第14話
(俺)
「はぁ…なんとか撒けたね。」
「撒けたって……お前ファンのことゾンビかなんかと勘違いしてんのか?」
「いやいや、ファンはちゃんとファンとして扱ってるし!!」
「なわけ」
路地裏で俺たちは笑う。
落ち着いたところで俺は、言ってしまった。
「…あのさ」
「ん、なに?」
「凛はさ……よくアイドル続けられるよな。」
俺は……学校にすら行けないのに。
「んー…まあ、そうだね。ちょっと辛いかも。」
「だったら――!!」
「でも、ファンが待ってるからさ。」
「…っ!」
そうだ。
こいつは馬鹿だけど、真面目だし面倒見がいいんだ。そういうやつなんだ。
でも、俺は……
「俺は……もう何もできそうにないんだ。何か、別に何が悲しいってわけでもないけど――でも、気力がわかないっていうか…もう、わかんないんだよ」
「お兄――兄ちゃん。」
「なあ、俺は……どうしたらいいと思う?」
俺はそう言って俯く。
すると急に妹が抱きしめてきた。
「んぐっ!?」
俺と同じ――いや、俺よりも少し身長が高い妹に抱きしめられた俺は兄というよりも弟に見えただろう。
「いいんだよ、何かをしようとしなくて。」
「でも…!!」
「まあ、たしかに何もしないのは良くないかもだけどさ……でも、休むのだって立派な行動なんだよ?それに、無理をするのが良いことなわけじゃない。大切なのは、今できることを殺ることなんだよ。」
「………っ」
俺の顔はもうぐしゃぐしゃだった。
「俺は……お前が羨ましかった…っ。お前はいつも……明るくて、いつもお前が俺を慰めてくれてたんだ……だから、俺は…」
「うん、ごめんね。」
「お前は凄くて……だから俺は…もう、嫌になっちゃったんだよ……!」
「ごめんね。」
言い訳だった。
でも凛は、それを全部受け止めてくれた。
それが凄く、苦しかった。
◆◆◆
「俺、一人暮らししようと思う。」
「え、いきなり?」
「いきなりじゃねえよ、ちゃんと考えた上でのこれだ。」
(AI)
「まあ、そうだね。」
俺はちゃんと考えたんだ。だからもう決めたんだ。
「俺さ、このままじゃダメになっちゃうと思うんだよ。だからさ、一人暮らししてバイトでもなんでもいいから働いてお金を貯めて……そんで高校卒業したら……働く。」
「そっか……」
凛は少し寂しそうな顔をしたがすぐに笑顔になった。きっと心配してくれているのだろうが今はその優しさが逆に辛いなと感じたのは言わないほうがいいだろう。
「それでさ……いつかまた会えたら嬉しいかな…
(俺)
って感じに思ってるんだ。」
「え、何言ってるの?月一くらいで会いに行くけど」
「はぁ!?」
(AI)
こいつ今なんて言った!?月一で会いに来る!?
「いやいやいや、なんでだよ。」
「んー……なんとなく?」
なんとなくってなんだよ。そんな理由で来んなや。
「ま、いいからいいから」
「……まあいいけどよ」
こうして俺は一人暮らしをすることが決まったのだった。
(俺)
◆◆◆
というような経歴があって今に至る。
(AI)
そう。今に至るのだが……まさか妹にここまで振り回されるとは思ってなかったなぁ、としみじみと思うのだった。
「あーもう疲れた!」
俺は部屋に入るなり荷物を放り出すとソファにダイブした。思った以上に体が疲弊していたのだろう、そのまま寝てしまいそうになるが……凛が来るのだ!ここは潔癖でいこう……!いや別に潔癖じゃないけども!!しかしここで寝たらダメだという危機感は強くあったためなんとか意識を保つことが出来たのだった――が、その時だった。
ピンポーンとチャイムが鳴った。
「おいおいマジかよ……」
いくらなんでも早すぎるだろう……と思ったものの、恐らく凛が呼んだタクシーかなんかで来たのだろう。そう考えると早かったのも納得だ。というかそうだと信じたい。なぜならあいつに常識というものは通用しないからだ!(失礼)
「おい、なんで来たんだよ」
「そりゃあもちろん――お兄ちゃんに会いたかったから!」
そう言って俺に抱きついてくる凛を俺は強引に引き剥がした。この距離間バグ妹め!!はなれろ!!離れろ!!
「はぁ……まあいいけどよ。で、何しに来たんだ?」
「ん?遊びに来た!」
「……だろうな。」
俺はてっきり
(俺)
文化祭の話でもされるのかと思ってヒヤヒヤしていたが、どうやらそんなことはなさそうだ。良かった。
(AI)
本当に良かった。
「で、何する?」
「お兄ちゃんは何がしたい?」
「……なんで俺が主導権握ってんだよ」
「いいじゃん別に!」
そんなの俺が知るか!と言いたいところだが……まあ確かに俺もなんかやりたかったしいいか……。というわけで凛も混ぜた遊びをすることになったのだった。
◆◆◆
それから一時間くらい経っただろうか?俺たちは様々な遊びをしていたのだが、俺には一つだけずっと気になっていることがあったのだ。それは、凛の行動に少し違和感を感じるということだ。具体的に言うと、距離が近い気がするのだ。まあ、あいつはいつもあんな感じというかなんというか……いや、それは別にいいんだ。いいんだが――
「なあ」
「ん?」
「なんで腕に抱きついてくるんだお前」
そうなのだ。凛はやたらと俺の腕を掴んでくるのだ。しかし本人は全然気にしていないようで……うーんやっぱこいつの常識おかしいよなぁ!!マジでなんとかしろよ!!(ブーメラン)
「えーいいじゃんか別にー」
「……お前そのキャラで行くのか?いいのか?」
(俺)
流石の俺でも欲情しちまうぞ!?
(AI)
みたいな下ネタを言おうとしたがやめた。うん、やばいな俺。疲れてるんだな。
「うーん……ちょっと変えてみようかな」
凛はそう言うと俺の腕から手をどかし、今度は腕を組んできた。
「おいなんでだよ」
「まあまあいいじゃん!」
いやよくねぇよ!と思いながらも俺は抵抗しなかった。それはきっと疲れているからだと自分に言い聞かせた。というかこいつまだ胸がぺったんこだからいいけど胸がでかい人とかだったら大惨事だぞこれ……ってそうじゃなくてだな!
(俺)
「俺お前とそんな仲良かったっけ!?」
「えー、何?お兄ちゃんは『ツンデレ』のほうが好きなの?」
「別にそういうわけじゃねえよ!というかそもそもお前には『妹』っていう属性があるだろうが!」
それだけで十分な個性だろう。妹キャラが刺さる層もあるし。それに国民的アイドルなんていう肩書も付いてるじゃないか。
キャラが立ちすぎている。
(AI)
「うーん……じゃあ普通にしよっか。」
「そうしてくれ。」
凛はそう言うとまた腕を組んでくるが、今度は普通に腕を組んでいるだけだしそもそも全然当たってないというかなんというか……いや!別に残念だなんて思ってないぞ!?うん!思ってない!!
「……なに?お兄ちゃん、私の胸触りたいの?」
「ちげぇよ!!ってかそんなことしてないだろ!」
いやまあ正直言うとめっちゃ触ってみたいけどもな!!!!でもそれは心の中に秘めておこうと思ったのだが……どうやらダダ漏れだったようだ。
「あはは!やっぱり触りたいんじゃん!ほら、私お兄ちゃんならいいって言ってんじゃん!」
「お前……それが妹の言うことか?」
俺はもう呆れて何も言えなくなってきたのだった。
◆◆◆
それからなんやかんやあって凛が帰る時間になった。結局一時間くらい話していたようだったが……よくここまで話し込んだものだと我ながら感心する。というかあいつは俺の家にある本を読み漁っていたのだ。本棚の四分の一はあいつの持ってきたラノベで埋まっている。
(俺)
そして残りのうち大体五分の四は漫画、残りが俺のラノベで埋まってる。
兄妹揃ってなかなかのオタク度である。それでいておたがいに「オタクと言うにはまだ早い」というのだから、もうどうしようもない。
(AI)
「じゃあねー!」
「おう」
そうして俺は、久しぶりに凛が家に来たこの日を終えたのだった。
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