第106話 続・ローテーション


 事務所での話し合いは続く。


 ドバイミーティングの後に挑むのは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスだ。


 過去に何度か日本馬が出走しているが、未だ勝利した記録はなく、最高順位は3着だ。


 「ここにはアンジュ、そして凱旋門賞でも戦ったイギリスの三冠馬クルセイダーが参戦してくるものと思われます」


 「エンマが参加するってなって、対戦相手が逃げなきゃ良いけど」


 「その心配はあまりしなくても大丈夫でしょう。海外から来た馬から逃げたなど言われたらいい笑いものですから」


 デビューから相変わらず無敗を貫いているエンマダイオウは、今や世界の競馬界で注目されている。凱旋門賞ではそれまで世界最強と言われていたアンジュを打ち破り、有馬記念ではとんでもないタイムを叩き出した。


 その戦績を知って、打ち倒そうと息巻くものや、エンマダイオウが走るレースを避けようとするなど様々だが、海外では打倒エンマダイオウが主流になっている。


 「このキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの後ですが、アメリカのBCターフを予定しています」


 「キングジョージもそうだけど、日本馬がまだ勝ってないレースをどんどん狙っていくねぇ。もし勝てたらエンマは勿論だけど、俺の引退の花道も凄い事になりそうだ」


 「ええ。せっかくですからね。狙えるだけ狙おうと思いまして。……まさか初めての馬が…エンマがここまで凄い馬になるとは、馬主になった時は想像もしてませんでしたよ。うちの牧場からオープン馬を出すのも最低10年は掛かると思ってましたし」


 花京院は今まで大した実績もなかったエンマの母馬を引き取った時は、手探りで色々勉強していくつもりだったのだ。


 それが初めての馬で怪物ホースが生まれてきて、ペルナも雨さえ降らなければオープンも普通に狙えるときた。


 テシャールに至っては、普通に重賞もあり得るぐらいのポテンシャルの片鱗を見せている。今までの産駒がパッとしなかったのが嘘みたいだ。


 「で、最後が有馬記念です。検疫の影響でかなり慌ただしくなりますが、前人未到の有馬記念三連覇で、エンマの最後を締めくくりたいと思ってます」


 「これも全部負けないって事になったら、エンマは本当に歴史に語り継がれる馬になるだろうねぇ」


 「ええ。滝さん、一永さん。最後の一年もよろしくお願いしますよ。まあ、一永さんにはこれからも馬を預けたいと思ってますが」


 「勿論頑張るよ。俺も気持ち良く引退したいからね。最後に無敗の最強馬に騎乗して引退出来たら、俺ほど恵まれた騎手はいないって自慢出来るよ」


 「こちらこそ、末永くお願いしたいですね」


 こうしてエンマダイオウの最終年のローテーションが決まった。


 果たして無敗を貫けるか、はたまたライバル達が待ったをかけるのか。今はまだ作者ですら未定である。

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