第293話 シュラ

 ――おそらく今回のゴーレム・ホムンクルスは今までの中でも最高傑作と言っていい出来だろう。


 なにせ俺の今まで磨いてきた『錬金』に、成長した俺の素材、そして魔術都市の様々ジャンクパーツを改良して注ぎ込んだのだ。


 まず右手はサイコガンになっている。魔力の変化でビームをビームサーベルのように変化させることも可能。


 左手はパイルバンカーにしてみた。空気を圧縮する魔道具のジャンク品を改良して、肘に仕込んだ杭を一気に打ち出す仕組みだ。更に魔力を込めることで杭の長さ、大きさも変更可能。


 勿論、両腕共に、普通の手としても使用可能だ。戦闘の時だけ、飛び出すような仕組みだな。


 更に背中には魔力の排出口をセット。肩甲骨の辺りかあふれ出る魔力は光翼のように見える。強力な推進力になるが、取り付けた一番の理由は派手でカッコいいからだ。


 更に腹部には巨大な魔導砲を取り付けた。腹からビームである。

 腰部分には本人の意思で操作可能な小型の魔導兵器を八基取り付けた。

 左目にもレーザーを取り付けている。普段は眼帯で隠してる。いわば隠し武器だ。


 そして最大の特徴が『変形機能』だ。


 なんとこのゴーレム・ホムンクルスは人間から龍形態へと変化することが出来る。

 勿論、龍の形態であってもそれまでの武装は問題なく使用できる。


『……それなら最初から龍の姿でいいんじゃないか?』


 おっともう一人の俺から意見が飛んでくる。

 分かってないなぁ、もう一人の俺は。

 龍の形態、人間の形態にはそれぞれちゃんと意味があるんだ。

 人間の形態は小回りが利き、竜の形態は動きは鈍るがパワーが跳ね上がる。

 要は様々な戦況に対応できるようにしたのだ。

 この辺は天龍ヤムゥを参考にした。

 アイツも人の姿と龍の姿を使い分けてたからな。


『……成程、ちゃんと理由があったんだな。てっきりただカッコいいからってしょうもない理由だと思ってた。ごめんな』


 ……そりゃカッコいいって理由もあるけどさ。ちょっと酷くない?

 俺もいちおうお前なんだよ?


『まあ、何にせよ、今までのゴーレム・ホムンクルスで一番の強いのは間違いないと思う』


 ラセツのいい修行相手にもなるだろう。ライバルがいた方が、アイツもきっと張り切るだろうし。

 それじゃあ、起動するか。

 最後の仕上げに、俺の魔力を流し込む。


『――って、うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』


 待って! 待て、待て、待て!

 なんだこれ? 魔力が……魔力が吸い尽くされる!

 ちょ、ちょっと待って!死ぬ……魔力吸い尽くされて死んじゃううううう!


『――ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……』


 ま、マジか……? こんなに魔力を持って行かれたのは初めてだ。ギジーですら七割程の魔力だったのに、今の俺はほぼ全ての魔力を持って行かれてしまった。

 仮にもギジーはゴーレム・ホムンクルス四体分だったから、まだ分かるとして、今回はたった一体だぞ? その一体にほぼ全ての魔力を持って行かれたっていうのか?


「…………ん」


 すると新たなゴーレム・ホムンクルスに意識が宿ったらしい。

 きょろきょろと周囲を見ている。

 あ、目があった。


「おはようございます、我が主……」


 ゴーレム・ホムンクルスは俺の前にカタ膝をついて恭しく頭を下げる。


「ワタクシを生んで下さり誠にありがとうございます。このご恩に報いるためにもぜひともご命令を。――誰を殲滅すればよろしいのでしょうか?」


『え? いや、殲滅?』


「はい。我が主は私に過剰なまでの兵器と魔力を注ぎになられました。それはつまり、それ程の敵がいるという事。我が望みは主の敵の破壊と殲滅。ご命令下されば、敵の全てを、一族郎党、住む土地、建物、関係者に至るまで全てを殲滅してごらんにいれましょう」


 ……あ、あれ? なんか思ったよりもヤバい感じの性格になったぞ?

 でもすごく純粋な眼差しを向けてくる辺り、悪意はないのだろう。むしろ、なんか命令を待ってるわんこみたいな雰囲気を感じる。


『あ、いや……今すぐにって訳じゃないんだ。決戦まではまだ二ヶ月くらいあるし。それまでは他の眷属達と親交を深めながら、自分の力の使い方をマスターして貰えると助かるんだけど』


「了解しました。ではこれより眷属の皆々様との親交を開始します。それと、おそれながら一つだけ進言をお許しください」


『あ、はい。なんでしょうか……?』


「ワタクシに名を頂けないでしょうか?」


『ああ、そうか。名前が無いと不便だもんな』


 どういう名前が良いかな?

 うーん、見た目に沿った名前が良いよな。


『あ、じゃあシュラってのはどうだ? お前のお兄ちゃんにラセツってのが居るんだけど、そいつと対になる感じでいいと思うんだけど?』


 羅刹と修羅。

 ……物騒だけど、二人のヴィジュアルからすればいい感じだと思う。


「シュラ……『シュラ』、ですか。畏まりました。今日よりワタクシはシュラと名乗ります。よろしくお願いします、我が主」


『ああ、よろしくな。あ、他の眷属達にはもう話は通してあるから、会ってみるといい。ラセツは……訓練場だな。場所は分かるか?』


「問題ありません。ダンジョンより情報が流れ込んでいますから。では、眷属の皆様へご挨拶へ参ります」


『ああ、皆と仲良くな』


「はい、我が主」


 転移門をくぐり、シュラの姿が消える。

 いやぁ、疲れたぁー。まさか魔力の殆どを持っていかれるなんて予想外だったわ。

 とりあえず魔石食って寝よ。

 こうして俺達のダンジョンに新たなゴーレム・ホムンクルス『シュラ』が加わった。


 あー、それと、これはもうお約束というか、ある意味予想通りだったんだけど。

 

 ――シュラの力は俺の予想を遥かに超えていた。




あとがき

シュラの武装一覧

右手 収納型サイコガン(ビームサーベル可変式)

左手 収納型パイルバンカー

背中 魔力放出翼(要はエナジーウイング)

腹部 龍式高密度魔力波動砲

左目 ビームガン

変形機能 翼龍形態

武装 超振動硬質化ブレード×2

   銃型魔導砲×1(ジャンクパーツより作成)

   遠隔式高機動魔導兵器×8(要はファンネル)

   結界発生装置×2(要はビームシールド)

   ■■■■ ×1 (切り札)


好きなモノ アース、眷属、戦闘、破壊行為




素材が「ある」のがいけない!

素材が「ある」のがいけない!

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