閑話 写真ニキ4


 掲示板で一躍億万長者になったのではと密かに人気を集めてる写真ニキ。


 凱旋門賞でもばっちり馬券をゲットし、税金に震え、どうしたら良いか分からず知り合った花京院に泣きついた。


 しかし話を聞くとフランスでの税金を気にする必要はないらしい。


 とりあえず安堵したのも束の間。


 日本に帰って来て有馬記念。

 写真ニキはガチガチに固まっていた。


 「あの花京院さん…」


 「いえね、あなたがうちのエンマを応援して馬券を買い続けてくれてる事は知っています。世間一般ではお金持ちに見られる私でも、狂気的な買い方ですよ。流石に私でも単勝でそんな額は賭けません」


 有馬記念一週間前。

 花京院から時間が取れるかと連絡があり、東京のとても高級そうな料亭で、写真ニキと花京院が向かい合って食事をしていた。


 写真ニキはどこにでもいるサラリーマンである。当然、こんな料亭には来た事がない。


 何か不作法がないか、そして花京院に呼び出されて一体何の話があるのか。そんな事を考え、料理の味を楽しめる訳もなく、ひたすら震えていた。


 「もしエンマが負けたらあなたは破産ですよ? 日本の税金はとんでもないですからね。それはご理解してますか?」


 「それはまあ…」


 「あなたが勝ち額をそのまま次のレースにBETしているのは知っています。しかしエンマがもし負けたらあなたに残るのは多額な税金だけ。私が言いたい事が分かりますか?」


 「………賭けるのをやめろという事ですか…」


 「いえ、やめろとまでは言いませんが、せめて税金分は避けておくべきだと私は思います」


 花京院は子供に言うかのような丁寧な口調で、写真ニキを諭す。


 実際に花京院は滅茶苦茶心配していた。正直赤の他人がギャンブルでどうなろうが知った事ではないが、この人はもう後に引けなくなってるんじゃないかと思ったのだ。


 掲示板で勝ち額をそのまま次のレースにぶっこむと宣言して、周りもそれを囃したてて、辞めようにも辞めれなくなってるんじゃないかと。


 誰に監視されてる訳でもないのだから、場末の掲示板で言った事なんて忘れれば良いのに。


 良くも悪くもちょっと有名になったから、引けなくなってるんじゃないかと。花京院はそう思った訳だ。


 「それとJRAからお願いがありまして…」


 「はい?」


 「あくまでもお願いで強制するものではありませんが、賭ける額を少し控えてくれないかと。このままあなたが賭け続けるとえらい事になると」


 「ああ…確かに…」


 ただでさえ日本馬初の凱旋門賞勝利でかなり人気が出ている。今度の有馬記念のオッズはかなり低くなるだろう。


 そこに自分が勝ち額をそのまま突っ込んでしまうと…。


 「馬頭さん。ここらで一旦落ち着きましょう。JRAからのお願いもある事です。税金分は残して、賭けるなら1000万程度にしませんか? どうしてもお金が欲しいなら、資産運用の方法を教えますから。元手はあるんですし」


 「………ですね…。自分もやめ時を見失ってたのかもしれません…。良い機会だったと思う事にします。これからは大人しく1000万だけにしておきますよ」


 世間一般から見て1000万も馬券に賭けるのも普通にイカれてるのだが。


 この前は億単位でお金を賭けたのだ。


 写真ニキは感覚麻痺しまくっていた。

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