第5話

長良治「なんですかね…これ…」

茂津奏恵「なんでしょう…今のところさっぱり」

一応人数分のコピーを取っておこうという事になり2枚机の横のコピー機で印刷してそれぞれが暗号文を前に3人で首を捻っていると兼続の携帯が鳴った。出て2、3話すと

呼子兼続「奏恵、ちょっと良いか」

茂津奏恵「ちょっと!……家政婦を呼んでおくので何かあれば彼女に聞いてください」

彼は茂津奏恵を連れて部屋を出ていくとほんの2、3分で五十代くらいだろうか、エプロンをつけた女性が現れた。

勝呂舞「家政婦の勝呂です。何でも聞いてくださいね〜」

穏やかで人の良さそうな笑みを浮かべている。私は彼女にいくつか聞いてみることにした。

長良治「勝呂さんはここの家政婦長いんですか?」

勝呂舞「そうですね…もう5〜6年ですかね。それぐらいになります」

長良治「というとこの離れが建ったくらいから?」

勝呂舞「そうですね。私が来た時には、というよりこの離れで雄吾さんやヒカリさんのお世話をするために雇われて…みたいな感じです。と言ってもこの離れは大きくないですから、母屋の方も色々させてもらってます」

長良治「なるほど……。失礼ですがさっき帰って来たアカリちゃん、彼女は雄吾氏の子供じゃありませんよね…?なにかご存知ありませんか?」

勝呂舞「まあ噂なんですがね、雄吾さんが私が来る前にヒカリちゃんを引き取った話は聞いたでしょう?それまでは子供はないまでも夫婦仲はそこまで悪くなかったんです。会社が倒産して路頭に迷ってた奏恵さんのお兄さんの事もマネージャーとして雇ってあげたりしてて、でもヒカリちゃんを見たら仕方ないわよね〜。鼻筋とか全体的に雄吾さんそっくりなんだもの。まあ雄吾さんが若い時に出来た子供なんでしょうけど奏恵さんもヒカリちゃんが来て2年しないうちに明里ちゃん産んじゃって、雄吾さんも何も言ってなかったみたい」

長良治「なるほど…ヒカリさんは雄吾氏の私生児でしたか…」

どうやら根深い禍根のある家のようだった。

長良治「ところでヒカリさんは下の部屋にいると聞きましたが…」

勝呂舞「そうよ…でも雄吾さんが亡くなってからずっと塞ぎ込んでてね〜。私もご飯を持ってくる時くらいしかお話しできてないのよね…。明里ちゃんはたまに部屋に入れてもらってるみたいだけど。小さい子ってホントに元気付けてくれるわよね〜。この間もヒカリちゃんの真似して真っ暗な部屋で本読んでたけどそれも可愛くって!私の子供なんてもうみんな生意気になっちゃってもう………!」

勝呂さんが自分の家の愚痴を話し始めて10分くらいした頃だろうか、茂津奏恵が書斎のドアを開けた。

茂津奏恵「何か見つけたみたいです。来てください」

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