第30話 国家深層部サーバへ

 屋上はすっかり暗い。流石に三度目で慣れたものの、蒼桐は根っからのワームゲート苦手らしく、胃の中のカレーがぐるぐると嵐のように渦を巻いていた。


「……AIとの相性が最悪だな。まあ、それもすぐに収まる。軍部のカプセルをやるよ」


 酔い止めを貰って、設定した座標のゲートに立った。


「飛鳥ちゃんは平気?」

「平気です。慣れてます」


 ――最強のAIヒューマンじゃないか……と思いつつも、カプセルを飲み下した途端に、引っ繰り返った三半規管の麻痺が和らいだ感じがした。


「サマースクール、楽しいです」とは飛鳥流の気遣いだろう。伯井を兄のように慕う飛鳥は見ていて眩しかった。


 ――ねえ、付き合おうよ。


(ヒューマンであることを隠して暮らしていた前に現れた、天使かと思ったんだ。AIハーフでもなんでも良かったんだ。……俺、これ以上の幸せは要らん)


 そんな気持ちになるのも、あのシャボン玉が割れてからだ。


「きみは?」


 矛先を向けられて、蒼桐は「まだ数日だけど、文化が違っていて……」と言い訳をした。伯井はそれに対しては何も言わなかった。


 感覚は更に下を向いている。


「ここも地下ですよね。更に下がった。座標はマントルに近い」

「マントルなんかあるかよ」


 rubyの教育プログラムは忘れろと言わんばかりに言い返された。飛鳥が代わりに聞いた。


「さらに潜るんですか」


「そう」と伯井は告げて、「国家深層部第七密度」と命令口調でワームホールに問いかける。

 量子シールドが周辺を覆い始めた。

「密度が違うからな。外に出るなよ」


 それどころではなかった。


 親父との思い出が甦る。


 次元転換装置に没頭するまでは父はワームゲートを作ろうとしていた。


「これ...親父の研究じゃ.....」

「おい!魂を飛ばすな!」


 記憶は、そこまでだった。暗転したーー。


第三章 サバイバル×EARTH 国家深層部サーバへ Coming Soon……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る