第3話 ―――体は土で出来ている
ふぅ~食った食った。
眠って、起きてまた黒い岩を探して移動。
見つけた黒い岩をあらかた食い尽くして、ようやく俺は満腹感を得ることができた。
しかし、岩がうまいなんて初めての経験だな。
しかも人間だったころの飯よりも旨く感じた。
ちょっと複雑だな……。
さてと、腹も膨れたところで、もう一度現状を整理しようか。
まずは俺自身についてだ。
現状はこうだ。
1 仕事から戻り、布団に入って寝た。
2 目が覚めたら龍になっていた。
3 岩、美味しい。
………うん、どうしてこうなった?
それ以外に言いようがないほどに意味が分からない。
ま、まあ、とりあえずそれは置いとくか。
次に現在地だ。
とりあえずここが日本じゃない事だけは確実だ。
というか、多分地球でもない。
だって太陽が二つあるし。
燦々と我が身を照らす二つの太陽。
ダブル紫外線効果。
お肌が荒れる。
それに、空には見たことないような馬鹿デカい鳥や、それこそ俺みたいな龍っぽいヤツが飛んでる。
何アレ、超怖いんですけど……。
真っ白な龍と馬鹿でかいカラスみたいな怪鳥。
なんかお互いに威嚇してる。
「ギギャアアアアアアアッ!!」
「ガアアアアアアアアッッ!!!」
すげー怖い。
鳴き声で岩が震えてるんですけど。
と、とりあえず移動しよう。
気づかれて襲われたんじゃ洒落にもならない。
ていうか、これどうすればいいんだろう?
異世界に、それも人ではなく龍に転生したってことだろうか?
そういえば新卒で入ってきた花田がそういう小説や漫画が好きだったな。
『先輩!俺いつか獣耳メイドを召喚して見せますよ!』とか、ふざけたことをほざくバカな奴だったのは覚えてる。
ちなみに、入社三か月で会社を辞めた。
次の就職先も決まってないのに辞めるとはアホな奴だと思ったけど。
そういえばこの間、ニ○ニコで生放送やるんで来てくださいってメール来てたな。仕事忙しくて行けなかったけど。
今思えば、少しでもそいつの話をまともに聞いておくべきだったなー。
まさか自分がそんな事になるとは思わなかったし。
まあ、いいか。
俺はその手の漫画とかはあまり読まなかったが、多分それと似たような状況に俺はいるんじゃないだろうか?
異世界に龍になって転生しました。
実際、龍になってるし。
四足歩行、尻尾、褐色の肌に鱗。
どう見ても人間辞めてる。
これが夢って可能性もないことはないけど、それにしたってリアリティがありすぎる。
……現実……なんだろうな。
まあ、いっか。
なってしまったものは仕方ないしな。
とりあえず、何とかなるだろ。
俺、昔からそういう小難しいこと考えるの苦手だしな。
なっちまったモンは仕方ない。
そういうもんだと思って諦めよう。
幸い、会社勤めにも疲れてきたところだ。
気分転換、リフレッシュとでも思おう。
ぐぅ~。
うん、考えたそばから腹が減ったなぁ。
さっき食ったばっかりなのに。
ぼりぼりぼり。
とりあえずその辺にあった岩をつまむ。
ふむ、さっき食べた黒い石と違ってマイルドな味わい。
う~ん。岩によって味が違うのか。初体験だな。
ぺろぺろぺろ。
ためしに地面も舐めてみる。
あらやだ、美味しいじゃない。
その食感はまるで砂糖。
夢中で地面に舌をこすり付ける。
……字面だけだと、ただのヤバい人だな。
まあ、いいか。俺今、人じゃないし。
さてと、お腹も膨れてきたし、とりあえず寝床でも探すか。
出来ればあの化け物達に見つからない様な場所が良いな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます