第122話 気になる馬
「プヒヒヒヒン」 (馬って寿命どれくらいなのかな?)
俺はパドックでビシバシといつものように歩きながら考える。
犬猫と同じくらいなら10年〜20年?
まあ、20年ぐらいだと想定しても、やっぱり5歳は早いんじゃないかなぁ。
エンマ君。未練タラタラである。
ちびっ子にイギリスで走る分を含めてあと3回って言われて、一応折り合いは付けたはずなのである。
まだまだ走りたい気持ちはあるけど、それが競争としての普通なら仕方ないと。
で、いつの間にかレース当日を迎えた訳だけど、改めて考えるとやっぱりもっと走ってたいなぁって。まあ、この気持ちもそのうち落ち着くか。今は今日のレースに集中しよう。
「プヒン…」 (それにしても…)
なんか馬少なくない?
パドックで歩いてる馬が10頭も居ないっぽいんだけど。
もしかして今回のレースはそんなに人気がないのかしらん? せっかくイギリスまで来てレースをするってのに、なんか寂しい。
後数回しか走れないんだから、どうせならもっとたくさんのお馬さん達と走りたかったぜ。
「プヒヒヒヒン」 (あ、アンジュみっけ)
凱旋門賞、有馬記念で一緒に走ったアンジュが尋常じゃない雰囲気を漂わせてパドックを歩いてる。
このレースが引退レースらしいし、相当気合が入ってるんだろう。一瞬視線が合ったものの、すぐにぷいっと逸らされた。らしいっちゃらしいけど面白みのない奴だ。アイアイサーならメンチ合戦に付き合ってくれるのに。
「プヒヒン」 (あれがクルセイダー)
イギリス馬代表みたいな立ち位置の馬らしい。どうやら凱旋門賞で戦った事があるみたいなんだけど、ちょっと記憶がない。あのレースは妨害とかアンジュとの戦いとかの記憶が強すぎて。
滝さんや牧瀬さんが言うには、この2頭がライバルだろうって事だけど。
「プヒヒヒヒン」 (あの馬。強そうだけどな)
なんとなく直感で。
さっきから気になる馬がいる。
アンジュの真後ろを歩いてるけど、尋常じゃない雰囲気に気圧される事なくしっかり歩いてるように見えるし、なんか強そう。
ほんと直感なんだけど。
「エンマ、あの馬が気になるの?」
「プヒン」 (ちょっとだけ)
俺がじーっと見てるもんだから、牧瀬さんが気にして声を掛けてくる。
「うーん、あれはゴリアテだね。9番人気で、全然マークしてないんだけど…。出走もギリギリで決めたみたいだしね」
「プヒン?」 (9番人気?)
9番人気って…。
今回走るのが9頭だから、1番人気がないって事でしょ? なんだ、俺の見る目もアテにならんな。なんか強そうに見えたんだけど。
アンジュの雰囲気に気圧されてないのも、ただ鈍感なだけかもしれん。
そんな事を思ってると、パドックぐるぐるタイムが終わって、滝さんがやって来た。
「エンマがゴリアテを気にしてるみたいです」
「ゴリアテを…? 分かった。注意しておくよ」
「プヒヒヒヒン」 (え? あ、いや…)
多分大した事ないと思いますよ? ほんとに。ただちょびっと気になっただけだから。
そんな大袈裟に捉えないで頂きたい。これで大した事なかったら恥ずかしいじゃん。レースが終わった後に、こいつ何を気にしてたんだみたいな目で見てくるのは無しよ?
あ、女王様みっけ。
派手な服を着てらっしゃるなぁ。
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