第19話 夢で出しちゃった

 迷宮に行った日、普段はあまり外に出ないし、荒事が好きではないわたしには負担だったのか、ぐっすりと寝ついた、


 ◇◇


「ミヤビよ聞こえますか」

 顔も身体も完璧な神様ヴェヌウスがわたしの夢枕に現れた、

「ヴェヌウスじゃないの、久しぶりね」

「あなたの事はいつも見ていますよ、いかがですか今の生活は?」

「う~ん、最初に考えていたのとは違うけどやりがいはあるかな」

「結構です、あなたにはもっとこの世界に風俗嬢を増やして欲しいのです」


「ヴェヌウス、何を言っているの、娼婦は大勢いるわよ、人口比で言ったら絶対に日本より多いって」

「そうですね、彼女達は娼婦です、ですが風俗嬢ではありません」

「どう言う事よ」


 ヴェヌウスが手を振ると目の前にリズミカルに動く肌色の洪水、女性が苦悶の表情で悶える姿が何組も、わたしだって風俗の仕事をしていたから、こんな姿は散々見て来たけど、こうやって見るとえげつないわね、


「これが娼婦の実態です」

「そんな事知っているわよ、わたしを誰だと思っているの?」

「説明が足りませんでしたね、こちらの世界の男性は“する”だけなのです、しっかりおもてなしをするのは一部の高級店だけですよ」

「時間が短いなら仕方ないわよ」

「ミヤビ、あなたには前の世界で培ったもてなしを広めて欲しいのです」

「マットも無しに?」


 マットに関しては説明が必要だろう、プールとか海水浴場なんかで使うビニールで出来たビーチマット、空気を入れて膨らませるのを見た事あるわよね、

 基本はそれと同じなのだけど、ソープランドで使われるのはダブルサイズのベッドくらいの大きさがあるのよ、

 その上で殿方をマッサージするのだけど、こんな中世っぽい世界にビニールは無いわよね。


「エアーマットが必要なのですか?」

「絶対じゃないけど、あった方が嬉しいわね、それとローションも」

「分かりました、ミヤビあなたは漁港に行きなさい」

「ちょっと、わたしは風俗の仕事でこの世界に来たのでしょ、魚の仲買人でもするの?」

「あなたが買うのはバレーナの皮です」

「何それ?」



 ◇◇



 突然目が覚めたが、まだ深夜の時間帯だ、わたしはフカフカのベッドで寝ているけど、わたしが教育して送り出した娼婦達は今頃大汗をかいてご奉仕をしているのだろう、

 自分が嬢をしている頃はバカな娘で風俗こそ天職だと思い込んでいた、だけどわたしに仕込まれ娼館に送られた田舎の生娘達はどんな気持ちなんだろう。


 それよりもヴェヌウスはこちらの世界でもソープを開く事が出来ると言っていた、安っぽい芳香剤と濡れたビニールの匂いがもう一度か、

 そんな場所に田舎娘を送り込むのは人としてどうなんだろう、

 昼間は商会のスタッフになり切って働いているけど、夜になると色々考える事が出てくるわね。



 ◇◇



 ダ・デーロは迷宮都市だけど、ほぼ隣り合って漁港があるおかげで毎日新鮮な魚が食べられるのよ、

 そんな漁港の片隅でバレーナの皮を買い取る事が出来たわ、バレーナって物凄く大きな魚の事らしいのだけど、その皮は防水性があるので船の防水とかに使われているそうだけど、数そのものが少ないからほとんど漁港から出ない商品なんだって、さわり心地もビニールその物よ。


 わたしは金に糸目をつけずバレーナの皮を買占めたら、コテを持って数日間部屋にこもってマット製作、

 ちょっと不格好な試作品が完成したから娼婦候補生エルミラを呼んだ。


 娼婦候補生での一番ポテンシャルの高いエルミラ、顔は田舎顔だけど、わたしの教育で自然とニッコリと微笑む表情が出来るようになった、信じられないけど、デリヘルの新人にはそれすら出来ない子もいたわよ、


 顔よりも目を引くのがその恵体、まだご主人様の術を使う前なのに充分商品として使えるわよ、初めて見た時は猫背で肩も曲がっていたけど、姿勢を直しただけで目の前には大きな膨らみがプルンッ、お尻もすごく良い形をしているわね。



 どうでも良いけど、日本人は胸が好きよね“オッパイ星人”を自称するお客もたくさんいたけど、海外では胸よりも尻の形に女性らしさを感じる国もあるそうよ、

 こちらの世界の価値観は日本寄りだから助かるわ。

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