ロリコンおじさんと宅飲み

凄いことを今してるのでは、No.1の家に上がって一緒にお酒を飲もうとしている。信じられない


「殺風景な部屋でごめんね」


「綺麗でいいと思います。」


マミさんの部屋は、男の一人暮らしとは思えないほど片付いていて、清潔感があった。あるのはテーブルとベットだけ本当に、寝るためだけに帰ってる感じだ。


「人を家に呼ぶなんて、久しぶりだよ。」


「俺も久しぶりです。この歳になってお呼ばれするなんて、思ってませんでしたし」


人生で人と関わった経験なんて少ない俺にとって人の家に行くことはとんだビッグイベントだ。過去の自分に話しても信じて貰えないに違いない。


「はいっ、じゃぁカンパーイ」


「カンパーイ」


仕事以外で、人と酒を飲むなんて信じられない。それなりに酒は飲める口だけど、普段しない事をしてるので想像より早く酔いが回りそうだ。あぁマミさんが女の子だったら、今頃俺は勝ち組になってたはずなのに。


「そう言えば、なんで顔を見せないのかが知りたいんだっけ?」


「ホントお礼が言いたかっただけで」


「話してあげよう。」


しまった、マミさん予想だけど酒癖悪いぞ。このままじゃ朝まで武勇伝コースかもしれない、早いところお暇して明日の出勤に備えたいんだけど。


「昔俺はめちゃくちゃ可愛いと、この店で評判が良かったんだ。」


始まってしまった。


「けどその可愛さ故に、トラブルが起きることもあってな。俺の客が仕事終わるまでにずっと外で待ってた事があったんだよ。」


「その客が筋金入りのド変態でな、俺の事を匂いで嗅ぎ分ける能力を持ってたんだよ。だから男の姿に戻った時に匂いで気づかれたんだ。そして変態客がな」


『俺の期待してた見た目じゃない!ふざけるな俺の夢を!希望をお前は奪ったんだ許せない。』


「って言われて、お腹をブッスりいかれたわけよ。ニュースにもなったと思うよ、調べたら出てくるし。」


「女装キャバ嬢 刺されるって調べたら出るよ」


絶句した。マミさんは客の夢を壊さないようにって言ってたけど、ポジティブな意味じゃなくてむしろネガティブ寄りだったんだ。


「辞めようって思わなかったんですか?」


「思ったよ、けどその上で続けてるんだ。オーナーにも恩があるし、俺ここでしか働けないと思うし。他の店や、会社だったら絶対俺の事受け入れてくれる訳ないしな。君もそうだろ」


「そんな事はないですよ、俺だって頑張れば働けるし」


「違う。俺たちは世間では所謂犯罪者予備軍とされてるんだ、その上、ろくに朝起きれなかったり平気で遅刻する、そんな人たちが社会で必要とされるか?」


良く考えればそうだ、無理だ。何やっても続かなかったけど、この仕事だけは奇跡的に続いてる。亜紀ちゃんパパの脅しもあるけど、比較的楽しんで働けてる。


「今後君も怖い思いをする事もあるかもしれないけど、オーナーがいるし、俺もいる。だから心配するな安心して楽しく働ける環境作るから。」


やっぱりかっこいい、見た目だけじゃなく心までイケメンだとは、ロリコンなのに男に惚れそうになってる。


「あのっ、マミさ…」


寝てる、先程のかっこよさはどこへ行ったのかと思うくらい間抜けな姿で寝ている。女装のままだったら危うく襲ってしまいそうなくらい、無防備だった。

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