第117話 お客さん
「プヒン?」 (んー?)
ちょっとした坂道で仔馬達に走り方の伝授をしていると遠くにお客様が見えた。
この牧場はお客様に解放してる時とそうじゃない時がある。
解放してる時は主に俺目当てで写真を撮りにくる人とかがいっぱいですんごい人なんだけど、今は解放してない期間だ。
そういえば将来的には引退した馬の触れ合い広場みたいなのを作りたいとか飼い主お兄さんが言ってたような気がするな。
今でもかなり広い牧場なのに、まだ土地が余ってるのかね? お金持ちってすげぇなぁ。
それはさておき。珍しいなーと思いつつ、てってけとお客様の方に走って行くと、知ってる人だった。
「プヒヒヒヒン」 (まーた目がキマっちゃってるねぇ)
いつもレースの時にパドックでキマった目で写真を撮ってくれてる人だった。フランスでもドバイでもレースには来てたし、ほんとにこの人って何をしてる人なんだろうね。
まあ、俺が覚えてるくらいにな毎回レースに来てくれてるし、写真を撮りに来たってならポーズぐらいはしてあげますけども。
てか、この人、ちゃんと飼い主お兄さんか誰かに許可をとって来てるんだよね? 今は解放してない期間だから、そういうのをちゃんとしてないと摘み出されちゃうよ?
いや、ここに来るなら門やら事務所やら通らないとだし、それは流石に大丈夫か。
写真の人にポーズを撮ること数分。
飼い主お兄さんがやって来た。
「お待たせしてすみません」
「いえ! こちらも楽しんでたので!」
「身辺整理は終わったんですか?」
「はい。花京院さんには色々お世話になりました」
「プヒヒヒヒン?」 (なになに、なんの話ー?)
身辺整理とな? 写真の人、自殺でもするのか? もしかして俺の海外遠征やらなんならで、借金とかして首が回らなくなったか?
この人が何してる人か知らないけど、海外に行くのって高いって聞くからなぁ。
全く。それなら俺の馬券を買えばいいのに。俺が何倍になるか知らないけど、絶対1着になるんだから、それなりに儲かるでしょうよ。
「プヒヒヒヒン」 (今からでも遅くないから、なけなしの金を俺に突っ込みな? 俺、頑張るよ)
柵越しに写真の人に猛アピール。
借金をギャンブルでなんとかしようって考えはクズ思考だけど、自殺するぐらいなら俺ちゃん頑張るからさ。
「それにしても思い切りましたね」
「まあ…。エンマダイオウのお陰で一生食うには困らないお金が出来ましたからね。それにあんなたくさんのお金、持ってても使い道がないですし…。それなら少しでもエンマダイオウや他の競走馬に還元しようかと」
「プヒ?」 (ん?)
食うには困らない金が出来た? 借金してたんじゃないの? 一体どういう事?
「エンマのお陰で競馬人気が鰻登りですが、それでも中小の牧場経営は厳しいですからね。去年もいくつか閉場してますし…。そういう人達の新しい働き口になるのも期待してます」
「まあ、自分はお金を出すだけの名ばかりオーナーになる予定ですから。経営関連の人手はお願いしますね?」
「ええ。任せて下さい。エンマが引退して偶に遊びに行かせたりすれば、少しは集客も期待出来るでしょう。他にも何か色々考えたいですね」
「プヒヒヒヒン」 (難しい話ばっかりして)
エンマ君が途中から話について行けてませんよ。とりあえず写真の人は自殺しないって事ね?
心配して損したぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます