第124話 KGVI&QES 後編
『レースは中盤から後半に差し掛かったところ。先頭は変わってクルセイダー。やはり折り合いが合ってないか? リードは1馬身。その後ろにゴリアテ、ペンドラゴン、アンジュと続きます。そして最後尾からスルスルと上がってきていたエンマダイオウはこの位置。アンジュの真後ろに付けています。鞍上の滝騎手、少し早いペースを警戒したか?』
滝さんに促されてタッタカと位置を上げる。どこまで行けば良いのかなと思いながら走ってたら、気付けばアンジュの後ろにすっぽりと収まっていた。
こいつ、相変わらずブチ柄で牛みたいだよなぁ。不思議とそれがカッコよく見える。でもアイリッシュみたいに美人って感じじゃない。なんでだろうね。
『さあ、まもなく最終コーナー回って直線コース! 先頭はまたもやゴリアテに変わった! クルセイダーは既に少し苦しいか!? ペンドラゴン、アンジュ、エンマダイオウは手応えが良さそうにコーナーを回ってくる! 更にその後ろから、フィフィネラ、スピルカンが虎視眈々と先頭を窺う! 先頭から最後尾まで5〜6馬身ほど! ほぼ団子の状態で直線コースに入ります!』
今日のレースはなんかずっとごちゃついてる。いつもみたいに最後尾からスピードに乗って一気に気持ち良くぶち抜くってほど距離が離れてないし、どの馬も目まぐるしく位置を変えて、変なレース展開に対応しようとしてるっぽい。
先頭のクルセイダーが変にペースを上げ下げして、俺も最後尾から動いたもんだから、どの馬もとりあえず付いて行っとこみたいな感じで流れで動いてるっぽい。
直線に入る前に前から後ろまでこんなに固まってる経験は初めてかもしれん。
俺は直線コーナーに入る前に、滝さんに操縦されて馬群の一番外まで出てきた。少しロスしたけど、先頭だった馬がだんだん下がって来て、最終的に道を塞ぎそうだったからね。
馬群に閉じ込められる前に脱出したって訳だ。で、ほぼアンジュと横並びで最終コーナーを回って直線。
正直ここからヨーイドンして負ける気はしない。ずっと坂で今までのレースより疲れてるとはいえ、直線を走り抜けるぐらいの余裕はある。
そんな事を思ってると滝さんの手綱が完全に緩む。ゴーサインが出た。俺は隣に居るアンジュにバチっと視線を合わせて、スピードを上げる。
お前はこれが引退レースなんだろう。完膚なきまでに叩き潰して引導を渡してやる。
『直線コースに入って先頭はゴリアテ! クルセイダーは少しずつ下がって行く! まさかの地元馬がここで戦線離脱! やはり序盤の折り合いの悪さが祟ったか!? そして一番外から漆黒の馬体を輝かせ、悠々と上がってくるのがエンマダイオウ! そしてアンジュ! 両馬相変わらず凄い脚です! 折り合いもバッチリか!?』
俺の視線に気付いたのか、俺がペースを上げると同時にアンジュも上げる。やっぱりこの馬は強いよ。俺のトップスピードに付いて来られるだけの脚はあるんだから。
が、そのスピードをいつまで維持出来るか。俺は最後までこのスピードで行けるぞ。
滝さんから鞭がバチっと入る。同時にアンジュにも鞭が。これが所謂叩き合いってやつか? 前回は鞭無しだったからなんか久々な気がするな。
『エンマダイオウとアンジュが先頭のゴリアテに並んだ! ゴリアテも粘るが苦しいか!? 両馬互いに譲らない叩き合い! 地獄の閻魔か!? 最強の天使か!? いや、まさかの伏兵か? 3頭ほぼ横並びで残り100m! しかし、ここでゴリアテが一歩後退! 半馬身程差が開いた! やはり最後はこの2頭! お互い一歩も譲らないデッドヒート! 再び最強を見せつけるか!? それとも最後に意地を見せるか!? 出たっ! ここでエンマダイオウが前に出たっ! エンマダイオウが僅かに先頭! 頑張った! アンジュ頑張った! しかし! しかし! やはり最後はこの馬エンマダイオウ! 世界最強は譲らない! 半馬身差を付けて今ゴール!
無敗記録継続! エンマダイオウがイギリスの地でもやってのけました! 日本馬初のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制覇です!!』
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ドウデュース…
有馬記念のド本命にしようとしてたからちょっぴり悲しい。
産駒に期待します。
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