第17話

(俺)

『変化』。

 運命と言う名の筋書きを捻じ曲げる能力――だそうだ。

「ねえお兄ちゃん、もしかしてこの人ヤバい人なの?」

「うん、ヤバい人。」

「ちょっと、確かにヤバい人かもしれないけどせめてもうちょっとオブラートに包んで言ってくれない!?」

 棗は言った。

「ただ、ヤバい人だが話に説得力はある。なんせ、あまりにも辻褄が合いすぎてるからな。」

「…そうなの?ならまあ、信じるかなぁ」

 妹は説得できたらしい。

「それで、どうすんだよ?組織だかなんだかの連中って簡単に見つかるもんじゃないだろ。」

「そうだね、だから隔離空間に行ける存在が必要だ。」

 いや、それこそ組織のやつなんじゃないのか?

「そうだね、元組織のメンバーくんだ。でも彼は――『通信』の子は隔離空間に居なかったからね。世界が作り変えられたタイミングで再構成されたんだ。」

「つまりその、『通信』のやつがこの世界に存在すると?」

「その通り、そしてその子がいる場所も見当がついてるんだ。」

「……どこだ?」

「茅くんの学校だね。」

(は!?)

 ということはまさか……

「茅くんには、久々に学校に行ってもらいます。」


 ◆◆◆


「登校中ってこんなに憂鬱なもんだっけか……?」

 そんなことをつぶやきながら歩みを進める。

 俺が探すのは『日比野京也』という少年だ。


(AI)

 しかし、名前しか知らないので探すのも一苦労だろう。

 というかまず、見つかれば良い方である。

「で、凛は何でついてきてんの?」

「え?あー、うーん……お兄ちゃんが心配だから?」

 絶対嘘だ。

 そんな会話をしていると突然、曲がり角から人が飛び出してきた。

 俺は避けきれずにぶつかり尻餅をつく。そしてその相手は俺の上に倒れこんできた。

「ご、ごめん!急いでて!」

(ん……?この声……どこかで)


(俺)

「日比野京也!!」

「え、何で俺の名前知ってんだよ!?」


(AI)

(やはりそうか)

「おい、凛」

「何?お兄ちゃん」


(俺)

「さっさとどけ」


(AI)

「え?あ……ごめん!」

「日比野。」

 俺は目の前の少年に向かって話しかける。


(俺)

「能力、持ってるだろ?」

「え、いや……持って…ない――」

「テレポート、か。」

「……!!」

 やはり、神連棗の予想は正しかった。

「お前に頼みたいことがある。」


(AI)


 ◆◆◆


「それで?俺に頼みたいことってなんだよ?」

 日比野は訝しげな顔で聞く。


(俺)

 具体的なことは俺も言えない。なんせ俺もあんま良く解ってないからな。」

「おいおい胡散臭くなってきたぞ……?」

「大丈夫だ。解ってるやつがいるから。」

 そう言って、待ち合わせていた教室の扉を開ける。

「連れてきたぜ、棗。」


(AI)

「いやあ、案外あっさり見つかったね」

 そして、棗は続ける。

「こんにちは。日比野京也くん。」

「どうも。それで、話って何すか?」

「単刀直入に言おう。


(俺)

 座標を伝えるから、そこに飛ばしてくれ。」

「座標て……」


(AI)

 日比野は困惑した表情を浮かべる。

「悪いが、頼む。」

「……わかったよ。」

 少し間があった後、日比野はそう言った。そして棗に向かって言う。

「で、どこに飛ばすんですか?」


(俺)

「座標は1651.01606314164-616101544で、要は隔離空間だよ。」

「ちょ、ちょっと待って……早い、早すぎるから……」

「1651.01606314164-616101544」

「ちょっと待ってくれ……1、6、51.……0160、6314164のー…?61で、6101544………!!」

 その時、『空間が割れた』。

「はぁ――!?」

 これが俺にとって最初の『テレポート』だった。


 ◆◆◆


「つ、着いたか!?」

「着いたっぽいね…」

 その空間には俺、春乃茅と春乃凛、神連棗、日比野京也に……そしてもう一人、少女がいた。

「……初めまして。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る