15発目 形勢逆転

「なあ、少し時間を取らないか」

俺がそう言うとアルメニアは疑問に思いながら聞いてきた。

「はぁ?時間ですって?何故必要なのかしら?」

俺はその質問にこう返した。

「あんたも同じ様に取ったろ?俺も全力を出せるように下準備したいんだ。死ぬのなら全力を出し切ってから死にたいからな」

アルメニアはそう聞くと少し顔をしかめて悩み始めた。

「あんたが時間内何もしないという制約は?」

「無い…だが、それはあんたも同じだろ?」

「うっ………」

俺はあの時、何もしないという制約が無い状態で準備した。だったら今回も同じ状態なら……

「……いいわ、同じ3分間待ってあげる」

それを聞き急いで端末を取り出した。そして、ガンスキルの取得可能欄を確認した。やっぱり、【銃術レベル4】から【CQC近接格闘戦闘術】と【二丁拳銃】が追加されていた。恐らく、あの蛇を倒した事によって手に入ったんだろうな。俺は迷わずその2つを取得した。すると、自動的にもう一つの武器が取得されたが、発動するまで効果がわからないスキルだった。

 俺は最後にFNX45の残弾数を確認し、準備が完了した。

「始めるわよ……」

そう言うとアルメニアは凄い勢いで剣を振りかざしてきた。 

ここだ!

スキル発動 【CQC戦闘】

俺は転がりながら左に回避し、サイトを使わずに射撃した。C.A.R.システムといい、拳銃を斜めに傾けて両手で構え、銃などを奪われない様にする為の拳銃の構え方である。特に近接戦闘にはうってつけな構え方だか、サイトを使わない分しっかりと狙えないので頭とかではなく体を狙わないといけない。

 なので、俺は剣を振りかざしてきた後で隙ができている背中に向けて発砲した。

「ぐっ……」

アルメニアに2発当たり、今までとは違い、通常弾薬でもダメージを与えられて、そして、スキルの効果により今まで咄嗟にできなかった動きが出来るようになっていた。今までもスキルが発動していたと考えると、【銃術】が上がっていたのも納得する。

「何悩んでるのかしら!!」

「あぶね!」

アルメニアが俺に向かってまた攻撃を仕掛けてきたかスキル【CQC戦闘】をすぐに発動し、避けれた。

しかし、切り傷だけ負ってしまった。頬に出来た傷口から血がにじみ出てきて血の雫が頬を伝いポツリと地面に落ちていった。

 スキルについて考えてる暇はない……後で探せばいい……今はこっちだ!

「かなりの面白い展開ね……さて、ここからよ!」

アルメニアがそう言うと銀色だった剣が黒くなってゆき剣が2本になった。

 二刀流になったアルメニアは片手の剣を俺に向けてこう宣言してきた。

「この剣は魔王様直々に注いでくれだ魔力が込められているの……その魔力には限りがあるから使わなかったけど……あなたが予想より強かったよのね……だから……全力であなたを倒す事にしたわ……」

 嘘だろ!?剣にも魔力があったのかよ!また攻撃が通らなくなる!

「また魔力で攻撃が通らなくなったと嘆いて居るわね……その顔よ!その顔が見たかったのよ!」

アルメニアは不気味な笑顔をしながら剣を俺に向けてきた。そして、両剣を背中に回し、

漆黒の嵐ジェットブラックストーム!』

物凄い勢いで突進して来て目に見えない速さで剣を振り回して来た。

「グっ………」

致命傷はなんとか避けたが切り傷を数十カ所負い、一部から血が出始めた。

 俺も負けじとFNX45を撃ったが弾かれてしまった。

「剣自体に魔力があるからなんとかまた魔法を張れたわ……これで何も臆せずやれるわ!」

嘘だろ……打つ手無し……ドラゴンブレス弾も使い切ってしまったし、かと言って他の手段は一切ない……

漆黒の嵐ジェットブラックストーム!』

アルメニアは再び同じ剣術をし俺に多くの傷を与えた。身体のあちこちが泣きたい程痛い…

アルメニアは不気味な笑顔を浮かべ俺にこう言ってきた。

「勇者でさえ、この剣術は避けれなかったのよ……ただの一般人なあんたが避けれるはずもないわ……」

「勇者?」

俺は聞き覚えの無い言葉に疑問を抱いた。

「あら?勇者の事?それならこれを見せるわ」

アルメニアはそう言うと剣を地面に突き刺し、ペンダントらしき物を俺にアンダースローで投げてきた。

「あの勇者はもう居ないのよ……」

「…………」

「絶望しなさい!そして泣き喚くがいいわ!」

「……………」

アルメニアは笑いながらそう言ってきたが俺はと言うと

「誰すっか?勇者って?」

「………は?」

アルメニアはマヌケ顔をした。すぐに驚きの顔に変わり質問を投げかけてきた。

「あ、あなた……まさか勇者を知らないの?」

俺は言うまでもなく、「知らんけど」と答え、アルメニアは驚いていた。

「あの勇者を知らない……そんな事は無いはず……だってここ王都からそこそこ近い所にあったはず……まさか、あなた、異世界人?」

異世界人?なんの事だ?

「なら、強いのも納得ね……天命の加護を受けているはずだもの、強いはずだわ…」

天命の加護?知らないワードがどんどん出てくる……

「面倒になる前に殺さないといけないわね!」

考える時間も与えられず、アルメニアは目に見えない速さでまた攻撃を仕掛けてきたが、なんとかスキル【CQC戦闘】のおかげで助かっている。だけど、全部までとはいかず、また数十カ所の切り傷を受けてしまった。

 やばい……このままじゃやられて終わるだけ……どうしたら……

俺はペンダントを落としてしまい、ペンダントから青い宝石が落ち、砕けちった…

 すると突然、端末からビービーと音が鳴り響き、頭の中に音声が流れた。

【天命スキル 世界の声を取得】 

【スキルレベルアップにより、【2丁拳銃】に新しい機能が追加されました。これにより、どちらかの手に拳銃を持っている状態でならば近接武器での戦闘が可能になりました。】

【スキル【CQC戦闘】からエピックスキル【警備術】を取得しました。】

突然、女の人の声が聞こえてきた……

俺はその声に動揺してると

「何よそ見をしてるのかしら!」

「しまっ!」

完全によそ見をしてしまった!これは避けられな

【エピックスキル【警護術】を自動的に発動します】

俺は体が勝手に動き、アルメニアが振りかざさそうとしてきた剣を避け、アルメニアの懐に接近して彼女の胸ぐらを掴んでいた。

「「え?」」

俺とアルメニアがマヌケな声を出したのもつかの間、俺の身体が動き、アルメニアの身体が宙を舞って地面に叩き落とした。

【【警護術】背負い投げが発動しました】

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