第6話 童貞君の反応
それから数十日間わたしは三人の娘に付きっきりで姿勢を直し、勉強を教え、殿方の前での振舞いを仕込んだ、
最初は娼婦になる為の勉強なんて嫌がっていたけど、ここで多くの事を学んでおけば後の生活が楽になると気がついたのだろう、熱心な生徒なった。
そうそう10歳の女の子カタリーナはわたしの専属にしてもらった、
人買い達の話ではこちらの世界でも小さい子が好きな変態がいるそうだから、そんな連中には売って欲しくはないわよね、
風俗嬢のわたしがこんな事を言うのはなんだけど、小さい子に手を出すのは生理的に嫌なの、
その事をオスヴァルトさんに話したら
“見目が良ければ“かむろ”として売る事も出来るのですが、この子お鼻が大きすぎてしかも上を向いている、売り込みは苦労するでしょうなぁ”
そう言われた、それはそれでムカつくわよね、
胸元に大きな赤い球が見えるから将来は剣士にすれば良いと思うわ。
そんなカタリーナがわたしを呼びに来た、
「ミヤビ様、ご主人様がお呼びです」
「わかったわ、今行きます」
◇
大きな執務机の向こうに座っているのは童顔の男の子、実際まだ10代なんだけどね、斜め後ろにオスヴァルトさんが控えて辛うじて威厳が保たれている状態。
「ミヤビ、ボクは君に三人の教育を命じた、進捗を報告してくれ」
「三人とも意欲的に学習に取り組んでおります、教養面ではビアンカとデボラは優秀な部類ですが、身体が今一つです、
クリシュナの身体は最高ですが、まだ教養が身についたとは言えない状況です」
「もしも娼館に売るなら、誰を勧めたい?」
「デボラでしょう、ただ年若でまだ身体が薄いのが難点ですが」
「身体の事は心配しなくてよい、デボラを呼んでくれ」
◇◇
デボラを呼んでどうするかと思っていたらそのまま地下に続く階段を降りて行く、このお屋敷に地下室がある事自体知らなかったよ、
地下の一室、床に大きな魔法陣が描かれている、
「女を裸にしてそこの真ん中に立たせろ」
レオポルト様は横を向いたままぶっきらぼうに言う、
わたしはデボラの服を脱がせるのだけど、
赤い顔になったレオポルト坊ちゃまはデボラを直視しようとしない、
“ああ、これは童貞君の反応ですわ”
いや~、新鮮でお姉さん嬉しいなぁ。
魔法陣の真ん中にデボラが立ったら、突然訳のわからない言葉をつぶやく始めたレオポルト様、何が始まるの?
次第に魔法陣が青色の光始め、その光がデボラを包む、
ひび割れたかかとと変色した脚の指は健康的な色になり、農作業で無駄な筋肉がついた太股はスラリとモデル体形、寸胴だった腰周りはキュッと絞れ、薄い胸はプルプルと音がしそうな果実が実る、
情けないたれ目は愛嬌のある目元に変わりボサボサの髪の毛はツヤツヤに。
そうそう雑誌のグラビアアイドル、あれは実在しません、天然であんな形の良い胸が出来る訳ない、お胸の中に色々詰まっているし、画像修正ソフトのおかげよ、
だけどデボラは目の前でグラビアアイドルになってしまった。
魔法少女の変身シーンをリアルで見せられた、そんな状況を思い浮かべて欲しい。
凄いじゃない、これぞ魔法の世界よね、ご主人様を褒めようとしたらレオポルト様はこの世の終わりみたいな顔、
二日酔いの朝にチーズフォンデュを見せつけられた様な表情をして、オスヴァルトさんに連れられていった。
◇
「坊ちゃま、こちらを」
ソファに横たわりうつろな目をしているレオポルトに黒く泡立つ液体を差し出す執事、
なんとか起き上がり気持ちの悪い液体を凝視しているが、意を決してゴクゴクと飲み干す。
「これだけは我慢が出来ないな」
「数日間魔力酔いに悩まされる覚悟がお有りならば、無理をなさらなくても結構ですよ」
ゴクゴクと不気味な液体を飲み干すと顔色が戻った少年商会主、
「それよりどうしてミヤビを魔法陣の間に呼んだのだ?」
「あの娘、頭が切れます、既に商会の金の流れを自分なりに把握しております、いずれは坊ちゃまを補佐する役目を任せたらと愚考した次第です」
「オスヴァルトがボクを助けてくれるのではないのか?」
「お忘れですか、わたしやサン・ホセ達は大旦那様の奴隷でございます、坊ちゃまが自力でスタッフを集めるまでのつなぎと思って頂きたい」
「分かった、ミヤビの部屋を二階に移すように」
「かしこまりました」
「今度の売り込みにもつれて行く事にしよう」
「どちらのお店にお売りになるおつもりでしょうか?」
「父上はエステファニアの店に売れと言っておられた」
「最初はその方が無難ですな」
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