第5話
(あー、我慢してるなー)
ソワソワと落ち着きがなくなったのはいつ頃だろう。多分コンビニでは結構溜まっていたんじゃなかろうか。まあ、あそこで言われたところでトイレはないんだけれど。
後ろでソコを触っているのは、俺の一個下の後輩。俺が後ろを向くとパッと手を離して膝がせわしなく動く。
本人はバレていないと思っているだろうが、職業柄そういう仕草は分かってしまう。
俺はトイレが遠い方だから、彼のように限界に達することは滅多にない。でも、それはあくまで俺のこと。決して彼がおかしいと思っているわけではない。
それでも尾北くんは人一倍トイレが近い、そう思う。我慢しないでね、そう言うも、幼児はじっとはしてくれない。何か事故が起こった時、おしっこ漏れそうでしたっていうのは、言い訳にならない。先輩である俺が何とかしてあげないと、そう思うけど、なかなかそうはいかないのが現状だ。
(こんな時、何て言えば…)
踏切待ち、隣に尾北くんが居る。流石に俺の目につくところでは押さえられないのか、足をクロスして太ももを必死に触ってる。
「んんっ…」
波が来たのだろうか、ピッタリとしたズボンを引き上げ、内股でタンタンと地面を踏んでいる。押さえていないのが辛いのか、何度もソコを下から撫で上げている。
「尾北先生、おしっこですか?」
あ、まずった。みるみるうちに踏切の光に照らされた目が潤み、今にも泣きそうな顔になってしまう。
「あ、ぅ…あ、んふぅぅっ‼︎」
ギュウウ、と出口を両の手で揉みしだく姿。マッサージなのかと思うくらい、指が盛んに動く。
「あ…そ、です…」
言い逃れが出来ないと判断したのか、あっさりとそれを認めた。
「いつから?」
「コンビニ、出てすぐくらい…」
嘘だな、すぐに分かったけど、聞き流そう。
「あと10分もかからないけど我慢できそ?」
「…できます…」
「ちょっと急ぎ目で行こうか」
「すみません…あ、ふぅっ」
俺にバレて吹っ切れたのか、膝をもじつかせながら、ソコを激しく揉んでいる。ばたばたと足を上げているけど、進みは遅い。
「あ、ぅ、んんふぅっ、」
一定の距離進むと、波が来るのか、その場でお尻を突き出して、性器を下に、下にと押さえ込む。だんだんと間隔が狭くなってきて、それが限界が近いことを物語っている。
「あぅっ…」
一瞬全身の動きが止まったかと思えば、大きく背中を仰け反らせたのち、しゃがみ込んでしまう。
「も、出ちゃう…」
はくはくと吐いた彼の息は白い。しゃがんだ彼は、半泣きになりながら性器を上に引っ張ったり下に引っ張ったりしている。
「でちゃ、むり、もれちゃう…」
もうここでさせてしまおうか、暗闇だから見られることはないだろう。
でも、一日に2回も失敗してしまったら彼はきっと落ち込む。
(こんなとき何て言えば…)
まるで子供のような格好の彼。それなら…
「和樹くん、もう少し頑張ろっか」
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