第7話 異世界の風俗店
地下の魔法陣の一件以来、わたしの待遇が変わったわ、それまでは四階の天井の低い部屋で寝起きしていたのだけど、今ではレオポルト様と同じ二階の割と広めの部屋に引っ越し、
そして何よりわたしの意見を聞き入れてくれるようになったの。
魔法の有る世界とは聞いていたけど、目の前で魔法少女の変身を見せられ、ダサくて泥臭いデボラがグラビアアイドル顔負けの美人のお姉さんに変身した、
そんなデボラを娼館に売り込みに、
馬車には奴隷商会の主人レオポルト様と執事のオスヴァルトさん、そしてわたしと今日の主役とも言うべきデボラが護衛のロドリゲス達が操る馬車に乗っている。
「あの、レオポルト様、本日伺う“三日月のウサギ”と言うお店はどの様なお店なのでしょうか?」
「どうって、普通の娼館だ」
ぶっきらぼうに答える童貞ご主人様をフォローするかの様に執事のオスヴァルトさんが説明してくれた、
娼館“三日月のウサギ”この街では中の上クラスのお店、客層は銀貨五枚を迷わず払える人達よ、少し羽振りの良い商人か、商いでこの街に来た人、もしくは思いがけない大金を掴んだ冒険者とか。
娼館主はそのお店以外にも数軒のお店を持っている、繁華街の方にあるお手頃価格のお店や、金貨単位でお金を払う超高級店までをやりくりする、やり手経営者だそうよ。
そうそう銀貨一枚はだいたい1万円くらいだと思って頂戴ね、銀貨が100枚集まると金貨になるの、1枚で100万円の硬貨なんて凄いわよね~
前の世界に比べると服は高め、人は安めだから単純な比較は出来ないけどね。
娼館の裏口で馬車から降りると、先触れは出してあったので、すぐに娼館主のエステファニアさんの部屋に案内して貰えた。
豪華な猫足のソファに座ってわたし達一行を歓待してくれる女性、歳は不肖だけど40代?
溢れそうなバストがクッキリとした谷間をつくっている。
「エステファニア様、この度はわたくしの訪問をお受け頂きありがとうございます」
「うむ、そなたがレオポルトか、父上から話は伺っておるぞ、金貨3枚で買い取ろう」
「は、はぁ」
商品を置いたらさっさと帰れ、と言わんばかりにトレーに乗せた金貨をレオポルトに差し出すやり手娼館主、童貞君じゃ無理だよ。
「失礼致しますエステファニア様、わたくしミヤビと申す者、現在レオポルト様のもとで禄を食んでおります、一言宜しいでしょうか?」
侍女の服を着たわたしが口を挟んだので一瞬躊躇した美魔女娼館主だけど、すぐに余裕を取り戻す、
「良いだろう、話してみよ」
「わたくし共の商品を検分もせず金貨3枚と決めつけるのはいかがなものでしょうか」
「ふむ、それもそうだな、そなたは何枚の価値があると思うか?」
「わたしが娼館主でしたら金貨10枚を払いますが」
「面白い事を言う娘だな、だがそこまで言うなら自慢の品を見せてみよ」
ブカブカのポンチョとフードを深く被ったデボラが前に出る。
ポンチョを剥がし、サンダルを脱がせると、一糸まとわぬ姿の性奴隷が現れる。
奴隷を裸にするのは身体を見せるだけではなく、怪我や病気を持っていない事を証明する為でもあるのよ、
顎のラインはシュッとしていて固い物は食べた事が無い様な輪郭、プルンとした唇にちょっと愛嬌のある目元。
腰まで届く長い髪は艶々している、貧乏人は髪を伸ばさない、何故って? 手入れが大変だからよ。
肩のラインは緩く下がっているけど、音がしそうなくらいの形の良い双丘、だけど良く見ると下着をつけていないのに谷間が出来そう、
人間の身体は曲面で出来ているから、二つの膨らみは左右に離れるはずなのに、これが異世界のお胸なのかしら?
お腹はツルンとしている、剃ったのではなく、最初から毛根一つ生えていない。
下腹部の肌の色と顔の色が同じ、これは殆ど日焼けをしていない証拠。
難点はお尻が少し小さいくらいだけど、これは好みの問題ね。
エステファニアさんは一瞬固まったが、プロの目で舐める様にデボラを見まわす。
「触っていいか?」
ご主人様を無視してわたしに訊いて来る。
「どうぞ」
豊かな持ち物を下から持ち上げて質感を確かめ、絹糸みたいなサラサラの髪を手に乗せて流し落としている。
「話をしたい」
「どうぞ」
「名前を聞かせてくれ」
「デボラと申します」
「何歳だ」
「15になりました」
「暇な時は何をして過ごしている?」
「最近はユーリの詩集を読んでおります」
ニッコリと娼館主に微笑む、表情に隙がない、だけど慇懃無礼にはならない、絶妙なさじ加減。
「金貨7枚出そう」
「これは厳しい」
ほら、商人の道はそんなに甘くないわよ、こちらは新米向こうはやり手経営者、羽までむしられるわね。
こう言う時こそ交渉が大切よレオポルト様って、童貞の坊ちゃまはデボラが裸になった時点で真っ赤な顔して俯いているだけよ。
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