第6話

和樹くん、呼び慣れないから、一瞬自分のことか分からなかった。

「もうちょっとでおしっこできるからね」

「ふぇっ、」

頭を2、3度撫でられ、脇に手を入れられて立たされる。足がガクガクして、何度も何度もソコをたくし上げる。

「ふぅ、ん、おしっこぉ…!」

さっきよりも断然優しい顔で励ましてくれる先輩。語彙力が低下して、園の子供みたいな言葉を出してしまう。

「もれちゃう、もれちゃう、もれちゃうぅ…」

「だいじょうぶ。おちんちん、ちゃんと握っとくんだよ?」


 ちゃぷ、ちゃぷ、ちゃぷ。お腹の中から水の音が聞こえてきそう。

(おしっこおしっこおしっこおしっこおしっこ!!)

今、自分はどんな格好をしているのだろう。鏡があったのなら、恥ずかしくて死んでしまいそうだ。息が、歩く振動が、ジンジンと痺れを成す膀胱を刺激する。

「む、り…!」

「大丈夫大丈夫。絶対間に合うからね」

足を止めようとすると、先輩が腰のあたりをトントンと叩き、無理矢理に進まされてしまう。

「っひっ…でちゃ、ほんとにでちゃう…!」

前を捻り上げて、太ももを擦り合わせているにも関わらず、液体は下に、下にと降りていく。

「着いたよ」

じゅううっ…

「ふあ、ああああんっ」

2階だという彼の手にはすでに鍵が握られおり、それがまた体に緩みを生じさせてしまう。鉄製の非常階段を登り、ドアの前。すんなりと鍵が回って、入ることを促された。

「くつ、ぬげないぃっ、」

踵を引っ掛けているのに、滑ってしまって脱げない。

「あ、ぁ、っ!!なに、!?」

「しゃがんだら立てなくなっちゃうでしょう?待っててね、先生が脱がしてあげる」

「やだ、漏れちゃうからっ、かかとでグリグリさせてっ、」

「だいじょうぶだいじょうぶ」

脇で下に落ちる体をずり上げられて、靴紐をするすると抜かれて。クネクネと暴れ回る足に構わず、いつのまにか俺の足は靴下が見えていた。のんびりとした口調なのに、焦った動きをする俺より何百倍も速い。

「ほら、すぐそこだから。もう少しだよ」

ドアを開けてもらい、待ち望んでいた白い陶器にご対面。モモをお腹につくぐらいに足をあげ、両手でギュウギュウ握りしめる。

「和樹くん、ちょっとじっとしてて!今度からは早めにおしっこ言おうね?」

カァっと頬が熱くなる。そして改めて認識する。自分が幼稚園児扱いされていることを。

「えらいえらい。ほら、おちんちん出せたよ。シーシーしようねー」

自分のズボンから出された、しめりきった男性器。ジーンズはしっとりとは言えないくらい濡れているけれど、そんなことは気にしてられない。

ショオオオオオオオオッ

「はぅっっっ!!ぁ…ぁ…」

さっきお漏らししたのに、どこにそんな水分が残っていたのだろう。頭がじーんとなって、気持ちいい。

「いっぱい出てるねー」

「ぁ、ぁう、せんぱ、」

先輩の手が、俺の汚いブツを握っている。肝心の俺の手は、意味もなく上の服をたくし上げて、腰を突き出しているだけ。

ぷしょぉぉぉ…

今日、トイレ補助を行った男の子を思い出す。

(おれ、いま、あの子みたいな格好で、しぃしぃしちゃってる…でもおちびりしちゃったし、おもらしもしちゃってるし…あの子よりも…)

しぃぃぃ…

長い長い放尿の終わりの合図。俺の性器の水滴ををピッピっと払って、トイレットペーパーで軽く当てられる。

「あー、結構ジャージ濡れちゃってるねー」

「ご、ごめんなさっ、」

「いーよいーよ。ジャージとパンツ、持ってくるね」


「さっきも言ったけど、おトイレは早めに行くこと。わかった?」

白いタオルでお尻と足を包み込まれ、先輩のパンツとジャージを穿かされる。自分でできるのに、ズボンをたくし上げるところから、紐を締める作業まで全部彼の手の中だ。

「はい…」

「おしっこ、もうないかな?」

お腹を軽く押されて、確認される。

「っはい…」

「よしっ!お風呂わいたら入ろうか。じゃあ先におててを洗おうね」

いつまでこの子供扱いが続くのだろうか。羞恥心も麻痺してしまいそう。

さっきの体を拭いたタオルとはまた違う小さめのタオルで、手の水分を丁寧に拭き取られる。

「はい、よくできました!」

律儀に視線を合わせて髪を撫でられる。

 …いつまで続くのだろうか。


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保育士だっておしっこするもん! こじらせた処女/ハヅ @hadukoji

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