第18話 街の門番 フモアー

俺は街に向かうべく、森を南下していた。この辺りは魔物のレベルも軒並み1で癖の強い魔物は出てこねぇ。

森をでるのもそろそろだろう。と、ふと木々の隙間から木漏れ日が溢れてくる。


その先に見えたのは━━━━━━━━━━━━


見渡すほどに広がる草原と

ポツリと佇む町だった。やっぱ杞憂だったな。


ようやくだ、やっと人類の文化圏に踏み入ることが出来る!!


イヤーこれまでスライムの残液を啜り、魔物をなぶり殺し、木の上で寝た甲斐があったってもんだ。


ようやく俺はこの世界でのスタートラインに立ったのだ。


これでようやくマトモな生活ができる。


《鑑定》さんにネタバレされちまった冒険者ギルドにも行ってみてぇし、魔法を使えるようになりてぇ!ってのもあるが、、、何より肌寒いからこの格好を何とかしてぇ。


んな事を考えながら俺は足早に街にある門へと向かう。


遠目には小さく写ったが3mはあろう塀が街を囲み

唯一の出入口である門には2人の門番が立っている。


なんつーか兵士ってよりは一般人が簡素な槍と胸当てをつけているだけみてぇだが、、、


それだけ治安が良いってこったろう。少し安心したな。


一歩一歩とそんな期待を胸に抱いて歩いていると、いつの間にか街の入口まで数mまで来ていた。


「そこの少年!止まりなさい。」


まぁそりゃ止められますよね。


「何故そのような格好をしている?」


俺は昨日考えていた作戦を実行する。


「実はこの森の向こう側程から、村を飛び出して来たのですが道中で賊に襲われてしまいまして、、、」


「なるほど盗賊か。その割には五体満足の様だが?オマケにその肩から掛けているのは収納鞄であろう?」


やっぱりソコを突かれちまうよな。

まぁ他のパターンも考えてるから続行するか。


「実は仮拠点を建て夜風に当たっている所を襲われまして、、、私の村には盗賊?

なんて居なかったので服と護身用に持っていた父の形見の剣を渡したところ見逃して貰えたのです。その際拠点に鞄を置いていたので中の物は何とか助かったのですが。着替えを持っていなくて。」


「成程な。辺境にある村から来た所道中で盗賊に襲われた、、、と。」


やっぱり厳しいか?でもまだ俺には他の会話パターンもあ━━━━


「っよく生きてここまで来た!!さぁ通るがよい、さぞ辛い思いであっただろう。辺境から来た理由はー聞くまでもなく冒険者だろう?」


「はいっそ、そうです!」


なんか門番の人泣いてね?少し反応に困るな。

そのまま門番の横を通ろうとすると


「あっ忘れるところだった少年!通行料を払ってもらわねばな。

辺境から来たのなら身分証なんかは持って居ないだろうが流石に金はあるだろう?」


あっ、、、かんっぜんに金のこと忘れていた


やべぇどうしよう。《思考加速》

━━━━━━━━━━━━━━━


「?」


「なんだ少年知らないのか?街に入る時や物を買うのには金が要るのだぞ。」


「物々交換って事ですか?野菜と肉をトレードする、、、みたいな。」


「うーむ、、、十把一絡げに言うとそうだな。様々なサービスを受けたり物を買うために街では金と交換するのだ。通行証を持っていない場合、ここを通るには銅貨が5枚必要になるな。」


「何かと物々交換って訳には、、、」


「すまんな。少年、街では仕事をして金を稼ぎ、その金で生活するんだ。俺は門番という仕事をして金を稼いでいる。だから規則を曲げる訳には行かんのだ、、、」


そうそう上手くは行かねぇよな。

もう少し小さい街なんかを探すか?


チャリン


何か金属製の物が落ちた時の音が響く

はっと門番の方を振り返る。


「あー銅貨5枚落としちまったー誰か拾ってくんねーかなぁ。お詫びにその銅貨はその善良な人にあげるんだけどなー!」


おっちゃん!!!

俺は銅貨を拾い上げ


「えっ貰って良いんですか?」


「なんの事だ?あっ!通行料だな!

ちなみに冒険者ギルドは入って真っ直ぐ行ったらデカイ建物があるからそこだぞ!後、、、これ着てけ。」


そう言って門番の人は収納鞄(初めて正式名称知ったぜ)から服を取り出す。


「ありがとうございます。この御恩は何時必ずか返します。あの、、、名前を伺っても?」


「あぁ!俺はフモアーってんだ。少年は?」


「ユーシンって言います」


「そうかユーシンか!かっけぇ名前じゃないか。頑張れよ!」


この世界の人優しすぎる!!


いやー第1村人、いや第1街人がフモアーさんで良かった!

多分この人じゃなかったら俺は別の街を探すことになってたな。


それともこの世界の人皆こんな感じ?


随分打ち解けたフモアーさんに貰った古着?のズボンとTシャツのような服を着て


俺は冒険者ギルドへと歩みを進めるのだった。


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