるんだけど、『東王父』の力でも足りない場合、『西王母』の助けを借りて、陽の気を強くすることができるの」
燕青とて
行く末がそら恐ろしくもあり、まだ幼いのに気の毒な気もし、複雑な気持ちで見つめる燕青の心を知ってか知らずか、屈託のない明るい声で「そろそろ行こうか、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます