第68話 レース後のインタビュー
☆★☆★☆★
『放送席ー、放送席ー。見事有馬記念を制した、滝宇鷹ジョッキーにお越し下さいました。不利な大外枠での有馬記念制覇、そして無敗の継続。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「率直に今のお気持ちをお聞かせください」
「最高。この一言に尽きますね。今までエンマダイオウに騎乗してきた中で、一番感触が良かったです。折り合いもしっかりついてましたし、こっちの仕掛けにノータイムで反応してくれるのは本当に有り難かったです」
本当に。本当に今日のエンマダイオウは最高だった。
抽選で大外枠を引いた時は絶望したんだけどね。あの枠で勝った馬は今までいなかったし。エンマとの折り合いが少しでも悪かったら、今日のような結果にはなってなかった。
エンマの強さ、賢さ、負けん気。全てが出た最高のレースだったと思う。
「今日はいつもより早めに仕掛けて、最後の直線前には先頭集団につけていました。この辺りはどういった考えで?」
「アイアイサーが思ったより逃げなかったんでね。これは脚を溜めてるなと。実際最後の直線での加速は凄かった。エンマダイオウがしっかり反応してくれなかったら、間違いなくやられてたでしょうね」
「そして手に汗を握った最後の直線。手応えはどうしでしたか?」
「さっきも言いましたけど、本当に最高でした。でも、アイリッシュが並びかけて来たのは、ちょっとびっくりしましたね。正直、エンマダイオウが一度スピードに乗ると、追い付ける馬はいないと思ってましたから。女帝の意地を見せ付けられました」
あれにはびっくりしたなぁ。一度躱してまた追い付いてくるとは思ってなかった。エンマもちょっとびっくりしてたと思う。
レース前から少し気にしてたところもあったしね。牝馬でありながらこの馬力。G17勝はダテじゃないって思ったよ。
「年末を最高の形で締めくくり、ファンの皆さんが気になるのは来年、次走の事についてだと思うのですが…。そのあたりはもう決まっているのでしょうか?」
「そこはまだなんとも言えませんね。一永調教師とオーナーである花京院さんとしっかり話をしてからです」
「世間では来年の海外挑戦、具体的には凱旋門賞を望む声が多くありますが、そのあたりは?」
「勿論、個人としては夢でもありますし、行きたいと思ってますね。しかし、まずは馬の状態を確認して、オーナーさんの意向に従ってという事になります。まだこの時点で次走についてはっきり言える事はありません」
一応エンマに問題がなければ、来年のレーススケジュールはある程度決まってるんだけどね。それを言っちゃうと、好き勝手憶測が飛び交いそうだし。
正式決定してから発表する方が良いだろう。
「では最後に競馬場に駆け付けてくれたファンの皆様に一言お願いします」
「えー、今年一年応援ありがとうございました。皆さんの声援のお陰でここまでエンマダイオウは無敗でこれました。来年も無敗を継続出来るように頑張りますので、応援よろしくお願いします」
「以上、有馬記念を制した滝宇鷹ジョッキーでした」
ふぅ。この後記念撮影か。今日も舞ちゃんにべったりなんだろうなぁ。
一永以外には誰にでも懐いてるエンマだけど、あの子だけは何故か特別だ。あの子が来てくれてるお陰でエンマが張り切ってるところがある。
毎回レースに来てくれたら一生負けないかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます