第25話 小さい子が欲しい
商会の応接室に来たのはショーティー、エステファニア様の娼館にいるヒモみたいな男に見えるけど、実は有能な秘書だった、
わたしはバレーナの皮を独占販売したくて彼に色々手を回してもらっているのだけど、それも最終段階に入ってきたわ。
「……そう言う訳でスリーローズ商会がバレーナの皮を独占して販売する事に関して最初は問題が無かったのですが、ここに来てギングリッチ兄弟商会がゴネ始めたのですよ」
「お金で黙らせる訳にはいかない相手なのですね」
「そう言う事です、女を世話しろと言いだしまして、ミヤビ様に相談に上がった次第です」
「娼館に行けば女性なんて選び放題でしょ、どうしてわたしに?」
「小さい子が欲しいと言いだしたのですよ……」
◇◇
高級別荘地が立ち並ぶ地区を進む馬車、わたしの横には清潔感溢れるワンピースを着たリフリーがお澄まし顔で座っている、
本人はお仕事が出来ると自慢顔だけど、わたしの心はズタズタよ、年端もいかない子を変態オヤジに差し出すなんて、人として最低じゃない。
小さいけど品の良い家の前に馬車が停まった、
「それじゃミヤビ様、行ってきます」
「明日のこの時間に迎えに来るからね、気をしっかり持ってご奉仕するのよ」
「ハ~イ」
馬車から降りると待ちきれないとばかりに扉に向けて駆けて行った幼女、ゴメンねリフリー、
◇◇
その晩は鬱々として過ごしたわ、小さい子を見出して自分好みに育てる、有名な文学作品にもなっている題材、現代日本ではアウトだけど、こちらの世界なら無くは無い、
だがギングリッチ兄弟商会と言う相手はリフリーを性欲処理の道具としてしか見ていない、無垢な幼女がこの世の地獄を味わっているのかと思うと心が痛い。
日本で風俗の仕事をしていた時には、わたし達嬢を性欲処理の相手と扱うお客もいたわ、わたしとしては短い時間でも恋人ごっこをしたいのに、
他には色々な技を試させて、採点するお客とか、屈辱しか残らなかったけど、最後まで笑顔は崩さなかったわよ、それがプロだからね、
だけど心の耐久が限界だったの。
心が痛くなると買い物で気を紛らわせた、普通のOLさんの月給くらいのブランド物のバッグを現金で衝動買いしたり、買ってから一度も袖を通してない服もたくさんあったわね、
物が欲しかった訳じゃないの、買い物の瞬間の快感が忘れられないのよ、
高級ブランドの店員の対応はささくれた心をまるく整えてくれしね。
こっちの世界でわたしの心を満たしてくれるのは何かしら? ショーティーみたいな男を囲うのは何か違うわよね。
◇
翌日リフリーを迎えに行く、わたしはどんな顔して彼女に会えばいいのだろうか、
“わたしの取引の材料になってくれてありがとう”
なんて言うの?
そんな取りとめの無い事を考えていたら馬車は小奇麗な別荘に着いた、特に人が出て来る気配はない、
「おかしいわね、サン・ホセ」
「あちらの窓が開いています、留守ではないはずです」
待っていてもらちがあかないのでわたし達は別荘に足を踏み入れる、小さいとは言うのは、周りに比べての話、それなりの広さがあるのに人の気配がまったくしない、
「ミヤビ様、こちらにいます」
「わかるの?」
「臭いがいたしますよ」
ドアを開けると強烈な生臭さ、男性の臭いなんだけど、それを何十倍に濃縮したような臭いの暴力、
「あっ、ミヤビ様だ~」
幼女リフリーはサイズの合わない椅子に座って脚をブラブラさせていた、
「いったいどうしたの? リフリー」
「どうって、ご奉仕していたんだよ、あっちに兄弟がいるでしょ、お腹が出た人、10回もしていないのに疲れて寝ちゃったよ、
それと“しつじ”さんと5回、護衛のお兄さんは6回、庭師のおじいさんは3回で“頭が痛い”って言って出て行っちゃた」
主寝室は嵐の後の様に散らかり、そこかしこに全裸の男性が弛緩した状態で横たわっている、乱交パーティーでもあったの?
「リフリー、あなたは平気なの?」
「えっ、別にぃ」
サン・ホセが倒れ込んでいる大人達をベッドに運んでくれた、死んではいないけど、何度も何度も天国に逝って青色吐息な状態だったらしい、
◇
身体を綺麗にして馬車に乗せたら、さすがのリフリーも緊張が解けたのか、わたしの膝でクークー寝息をたてている、いったい何か起きたのかしら?
リフリー、あなたいったい何者?
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