第105話 ローテーション
☆★☆★☆★
「明けましておめでとう御座います」
「今年もよろしくお願いします」
「お願いします」
年が明けて少し経った頃。
北海道の花京院レーシングの事務所の会議室にて、馬主の花京院と、エンマダイオウの主戦ジョッキー滝、調教師の一永が集まっていた。
新年の挨拶もそこそこに、早速今年のローテーションを確認する。
「まず初めにエンマダイオウは今年で引退です。一応最後は有馬記念を予定しています」
「と、同時に俺も引退だね」
「いざ時期が決まると、何か込み上げてくるものがありますね…」
最初にエンマダイオウの引退について話をする。これは以前から決めていた事だ。怪我がなければ5歳の有馬記念で引退すると。
花京院がそう言うと、滝もそこで引退だと言い、一永は感慨深げな表情をする。
日本馬初の凱旋門賞を制覇したエンマダイオウ。G1勝利記録も日本タイであり、間違いなく一時代を築いたと言っても良いだろう。
そして競馬界のレジェンドジョッキーである滝宇鷹の引退。これもエンマダイオウと共に引退する事は既に発表してある。
数々偉業を成し遂げたレジェンドジョッキーの引退で、これからの競馬界はどうなっていくのか。
「と、まあ、先の話はこれぐらいにしておいて。まずは目先のレースについて話し合いましょうか」
花京院がタブレットを操作して、スクリーンに画像を映す。
「今年は全部で四つのレースを予定しています。まずは三月のドバイミーティングです。去年は見送りましたが、今年は参加する予定です」
近年日本でも多くの競走馬が挑戦してるのが、ドバイミーティングだ。高額なレース賞金で、世界中から猛者を集めてかなりの盛り上がりを見せている。
「エンマダイオウはドバイシーマクラシックに出走予定です。噂ではアイアイサーもドバイに遠征するのではと言われてますね。ターフの方に出るかもしれませんが」
「アイアイサーのあの逃げを1800でやられたらたまらないね。エンマでも最後捕まえられるか怪しいよ」
「ええ。どうもアイアイサーの馬主さんは海外G1でも勝ったという実績が欲しいみたいで。なので、シーマクラシックではなく、ターフの方に出走するのではと言われています」
「エンマが聞いたらヘソを曲げそうな話ですね。海外でアイアイサーもいるのに一緒に走れないとなると…」
「ま、まぁ、まだ噂の段階ですから…」
エンマが拗ねるところが容易に想像出来てしまった花京院は少し焦る。最早、ここの三人はエンマが言葉を理解してる事を疑っていない。
まあ、エンマだしそういうものだろうと。しかし、それが都合の良い事もあれば、悪い事もある。
アイアイサーと一緒に走れないなら情報規制が必要かもしれない。
「んんっ。気を取り直して次のレースです」
花京院は話を変えるようにタブレットを操作して、次のレースの概要をスクリーンに映す。
「ドバイの後は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスです。ドバイでの勝敗に関係なくここに進む予定ですね」
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