第13話 風俗は誰でも出来る訳じゃないのよ

「さてミヤビ、お前のリクエストに見合う娘を用意したぞ、いったいどう言う風の吹きまわしだ?」

「わたくし共は農村から娘を買うばかりだったので、今度は嫁でも世話をしようかと思っただけですよ」

 さっきのショーティーの話を聞いた限りでは人余りの農村に嫁の口なんてある訳ない、


“見え透いた嘘をつくな”そんな顔したエステファニア様、パンパンと二回手を叩くと4人の娘が現れた、

 全裸の女性が並んでいると言うのに身体には目が行かない、むしろ視線を避けたい、以前は張りの有る果実だったのだろうけど、左右に流れ垂れた贅肉、

 絞れたウエストだっただろうに娼館での不規則な仕事は腰周りに肉を蓄積、いわゆる三段腹、

 肩周りや胸元はほっそりしているのに、下半身に贅肉が貯まって三角形の女性、


 顔はもっと酷い、過労と睡眠不足で目の下は真っ黒、髪の毛は枝毛がバサバサ、安い化粧品を塗りたくっているのだろう肌はさながら畑だ、

 そして何より眼に生気が無い、田舎から買われたおぼこ娘が毎晩殿方に攻められ、哀れな性欲処理人形になり下がった。


「この者達“三日月のウサギ”で働いていたのだが、下町の支店に手伝いに行ってもらっていたのだ」

 娼館主にも情けはある、翻訳すると本店で使いものにならないので、歓楽街の裏通りにある安さだけが取り柄の店に格下げした、


 そんな支店でも使いものにならないから、もっと格下の店に二束三文で売るところだった娘達、これが娼婦の現実なのよ、ソープでもズリズリと落ちて行く子達をたくさん見て来たわ、

「良いですよ、最初のお話し通り買い取らせて頂きます」

「ミヤビ、いったい何を考えているのだ?」

「わたくし共は奴隷商人ですから、人と人の縁を結びたいだけですよ」

 うん、大丈夫ウソは言っていない。


 ◇


 クズ娘を買い取って来たわたしはレオポルト様に面会をする、

「レオポルト様、あなた娘達の記憶を変えられますね?」

 ギクリッとしたレオポルト様、この人顔に出やすいわね、商人向きじゃないわよ、

「レオポルト坊ちゃま、ミヤビは既にこの商会の中枢です、手の内を明かした方が今後の為かと思いますよ」

 執事のオスヴァルトさんから援護射撃、


「まぁ、多少はな、ミヤビどうして分かったんだ?」

「そりゃ、カタリーナやビアンカがわたしの母親はメイドだった、なんて言い出せばおかしいと思いますよね?」

「ビアンカの場合はまったくウソでもないのだけどな、まぁその通りだ」

「わたくし本日エステファニア様のところからクズの娼婦を買い取って来ました、彼女達の過去を変えられますか?」


 ◇


 わたしは緞帳の影に隠れてレオポルト様を覗いている、彼の足元には元娼婦がひざまずいている、

「お前は今までどこで働いていた?」

「クンツ通りの娼館で働いておりました」

「!!お前は田舎で農作業をしていた!!」


 元娼婦のパオリーナはキョトンとしている、

「もう一度訊く、お前は今までどこで働いていた、田舎の畑だろう」

「いえ、わたしは娼館の娼婦でございます」

「どこの娼館だ?」

「えっとー、見れば思い出すと思うのですが、名前が出て来ません」

「!!お前は田舎娘だ、飢饉でボクに買われた!!」


 そんなやり取りを何十回も繰り返してパオリーナは自分が田舎から買われて来た娘だと言う“現実”を受け入れた、

 隷属のスキルは暗示の様なものだけど、効果は人それぞれ、カタリーナみたいな小さな子ならすぐに効くけど、大人になると効くまでに時間がかかる、

 それでも最終的にパオリーナが田舎出身と言う事を受け入れたのは娼館での出来事を消し去りたかったからかもしれない。


 ◇


 記憶を改ざんされたパオリーナを地下に連れて行く、

「どんな顔に変えれば良いんだ?」

「田舎の純朴娘みたいな感じでお願いします、美人じゃない方が良いですね」

「それなら簡単だな」

 この前と同じ様に魔法陣が光り出し、青い光がパオリーナを包む、心なしか以前よりも時間が短かった様な気がした、


 前は失神寸前だったレオポルト様だけど、今回はおぼつかないながらも自分で階段を登って行ったから、美人かそうじゃないかで魔力を使う量が違うのかな?

 そして魔法陣の真ん中には立つ娘、この女性が何歳で買われて娼婦になったのかは知らないけど、奴隷商人に遭わずにそのまま田舎で育っていればこう言う田舎娘になったであろう、そんな純朴そうな顔つきだ。


 だけど相変わらず胸の形がおかしいよ、男の子の妄想をそのまま形にしたお胸、どうして下着も付けていないのに谷間が出来るかしら、そしてお腹はツルンとしている“童貞君、君はまだ大人の女の人を見た事無いんだね”

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