第26話 魔性の幼女
「お嬢様、こちらでございます」
メイドのメリッサに案内された幼女リフリー、お嬢様と呼ばれ嬉しいのか得意顔だ、
「ありがとう」
「こちら紅茶になります」
子供用に砂糖を入れて飲み易くしたティーカップを目の前にしたリフリーだが、
「あら、素敵な香り、良い“ちゃば”を使っているのね」
微笑ましい幼女の背伸びにメリッサも嬉しそうだ。
今日はリフリーにご褒美、何か欲しい物が有るか?と訊いたら
“お菓子が食べたい!”
と言う歳相応の答えが帰って来たので、上等なお菓子をあげる事に。
シロップのかかったスコーンを前にすると、お嬢様の仮面を脱ぎ去り下町のクソガキの顔をしてお菓子を頬張っている、
「ねぇ、リフリー、昨日はお仕事お疲れ様でした、身体はどこか痛いところはあるかな?」
「…別に、 へいき 」
口の周りを汚してお菓子を口に詰め込んでいる幼女は皿の上の物を全て平らげ、今はわたしの皿に狙いを定めている、
“そんなに食べたら晩御飯が食べられなくなるからダメよ”
「こっちのお皿のお菓子も欲しいのかな?」
コクコクと頷く幼女リフリー、
「それじゃさぁ、お姉さんとお話ししようか、そうしたら食べても良いよ」
「わかった!」
「昨日は何が有ったのかな、あっ、嫌な事は言わなくても良いからね」
「別に嫌な事なんてなかったよ、うんとね、お部屋に入ったら大人の人が2人待っていたの、それから服を脱いで……」
小さな口から発せられた言葉はわたしの想像通りだった、いや想像以上だろう、いたいけな幼女に大人2人なんて、
その後の展開も想像通りでエゲツの無い事を幼い子から聞かされたのだが、
「……気持ち良かったよ」
天真爛漫な笑顔で有り得ない事を言うリフリー、口の周りをシロップまみれにしているのだが、そんな話は聞かされた後ではシロップが別の物に見えて来る、
初めての時は痛いだけで、ガニ股になるのが普通よ。
◇◇
「ミヤビよ、起きなさい」
「ヴェヌウスじゃない、ちょっと聞きたい事があるわよ」
「分かっています、リフリーの事ですね」
「そこまで分かっているなら話は早いわよ、どう言う事なのか説明して頂戴」
「ミヤビよ、リフリーの適正は見極められましたか?」
「何色でもないわ」
どんなに小さくても人は適正の球を持っている、だけどリフリーだけは別だ、幼女の胸元を何度も目を凝らして見たけど、色が分からない、
何も無いか? と言われれば、そうでもない、何かあるのだがそれが何色なのかは分からない。
「サキュバスって知っていますか?」
「ああ、エッチの神様の事?」
「それは違います、サキュバスは神なんかじゃありません」
ちょっと不機嫌な顔になったヴェヌウス、
「けど、エッチが好きなんでしょ」
「大筋はそれで正しいのですが、細かく言うと、サキュバスが好きなのは男性の“精”です、彼女達には最高のご馳走ですよ」
「リフリーはサキュバスだったの?」
頷く神様、
やっぱりここは異世界だったのね、
「わかったわよ、わたしは飢えたサキュバスをご馳走の真ん中に放り込んだのね、そう言うことね?」
「まぁ、その通りですけど、リフリーはまだ産まれて間も無いです、今は色々学んで一人前に育って行く事でしょう」
「ねぇ、サキュバスだって親はいるのでしょ、教育は親がするんじゃないの?」
「どこから説明したら良いものやら、サキュバスは人でなければ魔物でもありません、ましてや神などおこがましい存在です、
強いて言えば自然現象みたいなものです、人の欲の集まる場所に突然湧いて出て来るのですよ」
「ふ~ん、それでサキュバスが育ってきたらどうなるの?」
「良く分かりません、いつの間にか消えて無くなったり、人間の身体を手に入れたりするそうです」
口いっぱいにお菓子を詰め込んで幸せそうな顔をしていた幼女が自然現象だと説明されても納得がいくものでもない、だけど幼女が数人の大人を手玉に取るなんて有り得ない。
「ヴェヌウス、わたしはどうすれば良いの?」
「あなたが育ててください、使い方次第では最高の武器になりますよ、何しろサキュバスに精を吸われる時、男は最高の快感を味わいますからね」
ウインクして去って行った愛と快楽の神ヴェヌウス。
最高の武器と言ったけど、最悪の武器じゃないの?
特にレオポルト様は童貞だから、そんな淫魔に身を任せたらトリコになってしまう事間違いなしよ。
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