第2話 滝 宇鷹
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レジェンドジョッキー 滝 宇鷹。
史上最年少最年長でのG1勝利。
通算G1勝利数は地方、海外含めて100勝以上を記録。他にも通算4000勝を超えるJRA歴代最多勝利記録、および歴代最多騎乗数記録、東京優駿を6勝を挙げるなど数々のJRA記録を更新、保持し『日本競馬界のレジェンド』と称されるほどの日本を代表する騎手である。
しかし寄る年波には勝てず、そろそろ引退を考えていた。引退前にこれはという馬に乗りたい。
そして夢であった凱旋門で勝ちたい。そんな事を考えてる時だった。
ある日、所用で北海道に居た滝はとある牧場に立ち寄った。
「こんな所に設備の整った牧場なんてあったかな?」
見慣れない牧場。
しかも設備もしっかり整っている。
滝は何故か惹かれるように牧場に足を運ぶ。
「馬は…幼駒は一頭だけ--」
牧場で元気に走ってる馬を見て滝は衝撃を受けた。まだ産まれたばかりだろう。普通に走ってるだけだ。しかし何故か。滝はこれだと思ったのだ。自分の花道を飾ってくれる馬はこいつしか居ないと。
滝は逸る気持ちを抑えて事務所に駆け込んだ。
「あら! 滝騎手だわ!」
「突然お邪魔して申し訳ありません」
応対してくれたのは若い女性。
子供を抱えて滝の来訪にびっくりしている。
「いえいえ。すぐに主人を呼んできますね」
「ありがとうございます」
滝は事務所を見渡す。
人が居ない。これだけ立派な施設なのになんというかチグハグである。
どういう事だろうかと考えていると、主人であろう若い青年がやってくる。
「うわぁ。本物だぁ」
「ははは」
キラキラした目で見られて滝は苦笑い。
青年は気を取り直したように一つ咳払いをしてから自己紹介をする。
「失礼しました。私、花京院政宗と申します。最近馬主資格を取りまして。恥ずかしながら新米のオーナーブリーダーをやらせて頂いております」
「これはご丁寧に。私は滝宇鷹です。騎手をやってます」
「それはもう存じておりますとも」
名刺交換をして、出されたお茶を飲みつつ少し世間話をする。
「花京院というと…」
「ええ。花京院財閥は父が総帥をしております。自分は末息子として甘やかされて育ったボンボンですね」
「なるほど…」
それを自分で言うのはどうかと思うが、それならこの設備にも納得である。
この広さと設備は中小牧場以上大手未満といった感じだ。それだけに人の少なさが気になるが。
「人も随時雇う予定ですよ。今は繁殖牝馬も一頭しかいませんので、やっていけてますが」
「馬産の知識はおありですか?」
「ええ。知り合いにここを譲ってもらうとなってからは、色々な場所で勉強させてもらいました。日本だけじゃなく、海外でも。ツテだけはありますので。いやぁ。親の力って凄いですよねぇ」
あははと笑いながら話す政宗。
その後も話を聞くと、昔から馬に関わる仕事がしたかったらしい。
花京院財閥の息子がそんなのありなのかと思ったが、スペアにもならない息子だから比較的に自由に育てられたと。そして知り合いが牧場を畳むと聞いて、この場所を買い取って金の力で魔改造。
そして設備だけは一流のチグハグな牧場が出来たという訳だ。
「それで本題なのですが」
「ええ。本日はどういったご用件で? うちにはまだお見せ出来るものがありませんが…」
「あるじゃないですか」
「え?」
「あの一頭だけ居る幼駒。あれを私に乗らせて欲しい。そのお願いをする為に参りました」
「? エンマですか? 滝騎手に乗って頂けるなんて嬉しい限りですが…。まだ産まれたばかりですよ? 血統もお世辞でも良くない。何故でしょうか?」
政宗は困惑した。申し出自体は嬉しい限りだが、まだエンマは産まれたばかりだ。判断するにはもう少し成長してからでも良いと思うのだが。
「分かりません。でもあの馬なら。そう。何故かあの馬なら凱旋門を勝てると思ったんです」
「が、凱旋門!?」
「自分でもおかしな事を言ってる自覚はあります。しかし私は自分の直感を信じたい。私にあの馬を任せて頂けませんか?」
そう言って滝騎手は頭を下げる。
これには政宗は大慌てである。花京院財閥の息子としてお偉いさんと会う機会は何度もあったものの、レジェンドジョッキーの懇願には流石に取り乱すらしい。
「わ、分かりました! 分かりましたから! 頭を上げて下さい!!」
「ありがとうございます」
「もう。これも一種の暴力ですよ? 憧れの人にそんな事を言われて断れる訳ないじゃないですか」
「すみません」
政宗は少しため息を吐いて、提案をする。
「じゃあどうせならエンマを近くで見ていきますか?」
「是非お願いします」
そう言って牧場に移動する。
牧場に入ってみてもやはりチグハグだなと感じる。人が居ないせいだろう。滝は何故か落ち着かなかった。
「やっぱり早急に人を追加しますね」
「すみません」
滝が落ち着かない雰囲気なのが分かったのか、政宗は苦笑いしながら、手に持っていたタブレットに何かを打ち込む。
「エンマ! エンマー!」
打ち込み終わると柵のところでエンマを呼ぶ。
真っ黒の馬体。漆黒と言ってもいいだろう。
呼ばれた幼駒はお利口にやって来た。
「プヒヒン」 (なんや?)
これがレジェンドジョッキー滝といずれ『地獄からの刺客』の異名で呼ばれる『エンマダイオウ』の出会いだった。
後に滝はこう語る。
「何故かこの馬しかいないと思ったんです。この馬とならどこへでも行ける。そういう気持ちにさせてくれる馬です」
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決して現実にいらっしゃるレジェンドジョッキーの事じゃないですからね。
あくまで架空。Wikiの情報がどれだけ似てても架空なのです。
そのうち誤字で本名を書いちゃうかもしれない。それが心配です…
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