第20話 ホープフルS 前編
なんか今日は観客が多い気がするなぁ。
ゲートの前でぐるぐる回りながら、チラッと観客席を見るけど、前までのレースより人が多いし、熱気があるように感じる。
やっぱりグレードが一番高いってのは、馬を見に来てる人達にとっても違うもんなのかね。
なんか演奏みたいなのもやってるし。
これはテレビで競馬をチラッと見た時にもやってた印象があるなぁ。大きいレースは毎回やるのかね?
そんな事を思いながら続々とゲートイン。
今日はいつもより200m長い2000mと聞いてます。2kmですよ、2km。
人間時代だったら走りたいと思わない距離だね。馬ならそれが数分で終わっちゃうんだから、凄い。
「エンマは落ち着いてるな」
「プヒヒヒン」 (もう3回目ですし)
流石に慣れたよね。
初レースはスタートでこけたけど、その次は完璧にこなせたし。もう俺に怖いもんは何もないぞ?
「今日は頑張っていきなり先頭に行こうとしなくていいからな」
「プヒン?」 (そうなの?)
じゃあスタートもほどほどで?
でも失敗したと思われたくないなぁ。
また調教師にネチネチ言われちゃうかも。
『さあ。最後はトップファイター。13番ゲートに促されます。ホープフルS、中山競馬場。今、係員が離れて』
「エンマ。くるぞ」
よっしゃ。エンマダイオウの圧勝劇を見せちゃろか。滝さんはこのレース初勝利、俺はちびっ子によしよし。お互いの目的の為に頑張りましょう。
『スタートしました。揃ったスタートですが、1番芦毛の馬体、2番人気のアイアイサーが好スタート。押してどんどん出て行きます。アイアイサー行きました、鞍上は期待の若手井坂騎手。2番手以下はどうでしょうか、3番ミラクルビート、13番トップファイターも上がってきた』
バシッとスタートを決めたものの、他のお馬さん達も綺麗にゲートを飛び出した。
俺も負けじと行こうかと思ったけど、早くも滝さんに軽くグイッと引っ張られる。
「大丈夫だ。焦るなよ」
滝さんがそう言うなら。
今日は雨じゃないし、泥で汚れるって事もないしね。無理に先頭に行きたいとは思わない。
でも、あの白いお馬さんは凄いな。
グイグイスピードを上げてる気がする。
『13頭が1コーナーを回っていきます。先頭は変わらずアイアイサー。リードは3馬身から4馬身といったところ。その後にミラクルビート、トップファイターと続き、第3グループはどうでしょう。6番キミノワールド、2番スマイルショット、8番のスーパーストレインがいます。そして最後方、1番人気の10番エンマダイオウ。今日は最後方からのレースとなりました』
ねえ? これ本当に大丈夫?
なんか先頭と結構差があるような?
初レースの時程離れてる訳じゃないけど、なんな白いお馬さんがグイグイいってるから、ちょっと不安になっちゃいますよ?
『さあ。先頭はアイアイサー。気持ち良く逃げていきます。リードは広がって5.6馬身ほど。ここまで2連勝と負けなしでホープフルSに挑みます。同じく2連勝の1番人気エンマダイオウ。鞍上の滝騎手はこのレースを勝つと国内G1制覇。心境はどうか。現在最後方でじっくり待機』
うーん。
やっぱり雨じゃないって素晴らしいな。
全然疲れませんよ。まあ、まだ後ろで軽く流しながら走ってるからってのもあるんだろうけど。
この感じならいつまででも走れそうな感じがする。今度からのレースもずっと晴れてると嬉しいなぁ。
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