第16話 ちびっ子との交流
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「ふぅ。なんとか走り切ってくれたか」
エンマから降りて計量に向かう。
前回スタートでこけてから、細心の注意を払っていたが、まさか次はスタートが良すぎて困るとは。
「いやーエンマダイオウは強い馬ですね。最後は垂れると思ってたんですけど、まさか加速してしまうとは」
「あははは。そうだね。俺もちょっと驚いたよ」
2着のニートデゴザイに乗っていたロメールに話しかけられる。
「先行させても良い馬ですか。羨ましいですね」
「どうだろうね。今回はたまたま上手くいったけど、次も同じようになるかはわからないよ」
ロメールが探るように聞いてくる。
これからライバルになる馬だ。どういう馬なのか気になるんだろう。しかしこういうのはもう慣れた。適当に誤魔化しつつインタビューへ向かう。
次はホープフルに向かうと聞いている。
エンマとなら勝てる。競馬に絶対はないけど、今はその確信がある。
俺が唯一取れてないG1タイトルだ。
気合いを入れないとね。
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泥で汚れた体を綺麗にしてもらった。
また記念撮影みたいなのがあるらしい。
せっかく綺麗にしてもらったのに、また雨で濡れるなーとは思いつつも、この記念撮影は楽しみにしてるんだ。
なんたってちびっ子と近くで会えるからね。雨はうざいし面倒な行事だけど、ちびっ子に会う為なら頑張るとも。
是非ともカッコよく撮ってくれたまえ。
「エン! お疲れ様!」
「プヒヒン」 (てんきゅー)
可愛らしいカッパを着たちびっ子が、両親の手を引っ張りながらやってきた。
牧瀬さんも急に近付くのは危ないと、ちびっ子を止めようとしたものの、そんなの知ったこっちゃねぇとばかりに、俺の前にやってくる。
「疲れた?」
「プヒヒン」 (滅茶苦茶疲れた)
俺は顔をちびっ子の前に持っていき、鼻先を撫で回してもらう。俺がちょっとお疲れ気味なのを理解したのか、頑張ったね、お疲れ様とねぎらいの言葉を掛けつつ、ペタペタと撫でまくる。
「帰ったらちゃんと寝るんだよ」
「プヒヒヒン」 (寝るのは大の得意だ)
そうこうしてるうちに、滝さんもやってきて記念撮影。前回と同様に俺の横にはちびっ子を配置してもらった。満面の笑みが可愛らしいですねぇ。
おじさん、ちびっ子の為に次も頑張ろうって思っちゃいますよ。
ちびっ子と別れて厩舎に戻った。
また来るって言ってたから、もしかしたら次のレースも来てくれるかもしれんな。
で、厩舎に戻って来ると急に体がダルくなった。これは長時間雨に打たれてたから、風邪を引いたかもしれん。馬になってこんなにダルくなったのは初めてだ。
「エンマ疲れてるね」
「プヒヒヒン」 (雨が悪い。無駄に力を使った)
牧瀬さんが俺の寝床を綺麗にしてくれている。勿論ちゃんとクッションもセット済みだ。
「水を飲んでご飯も出来るだけ食べるんだよ…って、もう空か」
「プヒヒヒン?」 (お代わりとか出来ます?)
体はダルいけどご飯は食べたい。
でもレース後のご飯は豪華なんだ。これは逃せない。なんならお代わりも欲しい。
なんかご飯食べてたら、体がダルいの治ってきたかも?
もしかしたらお腹が空いてただけかもしれん。やっぱり俺のご飯はもう少し増やすべきだよ。調教師の兄ちゃんにお願いしよう。
あの人が決めてるらしいからな。
もし増やしてくれないなら、俺の必殺前脚キックをお見舞いしてやる。
最近は手加減も慣れてきたからな。痛くないギリギリを狙ってやる。
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