第4話
長良治「【鍵は賀茂の手の中に】とありますが…」
賀茂はニヤリと笑ってポケットから鍵を出した。小さな鍵だ。
呼子兼続「何の鍵です?」
賀茂仁志「おそらく金庫の鍵でしょう」
茂津奏恵「主人の書斎にあったはずです…」
奏恵と兼続はバツの悪そうな顔をしている。当然だ。遺産を取られると思っているのだろう。
賀茂仁志「それでは私が立ち会うのはここまでです」
パッと立ち上がって賀茂は手荷物を纏めた。
賀茂仁志「解けましたらご連絡を」
そう言って彼は私たちに1枚ずつ名刺を渡して去っていった。
長良治「奏恵さん……書斎に案内してもらっても?」
玄関まで賀茂を見送って応接間に帰って来た奏恵に声を掛けると玄関の扉が大きく開け放たれた。
「ただいまー!!!」
赤いランドセルを背負った少女がガチャガチャとランドセルの金具を鳴らしながら続けた。
茂津明里「ママ、お客さんきてるの〜?」
茂津奏恵「おかえりなさい。そうよ。だから今日ママ達は忙しいの。手を洗って舞さんからおやつもらって来なさい」
茂津明里「わかった!お客さんもこんにちはー!」
長良治「こ、こんにちは」
小学1・2年生くらいだろうか。とても元気な子のようだ。
茂津奏恵「すいません騒がしくて……。主人の書斎は離れになります。着いて来てください」
奏恵に着いていくと離れというのは母屋の隣にあった離れた呼ぶには立派な家だった。もちろん小さいは小さいのだが3人くらいなら裕に暮らせるだろう。奏恵が引き戸を開ける。どうやら鍵はかかってないらしい。室内はかなりこざっぱりしており、雄吾氏の歳もあるのだろう。段差は少なく壁に手すりまでついている。
長良治「ずいぶんと大きいですね」
茂津奏恵「5年前に建てたばかりなんです。ヒカリちゃんを引き取った時に」
長良治「ヒカリちゃん…ですか…。さっきの」
茂津奏恵「あの子はアカリです。ヒカリは7年前に主人が連れてきた子で。大事な人の子供なんだって言ってました」
長良治「ヒカリちゃんはどこに…」
奏恵は玄関からすぐ突き当たりの部屋を指した。
茂津奏恵「主人が亡くなってからずっと塞ぎ込んでいて、家政婦の舞さんや明里としか話してないようです」
長良治「そうでしたか……」
雄吾氏の書斎は2階だった。2階には2部屋あったのだが片方は寝室、もう片方が書斎になっているようで書斎には壁一面の蔵書や洋酒のボトルが並んでいる。部屋の中央に鎮座する大きな机にはデスクトップのPCがポツンとそして机の隣にはコピー機が置いてあるだけで清潔というよりは殺風景な部屋だった。
呼子兼続「先生は几帳面な気があって書斎はいつもこんな感じでした。といってもここ数年は新作もありませんでしたがね」
長良治「そうなんですか。もうちょっと小説家先生って勝手にだらしないイメージがありました」
呼子兼続「まあそういう人もいるみたいですが……とあったあった金庫だ」
部屋の隅に隠しておいてある金庫にはディスプレイとテンキー、そして鍵穴があった。
長良治「鍵はコレなんでしょうが…問題はパスワードですね」
私が鍵を差し込んで回してみたが金庫の扉が開く様子はない。
長良治「それにしてもこのディスプレイ…」
茂津奏恵「ずいぶんと長いですね」
試しに0で入力してみると
長良治「25桁……ですか」
呼子兼続「25!?」
長良治「全部入力するとは限りませんが、キーには小数点やエンターもありますし。ただ25桁となると0〜9の組み合わせだけでも億、兆、京(けい)、垓(がい)、抒(じょ)…100 抒通り。スパコンでも使わないと無理ですね」
奏恵と兼続は絶句していた。賀茂が帰った理由もわかるというものだ。なるほど。コレはどうしようもない。
長良治「雄吾氏が解けない暗号を作ることはないでしょう。少し探しますか」
茂津奏恵「そ、そうですね。探してみましょう」
私たちは書斎を調べてみる事にした。すると第二の暗号はすぐに見つかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます