エピローグ 昔の事柄

帳が降りる  三社参りの最後の一社

 

 足元暗くなり階段を辿々しく駆け上がるとそこに女が一人居た

「噫、気分が悪いわ」

 そう嗄れた声で呟いてた

 横には盃があり酒を呑んでいたのだろう


「お前さん妾が見えるのかへ」

 そう俺に向かって言い放った

「妾が見えるとなるとすると、お前さん穢れが多いみたいだねえ」

 ほんの数分という時間で俺の日頃行いがこの女に伝わったと言うのか

 その前に女が言う見えている[#「見えている」に傍点]とはどういう事なのか

「何を知った口で」

「ほら、妾が見えてるではないか」

 嘲笑するかの如く軽率に言われた

 俺の腹の虫の居所が随分と侵されてた

 だが、明日からまた仕事がある

 早く参って帰ろう

 そう思い祠の前に行くと

「甘い菓子など要らぬ、とにかく喉が渇いてるんじゃ、酒をそうだ鱈腹注いでくれ」

「毎日祈り運べ、そうすればお前さんの願いを叶えるぞよ」

 先程の女がそう言い残し風雲の様に去ってった

 狐につままれたのか なんなのか

 俺はとりあえず参って雪が降る中帰路へと着く

  

 枯れ木が幽玄の如く揺れ動く

  

「ははは 今日は素晴らしい日だったわ」

「初めてだわ、妾が見える人間が居るとは思わなかったわ何て愚かなの」

 

 噫、誠に愛らしい

 ほくそ笑み零す

 明日からあの男が参りに来るとなると何て素敵な事なのかしら

「愚かで穢れた人間の末路、本当に食べちゃいたいくらい愛しいわ」 

 

 明くる日幾ら待てど暮らせど

 来ぬ 来ぬ 来ぬ

 来ぬでは無いか

 彼奴は妾に嘘をついたのか

 許さぬ 先祖代々呪い喰らうぞ

 このような事、結局死ぬ前と同じ気分ではないか

「あはははは」

 高らかに響き渡る祟り神の末路

 ここからはそう本当の地獄の始まりぞよ

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村の掟 柳 一葉 @YanagiKazuha

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